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異世界に来たけど義母が5人もいた上に結構ハードモードだった。  作者: 雨露口 小梅
第一章 撤退支援戦闘(ウィズドロワル・サポート・バトル)
30/212

◇27 埋伏 探索(サーチ)

 【国境・王国側街道の森】

 【2日目 朝 固守残り2日】


 「イルチ。他の部隊の戦況と損害を聞いてくれ」


 イルチが胸に手を当てて心配そうに立っていた。


 「頼む。急いでくれ」


 イルチが歌い始める。


 「ご主人様マイロード


 シュラーが損害を報告してきた。

 戦死・重傷者は3桁。

 軽傷を含む戦える兵は20名もいなかった。


 想像以上の損害だ。

 よくそれだけの戦死者を回収できたものだと思う。


 人は時に、想像を超えた働きをする。

 しかしもう俺の隊、単体では襲撃出来ない。

 部下たちはもう十分、英雄的行為を行った。


 「合流しないとまずいな」


 イルチが教えてくれた。

 俺の部隊が最も損耗が激しく、他の部隊は辛うじて戦闘単位を保っていた。

 つまり、俺が無能だという事だ。


 森の出口ではまだ戦闘が続いている。

 相手は大隊規模だ。

 当然だろう。


 「ご主人様マイロード


 シュラーも心配そうな顔をしている。


 「そうだな」

 「俺達は合流しないと戦闘単位にならないな」

 「ソチェニは?」


 「負傷兵の手当てをしています」


 「そうか」


 「クライナーの陣まで後退する」

 「戦死者、重傷者は置いていく」


 「それで……宜しいのですか?」


 俺は天を仰ぐ。

 止まない雨が俺の顔から泥を拭い去る。


 「やはりダメだな」

 「兵は死んでも、俺達が必ず故郷に返してくれると思ったから、あれだけ勇敢に戦ってくれたんだ」

 「兵の思いを裏切る事になる」


 「クライナーの兵による後送はどうだ?」


 クライナーに戦死者の後送を命じていた事を思い出した。


 「遅々として進んでおりません」

 「戦死者1人を運ぶのに4人の手が必要です」


 「試練だな」


 「残っている兵で戦死者を守る」


 「それでは後送しきるまで、時間がかかりすぎます」

 「いや、まずはそれでいい」

 「ほんの少し、次の手を考えさせてくれ」


 「はい。ご主人様マイロード


 シュラーは一礼すると、少し距離を取って座り込んだ。



 ※


 【国境・王国側谷】


 谷の中は周囲から落ち込んでくる湿気で居心地の悪い事、この上なかった。

 昨晩、僅かでも湯に浸かれたのが、せめてもの慰めだった。

 おまけに、予期せぬ連隊の大損害。そして軍事的停滞が、気分を暗いものにする。


 「街道上での伏撃は減りつつあります」


 連隊情報幕僚が軍服ユニフォームを泥だらけにして報告してくる。

 幾分精悍さを手に入れたように見えるのは気のせいか。


 まるで連隊情報幕僚からのプロポーズに聞こえるような吉報だった。


 「威力偵察に出した部隊には気の毒な事をしたが、これも革命の延長だ」

 「戦務幕僚。見事だ」


 傍らに控える戦務幕僚が、固まっていた表情を緩める。


 「狭隘な街道での挟撃が効いたのだろう」

 「もう森の出口で踏ん張るしか手が無い筈だ」

 「主席幕僚。詰めはどうだ?」


 主席幕僚からも笑みがこぼれる。


 「連隊長の発案。恐れ入りました」


 連隊幕僚の注目が集まる。


 「1個大隊を小編隊に分けて、森の中に入らせました」

 「今まで、敵は戦死者を戦場に残しませんでした」

 「先の騎馬編成隊とぶつかった、突出していた伏撃部隊は、今頃負傷者と戦死者を抱えて身動きが出来なくなる頃です」

 「それを見つけて、予備隊を投入。完全に無力化します」


 損害はお互い様だ。

 ならば、予備兵力の多いこちらが勝つ。

 ようやく敵の指揮官の喉元まで、手が伸ばせたような気がした。


 「野生動物モンスターとの偶発的な戦闘も起きるだろうが、そこは仕方ない」

 「この敵は最後まで磨り潰さなければならない」

 「僅かでも生き残れば必ず逆襲してくる」


 「既に国境を押さえて、森の街道も手に入れれば、王国のどこへでも展開する事が出来ます」

 「そうなれば、共和国軍われわれの独壇場です」

 「敵の追撃、戦果拡張という作戦目的も果たした事になります」


 連隊首席幕僚は、もう「敵の指揮官に拘泥するな」とは言わずに、半分認めて来ている。

 敵への手ごたえが出始めたからだろう。

 師団の目的も達成しつつある今、ついでにまだ見ぬ指揮官を追う事を許容している。

 連隊の頭脳を活用できるのは、とても心強かった。


 連隊の主だった幕僚を改めて眺める。

 この優秀な幕僚たちの作戦が、敵を追い詰めている。

 いつの間にか、敵は自分たちが分断される事になって、更に驚く事になるだろう。


 「捜索と殲滅サーチ・アンド・デストロイで更に追い詰める」

 「今度はどこから攻め立てられるかわからず、翻弄されるのは敵だ」

 「合流させるな」


 「()


 幕僚達は了解する。


 「連隊本部を谷から出すぞ」

 「師団を谷に入れるスペースを作る」

 「そして森の出口に陣取る敵を抜く」


 「危険です」

 「まだ敵は無力化していません」


 連隊首席幕僚が腕を掴んでくる。


 「大丈夫だ」

 「お前たちがいる」


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 次回 埋伏 アンドデストロイ


 2016年07月26日07:00公開予定


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