空飛ぶ家、既に飛んでいること
軽虎温泉。
翌朝。
一同。
朝飯食ひながら旅人の話聞きけり。
「で」
「空飛ぶ家って何?」
佐藤健一、真顔なり。
一方。
旅人。
当然のように答えける。
「空飛ぶ家です」
「説明になってねぇ!!」
⸻
一方。
旅人。
パン齧りながら続けける。
「南方の平原でな」
「うむ」
「家が飛んでる」
「だから何でだよ」
その時。
旅人。
真顔にて補足しける。
「しかも人住んでる」
「住んでるの!?」
「住んでる」
しん。
一同。
嫌な予感しかしなくなりける。
⸻
その頃。
軽虎温泉外。
信者達。
既に準備始めける。
「軽虎様出発だァァァ!!」
「巡礼再開だァァァ!!」
「南方へ導かれるのだ!!」
「誰も導いてねぇ!!」
一方。
貴光。
当然のように荷台乗りける。
「旅路なり」
「慣れすぎだろ」
⸻
数日後。
南方平原。
広大なる草原広がりける。
その時なり。
宗重。
遠く見つめける。
「……あれか」
「え?」
一同。
視線向けける。
そして。
「……………………」
「……………………」
空。
飛んでおりける。
家。
「飛んでるゥゥゥ!!」
佐藤、絶叫なり。
⸻
一方。
その家。
普通の木造住宅なり。
二階建て。
煙突付き。
洗濯物まで干されける。
しかし。
飛んでおりける。
「意味分かんねぇ!!」
源三、頭抱えける。
一方。
セシリア。
呆然と呟きける。
「魔法?」
「知らん」
エレノア即答なり。
⸻
その時。
空飛ぶ家。
ゆっくり降下し始めける。
どすん。
草原へ着地。
そして。
玄関開きたり。
ばたん。
一人の男現れける。
「おーい」
「む?」
男。
二十代後半ほど。
眼鏡。
作業着。
寝癖。
そして。
めちゃくちゃ普通。
「誰?」
佐藤、率直に問ひける。
一方。
男。
当然のように答えける。
「高橋翔太」
「普通だ」
「普通だな」
「普通ね」
全員一致しける。
⸻
その時。
空。
ぴこん。
半透明板出現しける。
『転生特典』
『浮遊付与』
『重量無視』
『建築技術:特級』
「……あー」
源三、納得しける。
「なるほど」
「なるほどじゃねぇよ」
一方。
高橋。
家指差しける。
「家飛ばしたかった」
「何故」
「通勤無くしたかった」
「昭和人より意味分かんねぇ!!」
⸻
一方。
高橋。
家自慢始めける。
「風呂ある」
「ほう」
「台所ある」
「うむ」
「寝室ある」
「普通だな」
「空飛ぶ必要ある?」
佐藤、核心突きける。
その瞬間。
高橋。
少し考え込み。
「……無い」
「無いのかよ!!」
⸻
一方。
信者達。
空飛ぶ家見つめ。
ざわつき始めける。
「新たな神の奇跡だ……」
「空の御殿だ……」
「やめろォォォ!!」
佐藤、全力で止めける。
しかし。
既に数人。
空飛ぶ家へ祈り始めける。
「学習しろお前ら!!」
⸻
その夜。
一行。
高橋宅に招待されける。
普通に晩飯食い。
普通に雑談し。
普通に泊まる流れとなりける。
一方。
外。
信者達。
勝手に看板立て始めける。
『空飛ぶ聖殿』
「早ぇよ!!」
佐藤、絶叫しける。
その時。
高橋。
窓から外見つめ。
ぽつりと呟きける。
「……俺」
「引っ越そうかな」
「その気持ちは分かる」
一同。
初めて心から同意しけり。




