茄子顔の女、現るること
数日後。
御池貴光一行、王都近くの街へ辿り着きけり。
人多く。
道広く。
店立ち並び。
実に都会めきし場所なり。
「やっとまともな街だ……」
佐藤健一、しみじみ呟きける。
一方。
黒牛二頭。
既に疲れ切った顔なり。
「もぉー……」
その後方。
軽トラ。
ぎぃ。
ぎぃ。
エレノア・シルヴァリア、半目になりける。
「都会で牛牽引ほんとやめてほしい」
「風情あるなり」
「交通の邪魔なのよ」
その時なり。
佐藤の腹、ぐぅぅぅ、と鳴りける。
「……飯食いてぇ」
「うむ」
「今回は金払えよ?」
「覚えておるなり」
「前科持ちなんだよお前は」
かくして。
三人、街の食堂入りける。
中はいと賑やか。
肉焼く匂ひ漂ひ。
客達、酒飲み笑ひ合ひける。
「おおー……」
「普通の飯屋だ……」
佐藤、若干感動しける。
一方。
貴光。
ぴたりと停止しける。
「……………………」
「……………………」
「……?」
エレノア、首傾げける。
その時。
厨房奥より、一人の女現れける。
年四十五ほど。
やや茄子めきし顔立ち。
割烹着姿。
芋剥きつつ歩きたり。
「はいよー、空いてる席座ってねー」
その瞬間。
貴光。
目見開きける。
「……………………」
「……………………」
「……美しきなり」
しん。
空気止まりける。
佐藤。
エレノア。
ゆっくり振り返りける。
「……………………は?」
一方。
貴光、完全に固まりける。
「何たる気品……」
「何たる落ち着き……」
「えっ」
エレノア、困惑しける。
「どこ見て言ってるの?」
「理想の女子なり」
「はぁ!?」
その時。
女――サエ子、怪訝そうな顔しける。
「……あんた大丈夫?」
「声すら雅なり」
「ヤバいわこの人」
佐藤、頭抱えける。
一方。
厨房奥。
どすどすと重き足音響きける。
「おーいサエ子ォ」
現れしは。
髭面のドワーフ男なり。
腕太く。
中華鍋片手に持ちたり。
「チャーハン出来たぞー」
「旦那さんよ」
エレノア、即答しける。
その瞬間。
貴光、静止しける。
「……………………」
「……………………」
「……夫持ちなりか」
「そりゃそうでしょ」
されど。
貴光。
静かに頷きける。
「燃えるなり」
「燃えるなァ!!」
佐藤、勢いよく机叩きける。
その時。
ドワーフ旦那、じろりと貴光見やりける。
「……何だお前」
「美しき妻持ちなり」
「お?」
空気、一気に危険になりける。
エレノア、顔覆ひける。
「終わった……」
一方。
サエ子。
芋剥きながら冷めた目しける。
「変な客ねぇ」
貴光。
その言葉受け。
しみじみ呟きける。
「塩対応すら美しきなり」
「重症だコイツ!!」




