薬草、見分けつかぬこと
翌朝。
御池貴光、佐藤健一、エレノア・シルヴァリアの三人、街外れの草原歩みけり。
もちろん。
後方には黒牛。
そして。
鉄の牛車。
ぎぃ。
ぎぃ。
「……遅い」
エレノア、死んだ目しける。
「徒歩と変わらないじゃない」
「風情あるなり」
「いらないわよそんなの」
一方佐藤。
荷台に揺られつつ干し肉齧りける。
「まぁでも荷物持たなくていいのは楽だな……」
「当然なり。牛車ゆゑ」
「軽トラだって」
その時なり。
エレノア、立ち止まりける。
「この辺ね」
「何なり」
「薬草採取場所よ」
見渡せば、一面草だらけなり。
緑。
緑。
緑。
「……全部草なり」
「薬草探すのよ」
エレノア、慣れた様子にてしゃがみ込み、一株摘み上げける。
「これが薬草」
「ほう」
貴光、しげしげ見つめける。
「草なり」
「草よ」
「違い分からぬなり」
「見分けるの!」
一方佐藤。
適当にその辺の草むしり始めける。
「これとか?」
「それ雑草」
「これは?」
「毒草」
「危なっ」
貴光もまた、適当に草摘みける。
「これは」
「雑草」
「これは」
「雑草」
「これは」
「それ食べたら腹壊すやつ」
「草、難しきなり」
その時なり。
黒牛、もしゃもしゃと周囲の草食み始めける。
「あっ」
エレノア、青ざめける。
「ちょっと待って!!」
「む?」
「その辺毒草あるのよ!?」
黒牛、ぴたりと停止しける。
「…………」
そして静かに、食べかけの草吐き出しける。
佐藤、感心した顔しける。
「賢っ」
「牛の方が優秀じゃない……」
一方貴光。
薬草一株摘み上げ、しみじみ眺めける。
「……これ、本当に金になるなりか」
「なるわよ」
「草売りて生計立つとは」
「依頼だからね」
その時。
佐藤、ふと遠く指差しける。
「……あれ何?」
茂みの向こう。
何やら緑色の影、ちらちら動きたり。
エレノア、表情引き締めける。
「……ゴブリン」
「また不審者なりか」
「魔物よ!!」
ごそごそ。
茂み揺れ。
小鬼三匹、現れけり。
短剣持ち。
ぼろ布纏ひ。
ぎらぎらとこちら見つめける。
「ギギッ!」
「やべぇ、三匹いる」
佐藤、後退りける。
一方。
貴光、妙に冷静なり。
「前回の光、試すなり」
「え?」
次の瞬間。
貴光、黒き神境取り出し。
小鬼へ向け。
ぴかっ。
「ギィィィィッ!!」
一匹、目押さえ転げ回りける。
「また効いた!?」
されど残り二匹、普通に突進し来たり。
「ギギギッ!!」
「一匹しか焼けてねぇ!!」
エレノア、弓構えける。
「下がって!」
ひゅっ。
矢、一直線に飛び。
ごっ。
一匹の額へ突き刺さりける。
「ギッ!?」
そのまま小鬼、倒れ伏しける。
「おお」
貴光、少し感心した顔しける。
「女子にしてはやるなり」
「その言い方やめなさいよ!!」
残る一匹。
ぎゃあぎゃあ叫びつつ、貴光へ飛び掛かりける。
その瞬間。
黒牛。
無言にて前脚振り上げ。
どごっ。
小鬼、吹き飛びける。
「……………………」
「……………………」
しばし沈黙。
佐藤、ゆっくり呟きける。
「……牛が一番強くね?」




