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ある日神の寄越し給ひし異形の獣に撥ねられて失せにければ異世界へ転生仕りき、されど能力の鉄の牛車召喚も黒き神境(?)とやらも使いよう皆無なり!  作者: イグアナ
転生と異世界大事故編

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耳長き女、現るること

 牢より解放されし後。


 佐藤健一、深き溜息つきける。


「……もう食い逃げはやめろよ」


「飯に値段あるなど知らなかったなり」


「学べ」


 一方。


 御池貴光、街中きょろきょろ見回しける。


「異界、人多きなり」


「街だからな」


 人々行き交ひ。


 商人叫び。


 鍛冶屋、かんかん鉄打ち鳴らしける。


 その時なり。


 どん、と佐藤の肩叩きし男あり。


「おう兄ちゃんら、新入りか?」


 筋骨隆々たる大男なり。


 腰には剣。


 胸には妙なる札。


「……誰?」


「冒険者ギルドの勧誘だよ」


 男、にやりと笑ひける。


「最近人手足りねぇんだ」


「冒険者……」


 佐藤、少し考え込みける。


「……金稼げる?」


「そりゃな」


「行こう」


「即決なりな」


 かくして二人、冒険者ギルドへ向かひける。


 中はいと騒がし。


 酒飲む者。


 依頼眺むる者。


 腕相撲始める者。


 いかにも冒険者めきし空間なり。


「うわぁ……テンプレ異世界だ……」


「てんぷれ?」


「お約束」


「ほう」


 その時なり。


 入口付近にて、一人の女立ちける。


 長き金髪。


 尖りし耳。


 白き肌。


 青き瞳。


 背高く、整ひし顔立ちなり。


 まさしく物語めきし美貌。


 周囲の冒険者達も、ちらちら見やりける。


「……エルフ?」


 佐藤、ぽつりと呟きける。


 女、こちら見て鼻鳴らしける。


「ふん。田舎者丸出しね」


「うわ、テンプレだ」


「何なりあれ」


 貴光、真顔にて言ひ放ちける。


「異国感強すぎなり」


「は?」


 女――エレノア・シルヴァリア、固まりける。


「……今何て?」


「顔立ち濃ゆきなり」


 ギルド内、静まり返りける。


 佐藤、ゆっくり顔覆ひける。


「始まった……」


 エレノア、ぴくぴく震えける。


「アンタねぇ……!!」


 ずんずん近寄り。


「私を誰だと思ってんのよ!?」


「耳長き女子なり」


「エルフよ!!」


「えるふ」


 貴光、しげしげ見つめける。


「……貧相なり」


「はぁ!?」


 ギルド内、ざわめきたり。


「アイツ死んだな……」

「エレノアにあそこまで言う奴初めて見たぞ……」


 エレノア、顔真っ赤にしける。


「アンタねぇ!! 私のどこが貧相なのよ!!」


 貴光、少し考え込み。


「全体的になり」


「ッッッ!!」


 佐藤、慌てて割り込みける。


「待て待て待て!! こいつ平安時代の価値観だから!!」


「へいあん?」


「ふくよかな方が美人なんだよ!!」


 エレノア、しばし沈黙し。


「……最低」


「理不尽なり」


 その時。


 受付嬢、ひょこり顔出しける。


「えーっと……パーティ登録します?」


「する」


 佐藤、即答しける。


「待ちなさいよ」


 エレノア、腕組みしつつ言ひける。


「ちょうど前衛足りなかったのよね」


「おお」


「だからアンタ達、私のパーティ入りなさい」


「逆では?」


「うるさい!」


 その時なり。


 外より。


 もぉー。


 黒牛の鳴き声響きける。


 ギルド内、一斉に静まり返りたり。


「……何?」


 エレノア、恐る恐る外見やりける。


 そこには。


 巨大なる鉄の牛車を、死んだ目した黒牛が引きずりたり。


「……………………」


「……………………」


 エレノア、ゆっくり振り返りける。


「……アレ何?」


 貴光、誇らしげに答えける。


「牛車なり」

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