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異世界に来たけど義母が5人もいた上に結構ハードモードだった。  作者: 雨露口 小梅
第一章 撤退支援戦闘(ウィズドロワル・サポート・バトル)
33/212

◇30 埋伏 目前(イミネント)

 【王国・王の街道】

 【2日目 夕 固守残り1日半】


 王国近衛軍キングスガーズ第1騎兵大隊ファーストウィングは街道を駆けた。

 第1騎兵大隊ファーストウィングおよそ500の先頭を駆けるのは、プレンツェン・バイ・パッサイル大佐。

 彼女は自分と自分を率いる部隊にひと時も休ませる気はなかった。


 彼女が救うべき相手、義理の息子が率いる部隊は1個中隊で1個連隊の相手をしている。

 今すぐ空を飛んで助けに行ってやりたいが、馬に乗っても彼の地までは3日かかる。

 3日を更に詰めて1日半にするには、馬も兵も限界まで駆ける必要があった。


 第1騎兵大隊ファーストウィングが進む道は、街道と言っても敷石を詰めた新しい王の街道ではなく、むき出しの土の道の両脇に表土流出を防ぐ植込みのある旧街道だった。


 敷石の新街道は物流の要で往来も多く、急行軍の妨げになる。

 それに合わせて、敷石の上を駆けていたら馬の蹄鉄がすぐ痛んでしまって、馬が潰れる。


 北の空は重い灰色の雲が立ち込めていたが、まだこちらは雨が降っていない。

 この街道も雨が降ればすぐにぬかるんで行軍速度が落ちてしまう。

 雨が降っていないのは本当に幸運だった。


 夜駆けした馬の顎が出始め、上下の動きが激しくなる。


 「ウプレンゲナー大尉。そろそろ2頭目に乗り替えるぞ」


 「了解しました大隊長」


 騎兵は必要最小限の装備だけ持って、騎乗する馬と合わせて1人当たり3頭で駆けていた。


 「交代せよ」


 隣を駆けるウプレンゲナー大尉が笛を鳴らすと、第1騎兵大隊ファーストウィングは予備の馬を自分の横に並ばせる。

 そして次の笛で騎乗して駆ける中、馬上から予備の馬へと飛び乗った。

 更に吹かれた笛で騎乗していた馬から装備品を移すと、最後の笛で今まで騎乗していた馬の横腹を蹴り、街道上からどかせた。


 第1騎兵大隊ファーストウィングは一連の動作を一糸乱れず見事にやってのける。

 放たれた馬は後続の後方支援連隊が回収する。

 新しく乗り換えた馬はまだ余力がある為、すぐ騎乗が安定する。

 これで第1騎兵大隊ファーストウィングの兵の疲労も抑える事が出来る。


 馬上で食事をとり水を飲む、昼夜を分けず駆ける事が出来るのは、流石近衛の精兵だった。

 総長が命令する通り、弛んでもいなければ鍛えなおす必要もなかった。


 王国の街道はノイシェーハウ領ほど程整備はされていなかったが、それでも手入れが行き届いているおかげで距離を稼ぐ事が出来る。


 しかしそろそろ原野と牧草地帯、畑に入る必要があった。

 後退する王国軍と鉢合わせする可能性がある。

 もし出会ってしまったら妨害が入るのは目に見える。


 どこで出会うのか。どこで街道をそれるのか。判断が難しい。

 しかし急がなければ息子の命はなかった。





 【王国・王国側街道の森】

 【2日目 夕 固守残り1日半】


 再び猟師ハントマンが片手をあげて、隊列を止める。

 一斉にしゃがんで武器を構え、割り当てられている方向を探る。

 野生動物モンスターは樹上からも攻撃してくる。

 ウイチがイルチを連れて、音を立てずに近づいてくる。


 「人間のにおいがするそうです」


 シュラーを見ると頷いている。

 谷の出口が近い。

 ここまで、猟師ハントマンシンガー(歌うもの)のお陰で、共和国が放った捜索隊を先制して排除する事が出来た。

 おかげでこちらの損害はない。


 ここから全員這いつくばって進むことにした。

 俺とシュラーで先行する。

 距離を詰めるのに時間がかかるが仕方がない。

 ウイチの鼻が利くとはいえ、目指す目標が補給物資の集積所か敵の司令部なら、警戒が厳しい筈だ。

 敵の人数は多い。そう見積もって用心を重ねるに越したことはない。


 しかしソチェニはどうだ? 共和国の捜索隊を交わして、うまく負傷兵の後送が出来ているだろうか。

 リンヴェッカーはどうだ? 敵の主攻面を支えなければならない。まだ支えられているのか?

 時間がない。しかしここで敵の後方に一撃を決めなければ、どちらにせよ俺達は全滅だ。


 俺のこの攻撃が決まれば、敵は混乱に陥る。

 最悪ソチェニが、リンヴェッカー達が死んでも、命令に必要な時間が稼げる。

 命令を果たさなければ俺達の生き残りの末路は残酷なものになるだろう。

 部下たちを生き残らせる為に、俺を含む部下の全滅も辞さない。

 これは自己矛盾じゃないのか。


 森の深部から浅部に近づくにつれ、雨が再び滴り始める。

 針葉樹林帯から広葉樹林帯へと移り変わってきているのだ。

 同時に下草も繁茂してきて、這って進むのが難しくなる。ただそれだけ身を隠す事も容易になる。

 何事も痛しかゆしだ。

 更に次第に忍び寄る闇が俺達を助けてくれた。

 太陽は地に沈み始めたという事だろう。

 俺は自問自答を繰り返し、鎧に侵入する泥と戦いながら進んだ。


 そして煌々とかがり火が焚かれる谷の出口が見え始めた。


 「これは……」


 シュラーが絶句する。


 「ああ」

 「大当たりだ」


 目標は補給部隊ではなかった。

 連隊の本部がある。


 俺もシュラーも生唾を飲み込んだ。


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 次回 埋伏 予感


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