依頼、全く向かぬこと
翌朝。
冒険者ギルド前。
御池貴光、鉄の牛車の荷台にて優雅に茶すすりける。
「実に良き朝なり」
「どこがだよ……」
佐藤健一、死んだ目にて呟きける。
一方。
エレノア・シルヴァリア、依頼書束抱えつつ現れける。
「今日の依頼持ってきたわ」
「おお」
「初心者向け中心よ」
そう言ひつつ、一枚取り出しける。
「森の薬草採取」
「却下なり」
「早ッ」
貴光、難しき顔しける。
「草、見分けつかぬ」
「覚えなさいよ!!」
エレノア、更に別の依頼取り出しける。
「じゃあこれは? 荷物運搬」
「ほう」
佐藤、少し期待した顔しける。
「軽トラあるし行けんじゃね?」
その瞬間。
エレノアと佐藤、同時に軽トラ見やりける。
黒牛。
もぉー。
ぎぃ。
ぎぃ。
「……遅いわね」
「遅ぇな」
一方貴光。
誇らしげに頷きける。
「安定感あるなり」
「徒歩以下なんだよ」
その時。
ギルド奥より筋肉質なる男現れける。
「おい新入り」
「む?」
「荷運び依頼ならちょうどいいのあるぞ」
男、依頼書ぺらりと見せける。
「街まで樽十個運搬。報酬、銅貨三十枚」
「三十!?」
佐藤、目輝かせける。
「やる!!」
「決まりだな」
かくして数刻後。
軽トラ荷台へ大量の樽積み込まれけり。
「おお」
貴光、感心した顔しける。
「牛車らしくなりたり」
「本来こういう使い方なんだよ」
されど。
出発直後。
黒牛。
ぴたりと停止しける。
「……もぉ」
「む?」
全く動かず。
「頑張れ牛よ」
「もぉ」
「嫌がってるわよ」
佐藤、後ろより軽トラ押し始めける。
「ぐっ……重っ……!!」
エレノアもまた押しける。
「何で私まで……!!」
一方。
貴光のみ、荷台座り込みける。
「良き景色なり」
「降りろォ!!」
数分後。
三人汗だく。
黒牛、座り込みたり。
「……限界なりな」
「当たり前だろ!!」
佐藤、息切らしつつ叫びける。
「お前この軽トラ何キロあると思ってんだ!!」
「知らぬなり」
「一トン近くあるんだよ!!」
「一とん?」
「クソ重いって意味!!」
その時なり。
樽一つ、荷台より転がり落ちける。
ごろん。
ばしゃぁ。
「……………………」
「……………………」
酒なり。
地面へぶちまけられける。
依頼主、静かに震え始めける。
「……お前ら」
「む?」
「何してくれてんだァァァァ!!」
数分後。
三人、再びギルド前へ正座させられけり。
「荷運び依頼失敗っと……」
受付嬢、慣れた様子にて書き込みける。
佐藤、力なく呟きける。
「……軽トラあるのに荷運び向いてないって何なんだよこの世界……」
一方。
貴光、真顔にて頷きける。
「牛不足なり」




