◇13 鎧vs軍服 チカラ(パワー)
【国境・谷】
【1日目 昼 固守残り2日と半日】
盾の壁が敵を押しとどめる。
敵は人数に物を言わせて、盾の壁をおしまくる。
「列を崩すな! そこから押し込まれるぞ!」
リンヴェッカーの叱咤が飛ぶ。
そのリンヴェッカーも剣を握らず、全力で盾を構えていた。
盾の隙間からは双方が槍を突き出し合い。
少しでも敵を殺そうとする。
味方の足は大地を踏みしめるが、押されて轍を作る。
共和国の槍に胸を突かれた兵が倒れこみ。
押されて後退する盾を超えて、踏みにじられながら敵が支配する地に到達する。
「押し返せ!」
味方の号令でその箇所の圧力を増し、敵を2,3歩押し返す。
僅かにのぞいた倒れた兵の手を、盾の後ろに位置する兵が全力で引きずり出す。
敵の攻撃に倒れた兵を置き去りにしない。
「大丈夫だ、大丈夫だぞ!」
踏みにじられ、絶命した仲間を、次々とリレーで後ろに引きずる。
仲間が倒れる。
その度に、俺の大隊は圧倒的な圧力を跳ね返した。
両軍の盾がぶつかり合う後ろでは、互いに弓兵が弦を引き搾り、お互いの後方に向けて弓なりの軌道を描く矢を放つ。
2段目。3段目の交代待機列は、頭上に盾を掲げて弓を防ぐが、僅かに空いた盾の屋根から矢が入り込み、新たに兵を傷つける。
全くの消耗戦。
共和国は鎧を着ていない分、狭隘な地形では小回りが利き、素早く動けた。
そして圧倒的な人数が、疲れを知らず、俺達を押し下げる。
このままでは逃げ切る事も出来ず、盾の壁は食い破られて、俺たちは全滅する。
早急に次の手が必要だった。
俺は伝令をクライナーとコルネスティへ送った。
※
【国境・共和国側丘】
損害の大きい第1大隊に変わり、第2大隊が敵を谷間に押し込んでいる。
丘は取った。
損害は大きかったが、丘は取った。
見ればあちらこちらに壕が掘られている。
おれは丘の下からは見えなかった。
第3大隊はだまし討ちにあったという訳だ。
相手は貴族で騎士。
今までもバカ正直に、正攻法で戦ってきた。
この指揮官は違うようだ。
勝つためには何でもする。
向こうがその気なら、こちらだってなんでもやってやる。
丘の下を見ると、師団から増援が到着していた。
予備の2個大隊。
これで損害は埋められた。
後は谷を押して押して押し込んで、王国へ出るだけだ。
愚かな貴族共へ、人民のチカラを見せてやる。
※
【国境・谷】
【1日目 昼 固守残り2日と半日】
谷の出口に配したコルネスティの負傷兵部隊が、大活躍していた。
馬車を操り、戦死者や負傷兵を後送し、更には前線から後退する兵士も往復して運んでいる。
見ればソチェニも負傷した兵を肩に担いで運んでいた。
シュールとツムの部隊も合流し、盾の壁を交代する。
シュラー、リンヴェッカー、ヴェーク、ジアルマタ、シュール、ツムは交代で盾の壁を指揮する。
それも負傷者が増えていくにつれ、リンヴェッカー、ジアルマタ、ヴェークと谷の出口まで後退し、数が減っていく。
それに反して、敵のはますます意気を上げているように感じる。
丘は敵の徐々に敵の領地になっていった。
戦術的に後退する兵も増えて、こちらの前面は薄くなってきている。
クライナーとコルネスティに命じたものが届くまで、何としてもこの盾の壁を維持しなければならない。
そこへツムが兵に引きずられ運ばれてきた。
ツムが肩口から腹まで槍が突き刺さり、痙攣している。
口や鼻からあふれ出る血は泡をつくり、目は焦点があっていなかった。
「どうした?」
運んでいる兵の1人に聞くと、敵が投擲した槍に貫かれたらしい。
運悪く。とその兵は付け加えた。
後送の馬車へ、ツムが引きずられていくのを見送った。
あれほどの大男が死ぬのか。
どうして俺のような柔い男が生きているのか不思議だった。
怯懦だからなのか。
俺はツムの最期をみとってやる余裕はなかった。
伝令の成果をひたすらに待つ。
間に合わなければ俺たちもあのようになる。
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次回 鎧vs軍服 逃走
2016年06月10日07:00公開予定
前回間違ってこの回を公開してしまいましたので、この後に連続して次回(逃走)を公開します。複雑になってしまってすみません。
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