鉄の牛車、売れざること
小鬼討伐と薬草採取終えし後。
三人と一頭、再び街へ戻りけり。
もちろん。
黒牛、鉄の牛車引きずりつつ。
ぎぃ。
ぎぃ。
エレノア・シルヴァリア、死んだ目にて呟きける。
「やっぱ遅いわねこれ……」
「風情あるなり」
「速度に風情求めてないのよ」
一方。
佐藤健一、軽トラ見つめつつ、何やら考え込みける。
「……いや待てよ」
「何なり」
「これ絶対高値つくだろ」
貴光、怪訝そうな顔しける。
「高値?」
「売るんだよ!!」
佐藤、軽トラばんばん叩きける。
「鉄の塊だぞ!? しかも壊れない!! 王族とか欲しがるって!!」
「む」
貴光、軽トラ見上げける。
黒く。
暑く。
風通し悪く。
異様に頑丈なる牛車。
「……嫌なり」
「は?」
「旅の牛車なり」
「愛着湧いてんじゃねぇ!!」
一方エレノア。
若干引き気味な顔しける。
「こんなのに愛着持つ人初めて見たわ……」
その時なり。
街の商人らしき男、こちらへ近づきける。
「……おい」
「む?」
男、鉄の牛車見て目細めける。
「何だこりゃ……」
ぺたぺた。
車体触り。
窓叩き。
下覗き込み。
ぐるぐる周り始めける。
「鉄……?」
「しかも継ぎ目少ねぇ……」
「この透明部分、硝子か?」
こんこん。
窓叩きける。
「硬ぇな……」
佐藤、にやにやしける。
「どうっすか?」
「……いや」
商人、難しき顔しける。
「これ売れねぇわ」
「は?」
佐藤、固まりける。
「いや待てよ!! こんな鉄の塊だぞ!?」
「だからだよ」
商人、軽トラ指差しける。
「分解できねぇ」
「……あっ」
「鍛冶師呼んだとしても無理だろこれ」
商人、窓ばんばん叩きける。
「硝子すら割れねぇじゃねぇか」
「確かに」
「鉄として売るにも加工できねぇ」
「馬車として使うにも重すぎる」
「構造も意味分からねぇ」
しばし沈黙。
「……産業廃棄物だな」
「産廃扱いされたァ!!」
佐藤、絶叫しける。
一方。
貴光、少し得意げに頷きける。
「やはり特別な牛車なり」
「そこポジティブに捉える!?」
その時。
商人、ふと黒牛見やりける。
「……むしろ牛の方が欲しいな」
黒牛。
ぴたりと停止しける。
「もぉ?」
商人、頷きける。
「賢そうだし」
「確かに」
「体格いいし」
「まぁ」
「この鉄塊よりよっぽど価値ある」
黒牛。
どこか誇らしげな顔しける。
一方軽トラ。
ただそこに鎮座し、無駄に夕日反射しける。
佐藤、静かに呟きける。
「……異世界来て軽トラが産廃扱いされるとは思わなかった」




