小鬼、売れること
小鬼三匹、地面へ転がりけり。
一匹、矢にて沈み。
一匹、黒牛に蹴り飛ばされ。
一匹、未だ目押さえ転げ回りたり。
「ギィィィ……」
貴光、黒き神境掲げつつ頷きける。
「退魔の術、効きたり」
「スマホのフラッシュだって」
佐藤、即座に返しける。
一方。
エレノア、倒れし小鬼見つめける。
「……初依頼にしては悪くないわね」
「え?」
「ゴブリン討伐報酬も入るし」
「金貰えんの!?」
佐藤、目輝かせける。
「異世界最高!!」
「現金なり」
その時なり。
エレノア、倒れし小鬼の耳掴みける。
「よいしょ」
「何してんの?」
「証拠回収」
「証拠?」
「討伐部位よ。普通は耳持って帰るの」
佐藤、しばし固まりける。
「……うわぁ、異世界っぽい」
「何なり」
「ゴブリンの耳」
貴光、少し嫌そうな顔しける。
「穢らわしきなり」
「でも金になるわよ」
次の瞬間。
貴光、即座にしゃがみ込みける。
「耳どこなり」
「切り替え早ッ」
その後。
三人、小鬼の耳回収し始めける。
黒牛のみ、遠く見つめ静かに草食みたり。
しばらく後。
薬草採取終えし頃。
佐藤、袋見つめつつ呟きける。
「……結構稼げるかも」
「初心者依頼だしね」
エレノア、肩竦めける。
「これくらい普通よ」
「普通、ゴブリンの耳切らねぇんだよ日本は」
「にほん?」
「俺達いた国」
エレノア、少し不思議そうな顔しける。
「……アンタ達、本当に変な所から来たのね」
「お前らも大概だよ」
「は?」
「エルフとか初めて見たし」
「……ふん」
エレノア、少し得意げに髪かき上げける。
「まぁ、エルフは美しい種族だから――」
「異国感強きなり」
「だからその評価やめなさいよ!!」
その時。
ぐぅぅぅ。
佐藤の腹鳴りける。
「……また腹減った」
「さっき食ったなり」
「動いたからだよ」
一方。
貴光、ふと黒牛見つめける。
「牛も疲れたりな」
黒牛。
実に死んだ目しける。
エレノア、鉄の牛車見やり。
「ねぇ」
「何なり」
「それ本当に牛で引かせる必要ある?」
「牛車ゆゑ」
「だから軽トラでしょ!?」
「異界の者、皆同じこと申すなり」
「アンタだけがおかしいのよ!!」
その時なり。
佐藤、ふと真顔にて呟きける。
「……そういやさ」
「何なり」
「この軽トラ、絶対壊れないんだよな?」
「うむ」
「つまり……」
佐藤、にやりと笑ひける。
「めちゃくちゃ高く売れるんじゃね?」
しばし沈黙。
風、吹き抜けけり。
エレノア。
貴光。
黒牛。
全員、鉄の牛車見やりける。
そして。
黒牛のみ、静かに首振りけり。




