軽虎様、神輿にされかけること
鉄虎砦。
朝。
嫌な静けさ漂ひけり。
「……………………」
「……………………」
佐藤健一。
ゆっくり目覚めける。
「……静かすぎる」
一方。
外。
誰も騒いでおらず。
祈祷声も無し。
太鼓も無し。
妙なほど平和なり。
「逆に怖ぇ」
その時なり。
エレノア・シルヴァリア、顔青ざめたまま駆け込みける。
「佐藤!!」
「何!?」
「軽トラが無い!!」
「は?」
しん。
数秒停止。
そして。
「はぁぁぁぁぁ!?!?」
⸻
一方。
砦中央。
確かに。
軽トラ、消失しける。
代わりに。
地面へ大量の車輪跡残りけり。
「盗まれた!?」
一方。
宗重。
静かに跡確認しける。
「大人数」
「え?」
「統率あり」
「深夜移動」
「分析がガチなんよ!!」
その時。
ぺ・ヤ。
地面嗅ぎ始めける。
「白布の人」
「信者か!!」
その瞬間。
遠方。
「おおおおお!!」
「軽虎様ァァァ!!」
「……………………」
「……………………」
全員。
嫌な顔しける。
⸻
数分後。
一行。
街道全力疾走しける。
そして。
丘越えた瞬間。
「……………………」
「……………………」
そこには。
大量の信者達。
白装束。
旗。
太鼓。
笛。
そして。
中央。
担がれし軽トラ。
「神輿になってるゥゥゥ!!」
佐藤、絶叫しける。
一方。
軽トラ。
大量の縄巻かれ。
金布付けられ。
完全に祭礼仕様なり。
「なんでだよ!!」
その時。
軽虎教初代司祭(自称)。
感動した顔で両手広げける。
「本日!!」
「軽虎様巡礼祭を開催致します!!」
「開催するな!!」
一方。
信者達。
「おおおおお!!!」
妙に盛り上がりける。
さらに。
「軽虎様ァ!!」
「御加護をォォォ!!」
供物まで投げ込み始めける。
野菜。
魚。
果物。
何故か靴。
「なんで靴あるんだよ」
⸻
その時。
田所源三。
完全に青ざめける。
「お、おい!!」
「む?」
「サスペンション!!」
「サスペンション逝くって!!」
「そこ!?」
一方。
源三。
本気焦りなり。
「変な揺れ方してる!!」
「担ぎ方雑!!」
「整備工の視点!!」
その時。
信者達。
さらに勢い増しける。
「うおおおお!!」
どんっ!!
どんっ!!
一方。
軽トラ。
妙に安定しける。
「……………………」
「……………………」
源三。
静かに固まりける。
「……なんで平気なんだよ」
「神だからでは?」
セシリア、眠そうに呟きける。
「お前聖女だろ!!」
⸻
一方。
宗重。
腕組みしつつ神輿行列見やりける。
「統率良いな」
「お前そこしか見てねぇのか!?」
その時。
ぺ・ヤ。
供物箱見つけける。
「肉ある」
「お前はブレねぇな!!」
⸻
その瞬間。
貴光。
ゆっくり前へ出でける。
「……………………」
一方。
信者達。
ざわ……。
「巫覡様だ……!」
「軽虎様の御言葉を……!」
「誰が巫覡だ!!」
しかし。
貴光。
真顔のまま軽トラ見つめ。
ぽつりと呟きける。
「牛おらぬ故」
「運びづらそうなり」
しん。
次の瞬間。
信者達。
「おおおおおお!!!」
「神託だァァァ!!」
「なんでだよ!!」
一方。
信者達。
即座に牛連れて来始めける。
「軽虎様へ神牛を!!」
「御車をお引き下さい!!」
「実行早ぇよ!!」
その時。
黒牛二頭。
もぉー……
慣れた様子で前へ出でける。
「お前らまで馴染むな!!」
⸻
数十分後。
結果。
軽トラ。
牛に引かれながら巡礼し始めける。
「終わった」
佐藤、完全敗北顔なり。
一方。
沿道。
人々。
拝み始めける。
「軽虎様ァァァ!!」
さらに。
子供達。
木彫り軽トラ振り回し始めける。
「わっしょーい!!」
「祭りになってる!!」
⸻
その時。
セシリア。
行列見つめつつぽつりと呟きける。
「……これ」
「本当にどう収拾つけるの?」
一方。
佐藤。
遠い目にて空見上げける。
「俺が知りたい」




