銅貨、天より降ること
「待てコラァァァ!!」
食堂の店員達、怒号上げつつ追いかけ来たり。
一方。
御池貴光、凄まじき速度にて街中駆け抜けける。
「異界、厳しきなり!!」
「だからお前が悪いんだって!!」
佐藤健一もまた全力疾走しける。
されど。
土地勘なき二人、数分後には袋小路へ迷い込みけり。
「……終わった」
佐藤、静かに呟きける。
次の瞬間。
門番達、一斉に飛び掛かりける。
「確保ォ!!」
「ぐえっ」
かくして二人、あっさり捕縛されけり。
その後。
石造りの牢へ放り込まれたり。
鉄格子。
湿りたる床。
薄暗き空間。
いと牢屋なり。
佐藤、壁へ頭打ち付けける。
「終わったぁ……」
一方。
貴光、妙に落ち着き払ひけり。
「都の獄より広きなり」
「比較対象が平安時代なんだよ」
その時。
門番、鉄格子越しに睨みつけける。
「銅貨十二枚払うまで出さんからな」
「十二枚くらい許せよぉ……」
「駄目に決まってんだろ」
門番、ぴしゃりと言ひ放ちける。
しばし沈黙。
その後。
佐藤、ぽつりと呟きける。
「……終わりだ」
「大袈裟なり」
「お前分かってねぇよ!! 異世界で無一文ってかなり詰みなんだぞ!?」
「銅貨とは、そんなに大切なりか」
「飯食えるかどうかレベルだよ!!」
貴光、少し驚きける。
「ほう」
その時なり。
天井辺りより、ぼそぼそと声聞こえける。
『あー……』
「む」
『ちょっと展開困ったので』
「出た」
佐藤、死んだ目しける。
『金出します』
「雑ゥ!!」
次の瞬間。
じゃらじゃらじゃら!!
「うおっ!?」
天井より、茶色き円盤、大量に降り注ぎける。
かんかんかん!!
「痛っ!!」
「額なり!!」
牢屋中、十円玉まみれとなりけり。
門番、ぽかんと口開けける。
「……何だこれ」
佐藤、十円玉一枚拾い上げける。
「十円玉だ……」
貴光、しげしげ見つめける。
「銅貨めきしものなり」
『部屋にあったやつです』
「生活感出すな!!」
佐藤、叫びける。
一方門番。
十円玉じっと見つめ。
「……銅?」
かじり。
「……銅だな」
「通じるの!?」
数分後。
門番達、何やら相談始めける。
「銅として溶かせば価値あるか?」
「あるんじゃね?」
「大量にあるしな……」
その後。
牢、普通に開けられけり。
「もういい。出てけ」
「えっ」
「二度と食い逃げすんなよ」
佐藤、ぽかんと固まりける。
「解決した……」
一方。
貴光、静かに頷きける。
「やはり銅貨なり」
「十円玉だよ!!」
その時なり。
再び天井より声聞こえける。
『ちなみにこれ来月の昼飯代です』
「生活苦しい神やめろ!!」




