依頼板、読めぬこと
冒険者ギルド。
昼時なり。
酒臭き空気漂ひ、冒険者達、騒がしく笑ひ合ひける。
一方。
御池貴光、壁一面に貼られし紙見つめ、難しき顔しけり。
「……何やら札多きなり」
「依頼板だよ」
佐藤健一、隣にて説明しける。
「仕事一覧」
「ほう」
貴光、じっと紙見つめける。
「……読めぬなり」
「そりゃ異世界語だからな」
「不便なり」
一方。
エレノア・シルヴァリア、腕組みしつつ呆れ顔しける。
「アンタ達、本当に初心者なのね」
「初心者っていうか被害者だよ俺は」
「知らぬなり」
「お前は少し知れ」
エレノア、依頼板より一枚剥がしける。
「薬草採取。初心者向け。報酬、銅貨八枚」
「おお」
佐藤、少し目輝かせける。
「ようやくまともな仕事だ……」
「草摘むだけなり?」
「そうよ」
エレノア、呆れ顔にて言ひける。
「簡単な依頼から始めるのが普通なの」
されど貴光、難しき顔しける。
「草摘みて金得るとは、不思議な世なり」
「働いたことない貴族は黙ってて」
「理不尽なり」
その時なり。
近くの冒険者達、ちらちらこちら見始めける。
「おい、アレだろ?」
「鉄の牛車の……」
「昨日食い逃げした奴ら」
佐藤、顔覆ひける。
「もう広まってんのかよ……」
一方貴光。
妙に誇らしげに頷きける。
「有名なり」
「悪名だよ!!」
その時。
ごとん。
ギルド外より重き音響きける。
静まり返る冒険者達。
「……まさか」
エレノア、嫌そうな顔にて外見やりける。
そこには。
黒牛。
そして。
巨大なる鉄の牛車。
「お前ギルドまで持ってきたの!?」
「移動用なり」
「だから何で牛に引かせてんのよ!!」
黒牛、もぉー、と疲れ切りし声にて鳴きける。
冒険者達、ざわつきたり。
「何だあの魔導兵器……」
「いや牛車では?」
「でも鉄だぞ?」
その時なり。
貴光、ふと真顔にて呟きける。
「……暑きなり」
そして鉄の牛車へ近づき。
窓、こんこん叩きける。
「やはり風通し悪きなり」
「まだ言ってんの!?」
次の瞬間。
貴光、軽く助走つけ。
烏帽子にて窓へ頭突きかましける。
ごっ。
「痛ッッッ!!!!!」
窓、無傷。
貴光、その場に蹲りける。
ギルド内、静まり返りたり。
「……………………」
「……………………」
エレノア、恐る恐る口開きける。
「……何してるの?」
貴光、額押さへつつ答えける。
「換気なり」
佐藤、静かに天仰ぎける。
「終わってる……」




