表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日神の寄越し給ひし異形の獣に撥ねられて失せにければ異世界へ転生仕りき、されど能力の鉄の牛車召喚も黒き神境(?)とやらも使いよう皆無なり!  作者: イグアナ
新大陸・華国到達編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
301/313

華国皇都へ至り、平安貴族初めて馴染みしこと

 華国。


 新たなる大陸。


 海を越えし先に存在せしその国は、御池貴光達が今まで歩みし土地とは、明らかに異なる空気を纏ひたり。


 西大陸の街々。


 石造りの城。


 騎士。


 冒険者。


 魔法。


 それらとは違う。


 赤き柱。


 反り返りし屋根。


 細やかなる木彫り。


 道沿いに植えられし木々。


 そして、街の至る所より漂う茶の香り。


 そこには、戦いや力だけでは作れぬ長き時の積み重ねがあった。


「……」


 佐藤健一。


 皇都へ続く道を歩きながら周囲を見渡していた。


「すげぇな」


 自然と漏れし言葉。


 隣を歩くレンも頷く。


「ああ」


「今まで見てきた国とは全然違う」


 勇者として多くの地を巡りしレンでさえ、華国の景色は新鮮なものであった。


 建物。


 服。


 文字。


 食べ物。


 人々の動き。


 何もかも違う。


 されど。


 そこには確かな秩序が存在した。


「不思議だな」


 レンは呟く。


「知らない場所なのに、ちゃんと人が生きてるって分かる」


「まあな」


 佐藤も頷いた。


「異世界のさらに異世界に来た感じする」


「言いたいことは分かる」


 二人。


 少し笑った。


 その前方。


 玲華は静かに歩みたり。


 華国へ戻ってからというもの。


 彼女の雰囲気は少し変わっていた。


 船の上で見せた穏やかな少女。


 それだけではない。


 歩き方。


 姿勢。


 周囲を見る目。


 どこか。


 人の上に立つ者のような気配。


 エレノア・シルヴァリアは、それに気付いていた。


「ねぇ」


「玲華って本当にただの旅人なの?」


 問い。


 玲華。


 少し振り返る。


「……」


 そして。


 微笑む。


「いずれ話します」


「今はまだ、ただの案内人ということで」


 エレノア。


 眉を上げる。


「隠すの下手ね」


「そうでしょうか?」


「ええ」


 エレノア。


 少し笑う。


「貴族ってそういうところ分かるのよ」


 玲華。


 一瞬驚き。


 そして笑った。


「西の国の貴族も侮れませんね」


 二人。


 静かに笑ひたり。


 


 その頃。


 問題の人物。


 御池貴光。


「……」


 完全に街並みに見入っていた。


 普段ならば。


 魚。


 牛。


 軽虎。


 そんなものに反応する男。


 されど。


 今は違った。


 庭。


 建築。


 水路。


 橋。


 それらを静かに眺める。


「どうした?」


 佐藤が尋ねる。


「珍しく変なこと言わないけど」


「失礼なり」


「いや事実」


 即答。


 貴光。


 少し不満げになるも、すぐ景色へ視線を戻した。


「良き都なり」


「へぇ」


「何か分かるの?」


「うむ」


 貴光は頷く。


「建物一つにも意味あり」


「庭もただ木を置くものにあらず」


「水の流れ、石の位置、季節の移ろい」


「全て含めて美しさとなるものなり」


「……」


 佐藤。


 固まる。


「え?」


「何なり」


「いや……」


 佐藤。


 貴光を見る。


「普通に詳しいこと言ったからびっくりした」


「我を何と思っておる」


「軽トラを牛に牽かせる人」


「……」


 否定できず。


 貴光。


 少し黙った。


 


 しかし。


 その会話を聞いていた玲華。


 静かに足を止める。


「貴光様」


「む?」


「あなたの故郷では、そのような考え方が?」


「あり」


 貴光答ふ。


「花を見て季を知り」


「月を見て心を詠み」


「音を聞き時を感じる」


「そのようなものなり」


 玲華。


 目を細める。


「……美しい文化ですね」


「うむ」


 貴光。


 当然のように頷く。


 佐藤。


 その光景を見る。


「……」


 何かがおかしい。


 今まで。


 どこへ行っても。


 貴光は変人側だった。


 平安貴族。


 価値観違い。


 軽虎牛車。


 だが。


 この国では。


 会話が成立している。


「待て」


 佐藤。


 小さく呟く。


「もしかして」


「この国だと貴光さんまとも側なのか……?」


 それは。


 今までで最も恐ろしい発見であった。


 


 しばらく歩き。


 一行は茶館へ入ることとなった。


 玲華曰く。


 長旅の疲れを癒すため。


 そして華国文化を知るため。


 木造の静かな建物。


 窓より庭が見え。


 水の音が聞こえる。


 店員は丁寧に茶を運びたり。


「おお」


 貴光。


 茶器を見る。


「良き器なり」


 玲華。


 少し嬉しそうに説明する。


「この地方の職人が作ったものです」


「茶の香りを楽しむため、形にも意味があります」


「なるほどなり」


 完全に理解。


 一方。


 佐藤。


「……」


 茶を見る。


 飲む。


「うまい」


 終了。


「俺との差がすごい」


 自分で言った。


 フィア。


 少し笑う。


「でも佐藤さんらしいです」


「褒めてる?」


「はい」


「ならいいか」


 


 その時。


 外。


 ざわめき。


 一行。


 視線を向ける。


 道の向こう。


 豪華なる馬車。


 護衛。


 そして。


 華国の兵。


 周囲の人々が道を開ける。


 玲華。


 それを見て小さく息を吐いた。


「……早いですね」


「何が?」


 レンが尋ねる。


 玲華。


 静かに立ち上がる。


「迎えです」


 その言葉と同時。


 兵達。


 茶館前で止まる。


 そして。


 全員。


 膝をついた。


「玲華皇女殿下」


「御帰還、心よりお待ちしておりました」


 沈黙。


 佐藤。


 玲華を見る。


 兵を見る。


 もう一度玲華を見る。


「……」


「皇女?」


 玲華。


 少し困ったように笑う。


「隠していて申し訳ありません」


「改めまして」


 姿勢を正す。


 そこにいたのは。


 船で救われた少女ではない。


 巨大なる国。


 華国皇帝の血を引く者。


「華国第三皇女」


「玲華と申します」


 静寂。


 そして。


 佐藤。


 ゆっくり息を吐いた。


「……」


「また普通じゃない人拾ってた」


 いつものことであった。


 


 こうして。


 御池貴光一行。


 華国皇都。


 そして。


 宮廷という新たなる世界へ。


 足を踏み入れることとなる。


 剣ではなく。


 魔法でもなく。


 言葉と礼が力を持つ場所へ。


 物語は進み始めたり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ