原始の賢者、農業を破壊すること
シルペーニャ領。
北部農地。
朝霧漂ひけり。
一方。
農民達、困惑しつつ畑見つめける。
「……………………」
「……………………」
そこには。
巨大な穴。
木柵。
石積み。
妙な水路。
そして。
何故か吊るされた魚群。
「……何これ」
佐藤健一、真顔なり。
一方。
ぺ・ヤ。
泥まみれにて頷きける。
「良い畑」
「畑!?」
エレノア・シルヴァリア、困惑しける。
その時なり。
レオル・ホル・シルペーニャ、疲れ切った顔で現れける。
「今度は何をした……」
一方。
農民一人、震える声にて答えける。
「アレン様が……」
「畑全部掘り返しました……」
「は?」
しん。
空気止まりける。
一方。
ぺ・ヤ。
当然のように説明し始めける。
「水、流れる」
「土、柔らかい」
「獣、来ない」
「……………………」
「……………………」
レオル。
ゆっくり畑見回しける。
確かに。
水路整備され。
段差利用され。
しかも。
魔獣避け用の落とし穴まで配置されける。
「…………効率は良い」
「認めるんだ」
佐藤、引き気味なり。
その時。
老農民一人、震える声にて叫びける。
「で、ですが!!」
「畑半分消えました!!」
「うむ」
ぺ・ヤ、頷きける。
「森戻した」
「何故!?」
ぺ・ヤ。
当然のように答えける。
「虫いる」
「鳥いる」
「だから土死なない」
しん。
一方。
老魔導師、顔引き攣らせける。
「……………………」
「……………………」
「……自然循環?」
「え?」
「森と畑を分離せず……」
「生態系を維持しながら農地運営を……?」
別の学者、震え始めける。
「そんな発想……」
「現代農業理論にも――」
「腹減ったから考えた」
ぺ・ヤ、即答しける。
「全部それだなコイツ!?」
一方。
農民達、ざわつき始めける。
「でも水流れ良くなってるぞ?」
「前より土柔らかい……」
「害獣減ってる?」
その瞬間。
遠く。
どごぉぉぉん!!
「うおっ!?」
全員振り返りける。
そこには。
巨大鹿型魔獣。
綺麗に落とし穴落下しける。
「……………………」
「……………………」
ぺ・ヤ。
静かに頷きける。
「晩飯」
「農業のついでに狩猟するな!!」
その時なり。
老魔導師、震える声漏らしける。
「魔法を使わず」
「土地を支配している……」
「原始の賢者……!」
一方。
ぺ・ヤ。
土握りしめつつ呟きける。
「土、生きてる」
農民達。
じわじわ感動し始めける。
「深い……」
「自然との共生……!」
「違うぞ」
「多分感覚で言ってるだけだぞ」
佐藤、必死に止めける。
しかし。
既に遅し。
領民達の間では、
『原始の賢者は大地の声を聞く』
なる噂、
広まり始めけり。




