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異世界に来たけど義母が5人もいた上に結構ハードモードだった。  作者: 雨露口 小梅
第一章 撤退支援戦闘(ウィズドロワル・サポート・バトル)
15/212

◇12 亜人 殺戮(ジェノサイド)

 【国境・谷】

 【1日目 昼 固守残り2日と半日】


 恐慌をきたして【歌うもの(シンガー)】達が谷の奥に向かって駆ける。

 やはり、自分たち(シンガー)への包囲と勘違いしたか。


 モニオムとレディ=マホ達が【歌うもの(シンガー)】達に虐殺されなければいいが……。

 自分で立てた作戦だが、色々と甘い。


 このまま背中から攻撃されないとも限らない。

 そうした場合、俺は自分で自分の首を絞めた事になる。


 レディ=マホとモニオムの機転に期待するしかないか……。

 無責任で不確実だ。


 でも自分ではすべてを制御できない。

 これも運の内だ。


 前方を見つめ、気持ちを切り替える。

 既に共和国正規兵は丘の上に登りつつあった。


 掌砲長が怒鳴りながら、壁際に寄せていた砲車を配置しなおす。

 敵に取りつかれる前に打てるかどうか。

 俺が想像していたより砲の動きが遅い。

 重量物だからか、足元の地盤が悪いからか。

 時間との勝負だ。

 しかし俺が焦っても何も出来ない。

 プロはプロに任せるしかない。


 会社カンパニーから遅れる事、槍兵と剣兵は、盾を構えて俺と並んで走っている。

 突出している会社カンパニーの連中が、敵に飲み込まれたら救出しなければ。


 シュラーが駆けよってきて、俺の剣を返してよこす。


 「ありがとう」

 「会社カンパニーの砲撃と合わせて突撃! 会社カンパニーの連中は見殺しにはしない!」


 剣を掲げて叫ぶ。

 応答の蛮声が上がった。


 「打て!」


 砲術長の号令と共に4門の砲声が轟いた。



   ※


 【国境・共和国側平原】


 「連隊長。もう少し後ろで指揮された方が……」

 「1大隊が情報を持ってきます!」


 斜面を駆け上がりながら、主席幕僚が腕を取る。


 「奴隷兵の事はもう良い!」

 「奴隷兵が開けた丘に取りつかないと同じことの繰り返しになる!」

 「これ以上の犠牲は看過できない」

 「お前も私も無能扱いされるぞ」


 左右を見ると、縦隊になって丘を上がる第2大隊と第4大隊が見える。


 「敵の抵抗がない内に押し込むぞ!」


 その時、丘の上から砲声が届いた。


 「連隊長!」


 主席幕僚が目の前に立ちふさがる。


 「バカめ! 砲弾で1000の人間が止められるか」


 主席幕僚が毒づく。

 その通りだと感じた。


 斜面には更に2個大隊。2000の兵がいる。

 この戦闘は取った!

 突き崩してやる。


 そして突然の雨が降り、止んだ。


 「通り雨か……」


 豪雨の様に雨が地面を叩きつけ、斜面を流れ下っていく。

 本格的に降ると厄介だ。


 空を見ると、雲1つない。

 主席幕僚の顔を見ると血で濡れていた。


 「連隊長! お怪我は!」


 「馬鹿者! 自分の心配をしろ!」


 お互い自分の体を触って確認する。


 主席幕僚と顔を見合わせる。

 自分に怪我はない……。まさか……。


 雹が落ちるような音がする。

 嫌な予感がした。


 周りを見ると、共和国兵だったモノが散乱していた。

 木の葉が舞うように、空から盾が落ちて、地面に刺さる。


 「やつら……。何をしたんだ?」



   ※


 【国境・谷】

 【1日目 昼 固守残り2日と半日】


 「これがぶどう弾の威力か……」


 思わず足が止まり、戦場を見入る。

 それは横にいるシュラーも同じだった。


 「凄まじいものですな」

 「海ではいつもこのような戦いをしているものなのでしょうか」


 敵の横隊にぽっかり穴が開いている。

 まるで何もなかったかのように。


 無数の細かい砲弾が、その射界にあるもの全てを砕いて消し去った。


 「船が沈めば全員あの世行きですからね」

 「食料も水も限りがありますから捕虜は取りません」


 「相手の船がほぼ無傷で拿捕。もしくはこちらの頭数が足りないから補充する」

 「そういう理由がない限りは皆殺しです」


 砲術長が変わって答えてくれる。

 凄まじい生存競争だな。


 話している間にも、砲身のすす払いが行われ、炸薬が詰め込まれ、突き固められる。

 ぶどう弾が流し込まれ、突き棒で再び突き固められる。

 それが恐るべき速さで行われていた。


 敵も動きを止めたのは一瞬で、直ぐにカンパニーの大砲に向けて突撃を再開する。

 この砲を止めないと次は自分たちの番だという事がわかっているようだ。


 「剣士隊! 盾を構え!」


 シュラーが命令を出す。


 「打て(ファイア)!」


 砲術長の号令が響く。

 4門の方が唸り、その射界に収められている敵が消滅した。


 砲撃の衝撃で、掌砲長の砲座が擱座する。

 片側の車輪が外れている。


 「おかの物はやわでいけねぇ」


 「剣士隊。押し返せ!」


 俺が号令した。

 盾の壁が敵にぶつかる。

 会社カンパニーはこれまでだ。


 敵の数が多い。

 谷の終わりから出たところでのチカラ押しだから、敵の数がそのまま圧力になっている。


 早く谷の中に入らないと盾の壁が押し破られる。


 「今のうちだ。後退しろ!」


 砲術長が命令を出す。


 素早く前進していた馬車から渡り板が曳き下ろされ、大急ぎで大砲が引き上げられていく。

 しかし掌砲長の大砲は、車輪を無くし傾いて動かなかった。


 「砲を捨てろ! 後退するぞ」


 砲術長が決断する。


 「冗談じゃありませんさぁ。お前ら、砲座を掴め!」

 「持ち上げるぞ」


 どうやって?!

 擱座した方の左右を掴んでも、前後のバランスが取れない。


 「いくぞ! 持ち上げろぉぉ」


 掌砲長が砲員に命令を出すと、おもむろに砲口に手をかけた。


 「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 肉が焼ける音と共に、掌砲長の手から煙が上がる。

 バランスの取れた砲がそのまま、馬車に載せられた。


 砲口を掴んだまま倒れこむ掌砲長を砲員が抱きかかえる。

 砲に焦げ付いた両手は中々離れず、3人がかりで無理やり引きはがした。


 そのまま掌砲長を抱えて馬車に乗り込む。


 「出せ」

 「若旦那! 先にいきます」


 砲術長が手を挙げると、馬車は全力で谷の奥に消えていった。


 「よし、俺たちも後退するぞ」

 「谷の奥へ誘い込め!」


 そこからは、人間と人間の蛮性が支配する戦いになった。

 谷の中での後退戦は寸土を争い、幾多の命が簡単に踏みにじられていく。


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 次回 鎧vs軍服 チカラ


 2016年06月10日07:00公開予定

 諸般の事情により、更新時間は全て07:00に統一させて頂きます。


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