表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たけど義母が5人もいた上に結構ハードモードだった。  作者: 雨露口 小梅
第一章 撤退支援戦闘(ウィズドロワル・サポート・バトル)
17/212

◇14 鎧vs軍服 逃走(ラン)

 【国境・谷】

 【1日目 夕方 固守残り2日と半日】


 じわじわと後退する壁。

 時々盾の壁が押し広げられ、共和国兵が1人、2人と壁の内側に侵入してくる。


 その度に後列の槍に串刺しにさされて倒れるが、だんだんとその頻度が高くなってくる。


 それは間もなく、盾の壁が壊れるという事。

 チカラ比べも限界だった。

 少し離れたところから味方を見渡してみれば、ひしひしとそれが分かる。


 「ここまでか……」


 「ご主人様マイロード。待たせしました」


 後ろから声がして振り返る。

 遅い。とは言わない。

 皆が全力を出しているのはわかっている。


 命じた増援はクライナー自身が率いていた。

 谷の出口の指揮官がここに。

 今のところ脅威がないという事なのだろう。


 「号令で突入しろ」


 増援は馬車から降りると、荷台の向きを変える。

 荷台の後尾には槍を水平に並べてあった。


 その荷車が谷を塞ぐように横1列に並べられる。


 「シュラー、シュール!」


 俺が呼びかけると2人が振り返り、微笑んだ。


 「クライナー、突き込め!」


 俺の号令と共にクライナーの兵たちが荷台を力いっぱい押す。

 人力で速度を速める荷台は、シュラーやシュールの隊の真後ろまで駆け抜け。


 「盾を捨てろ!」


 シュラーの号令でシュールと兵は一斉に盾を放棄した。

 敵の圧力が盾からあふれ出し、崩れる。


 「全力で後退! 走れ走れ!」


 シュールの命令が飛ぶ。


 盾を捨てたシュラーとシュールの隊は荷台を避けながら、後退する。

 その背後から、何人かの兵が槍に貫かれ、弓に射貫かれて倒れこむ。


 そこにクライナーの荷台が蠢く敵に突っ込んだ。

 敵の肉壁に衝突した荷台は、跳ね上がり車輪を空転させるが、自重によって再び地面を鋭く噛む。


 「押せぇ!」


 クライナーの号令と共に、更に荷台が押し込まれる。

 その荷台の先は、共和国兵が血を溢れさせながら、並べた槍に貫かれていた。


 「押せぇ!」


 クライナーの隊と共和国からの圧力で槍から逃れられない不運な敵兵が、次々と絶命していく。

 シュラーとシュールの隊は、倒れた仲間を担ぎ上げ、後送の馬車に乗り込んでいた。

 その後退を見届けると俺は合図を出した。 


 「クライナー! もういい! 後退だ!」


 俺の合図と共に、クライナーの兵も荷車を捨てて、後送の馬車へ急ぐ。

 兵が乗るか乗らない内に馬車は猛烈な速さで、谷の奥へと駆けていく。


 俺は味方の後退を見届けると、駆け寄るソチェニの手を握って荷台に乗せた。

 敵は槍の壁となった荷台を駆け上がり、最後の1台になった俺たちの馬車を追うが、一足早く走りだすことができた。


 敵は弓を射るがすぐに届かなくなり、小さくなっていった。


 「クライナー。助かった。ありがとう」


 「間に合ってよかったです。ご主人様マイロード


 差し出した俺の手をクライナーが力強く握る。

 その手は自分の様な細くて長い指ではなく、木の枝のように太い指をしていた。


 これが戦うものの手か。

 跳ねまわる馬車に合わせてクライナーのポニーテールも揺れる。


 自分が剣を握っても、生き残る事は出来ないだろうな。

 俺は自分自身が戦おうと思っても、生存性が低いことを認識した。

 こういう手を持つ相手に俺は戦えない。


 跳ねながら疾走する馬車の上でクライナーが聞いてくる。


 「これで出口まで一直線ですか?」


 「いや、この谷の中でもうひと押しする。」

 「簡単にこの谷を抜けられても困る」


 「確かにそうですが……。こちらは兵力が少ない」

 「チカラ押ししても、いずれ磨り潰されます」


 クライナーは風を気持ちよさそうに受け止めながら考えている。


 「それだ。チカラ押しは何回も出来ない」

 「でも、この先どれだけチカラ押しが待っているかわからない、そう思わせたい」

 「チカラ押しに備えて進めば、敵の進軍速度は鈍る」

 「それに直に夜だ、夜はそうそう戦うもんじゃないと思う」


 「つまり?」


 「後1回だけ。強烈なチカラ押しをやる」

 「それをやったら、出口まで逃げる」

 「すまないが付き合ってもらえるか?」


 「ご主人様マイロードの為ならば」


 そして馬車は緩いカーブを超えた。

 そこには、リンヴェッカー、ジアルマタの兵が盾を並べていた。


 馬車は速度を落として盾の壁を越えていく。

 そこには砲術長と3門の砲が並べられていた。


 俺とクライナーはまだ止まっていない馬車から飛び降りる。


 シュラーもいる。

 そして掌砲長もいた。

 両腕を布で首から吊っている。


 「掌砲長。後ろで休んでなくていいのか?」


 「何言ってるんでさぁ、若旦那」

 「俺がいなきゃ、この女どもは動けねぇ」

 「いい女にはいい男が必要だろ?」


 思わず俺は苦笑する。


 「ま、掌砲長の女という事なら、任せるよ」

 「砲術長。掌砲長を宜しく頼む」


 「私の部下ですから」


 砲術長がうなずく。

 掌砲長もうなずいた。


 「クライナー。そのまま後方で待っていてくれ」

 「また後退を手伝って貰うぞ」

 「また1番危険な最後尾だ」


 クライナーが笑うと手を差し出した。

 俺もその手を握る。


 「シュラー。出口で待っていてよかったんだぞ」


 「何をおっしゃいますか。私はご主人様マイロード護衛隊ガーズですぞ」


 俺は盾の列に向かった。


 「作戦会議だ。砲術長、シュラー、リンヴェッカー、ジアルマタ。集まってくれ」



----------------------------------------------------------------


 次回 鎧vs軍服 ギリギリ


 2016年06月14日07:00公開予定


----------------------------------------------------------------

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ