昭和人、鉄の牛車へ帰郷すること
鉄虎砦。
近頃。
もはや街外れの民家では無かった。
柵。
櫓。
見張り台。
簡易市場。
干し肉棚。
農具置場。
そして。
なぜか軽トラを拝む者達。
「軽虎様ァァァ!!」
「だからやめろって!!」
佐藤健一、全力で叫びける。
一方。
貴光。
縁側にて茶すすりつつ頷きける。
「人気者なり」
「原因お前だからな!?」
その時なり。
砦入口側。
商人達、何やら揉め始めける。
「列守れ!!」
「押すな!!」
「軽虎様見えねぇぞ!!」
「動物園かここは」
エレノア・シルヴァリア、完全に呆れ顔なり。
一方。
真田宗重。
櫓上より周囲監視しける。
「人増えすぎたな」
「誰のせいだと思ってる」
「防衛線拡張必要」
「広げるな!!」
一方。
ぺ・ヤ。
完全に通常運転なり。
砦横にて。
魚燻製し。
石削り。
しかも。
子供達へ石槍投げ教え始めける。
「ここ持つ」
「こう投げる」
「教育内容が危険すぎる!!」
その時。
空。
ぴかぁぁぁっ!!
「……………………」
「……………………」
全員。
静かに空見上げける。
もはや慣れ始めける。
「またか」
佐藤、疲れ切った声漏らしける。
一方。
巨大なる光柱。
鉄虎砦近くへ直撃しける。
どごぉぉぉぉ……
地面揺れ。
牛達、一斉に鳴き始めける。
「もぉー!!」
一方。
宗重、即座に叫びける。
「警戒」
「囲め」
領兵達。
半ば条件反射で動き始めける。
「盾前!!」
「弓上げろ!!」
「戦国武将に完全調教されてる……」
エレノア、遠い目なり。
一方。
ぺ・ヤ。
静かに鼻ひくつかせける。
「油臭い」
「人間判定が獣なんだよお前」
数分後。
土煙、晴れたり。
そこには。
一人の男、倒れける。
灰色作業着。
首タオル。
油汚れ。
安全靴。
横には。
工具箱。
「……………………」
「……………………」
男。
ゆっくり起き上がりける。
「いってぇ……」
そして。
視線。
ふと横へ向きける。
軽トラ。
夕日反射し。
ぴかーっ。
しん。
男。
固まりける。
「……………………」
数秒後。
「軽トラァァァァァァ!!!」
「うおっ!?」
男。
猛ダッシュ開始しける。
「待て待て待て!!」
佐藤、慌てて止めんとしける。
しかし。
男。
そのまま軽トラへ飛びつき。
荷台抱き締め始めける。
「うおぉぉぉぉぉ……!!」
「泣いてる!?」
一方。
男。
本気泣きなり。
「ス〇キィぃぃぃ……!!」
「昭和ぁぁぁ……!!」
「重症だ!!」
その時。
男。
軽トラぺたぺた触り始めける。
「キャ〇ィか!?」
「いや違ぇ!?」
「何だこの型式!?」
「急に濃い!!」
一方。
貴光。
怪訝そうな顔なり。
「鉄牛車へ愛情深き男なり」
「この人だけは正常なんだよ!!」
その時なり。
男。
ようやく周囲見回しける。
「……あっ」
「む?」
「俺」
「死んだ?」
「多分なり」
「軽ッッ!!」
一方。
男。
立ち上がり。
深々と礼しける。
「田所源三だ」
「昭和五十七年生まれ」
「整備工やってた」
「昭和人来たァ……」
佐藤、頭抱えける。
一方。
空。
ぴこん。
半透明板、出現しける。
『転生特典』
『機械整備:超特級』
『工具完全理解』
『燃焼機関理解』
しん。
一方。
源三。
数秒見つめ。
そして。
「うおおおおおお!!!」
「テンション高ッ!?」
源三。
即座に軽トラ下潜り込みける。
「下回り綺麗すぎるだろ!!」
「サビ一切ねぇ!!」
「どうなってんだコレ!?」
「やめろォ!!」
佐藤、引きずり出そうとしける。
しかし。
源三。
完全に職人の目なり。
「工具!!」
「工具くれ!!」
「見たい!!」
「目の輝きがヤバい!!」
一方。
宗重。
怪訝そうな顔で見下ろしける。
「……職人か」
「整備工だ」
「せいび?」
「機械直す仕事だよ」
宗重。
数秒考え込み。
「鍛冶師の親類か」
「まぁ近い」
一方。
ぺ・ヤ。
源三じーっと見つめける。
「道具強い人」
「原始人評価やめろ」
その時。
源三。
突然、軽トラ運転席開けける。
「……………………」
「……………………」
鍵。
無し。
源三。
固まりける。
「……え?」
「む?」
「鍵ねぇの?」
佐藤、静かに頷きける。
「ない」
「なんで?」
「俺らも知らん」
しん。
源三。
ゆっくり空見上げける。
「……神よ」
一方。
空。
何故か静か。
「なんでエンジン付きなんだよォォォ!!!」
その瞬間。
軽トラ。
ぴかーっ。
夕日反射しける。
源三。
目潤ませける。
「……懐かしいなぁ」
「感情が昭和すぎる」




