十二傑別れ、新たなる旅路へ向かひしこと
十二傑別れ、新たなる旅路へ向かひしこと
北方の街にて起こりし軽虎教大集会。
後に信者達より「軽虎十二傑集結の日」などと呼ばれることとなりしその出来事も、ようやく終わりを迎へんとしていた。
朝。
雪白き道。
街外れには多くの者達集まりたり。
魚住八五郎。
ペ・ヤ。
真田宗重。
田所源三。
聖女セシリア。
高橋翔太。
山田隼人。
中村大地。
かつて別れし仲間達。
そして。
再び別れの時来たり。
「結局また旅行くんでぃ?」
八五郎、腕を組みながら問ひける。
貴光、頷く。
「うむ」
「世界広し」
「まだ見ぬ景色多きなり」
その言葉聞き、八五郎は笑ひたり。
「旦那らしいねぇ」
「普通なら少しくらい落ち着こうと思うもんだが」
佐藤健一。
横からため息つく。
「いや俺は落ち着きたいんですけどね」
即答であった。
されど。
佐藤自身も分かっていた。
この旅。
何だかんだ言ひながら続けているのは自分自身でもある。
最初は。
帰りたい。
普通に暮らしたい。
そう思っていた。
だが。
今。
周囲を見る。
平安貴族。
勇者。
魔法使い。
ソ連兵。
喋る馬鈴薯。
黒牛。
鉄の牛車。
「……」
「慣れって怖いな」
佐藤、小さく呟きたり。
一方。
田所源三。
最後まで軽虎とIl-2を交互に見ていた。
「惜しいなぁ……」
「何がです?」
エレノアが尋ねる。
「整備してぇ」
即答。
しかし。
問題あり。
どちらも。
壊れぬ。
源三にとっては夢のようであり、同時に職人泣かせなる存在なり。
「エンジンあるのに動かねぇ軽トラ」
「傷ついても直る攻撃機」
「意味分からん」
源三。
首振りながら笑ひたり。
「でも面白ぇ」
その横。
真田宗重。
アレクセイ、ヴィクトルと向かひ合う。
時代違へど。
戦を知る者同士。
短き時間ながら通じるものありたり。
「空の戦」
「興味深かった」
宗重言ふ。
ヴィクトル頷く。
「刀の時代も興味深い」
貴光、訳す。
宗重。
少し笑みを浮かべたり。
「時代変われど兵は兵か」
それ以上。
多く語らず。
それで十分であった。
少し離れた場所。
ペ・ヤ。
黒牛を撫でていた。
「強い牛」
「もぉー」
黒牛。
返事する。
「分かるの?」
フィアが尋ねる。
ペ・ヤ。
頷く。
「分からない」
「分からないんだ」
「でも強い」
相変わらず。
感覚で生きる男であった。
その頃。
高橋翔太と中村大地。
二人。
それぞれの家を準備していた。
空飛ぶ家。
歩く家。
普通なら伝説級の能力。
しかし本人達。
「じゃあそろそろ行くか」
「だな」
まるで普通の引っ越し。
佐藤。
それを見る。
「家が移動するのに慣れてる自分が嫌だ」
そして。
山田隼人。
姿無し。
「あれ?」
佐藤、周囲を見る。
「山田さんは?」
「ここ」
「うわっ!?」
真横。
普通にいた。
「毎回驚くなこれ」
「それがいい」
「いいんだ」
山田。
満足そうな顔なり。
やがて。
出発の時。
黒牛。
軽虎の前へ。
いつものように繋がれる。
がらり。
鉄の牛車。
動き出す。
速度。
時速四キロ。
何も変はらぬ。
世界を救おうが。
魔王を倒そうが。
巨大虫と戦おうが。
変はらず。
ゆっくり。
進むのみ。
その時。
信者達。
一斉に膝をついた。
「軽虎様ァァァ!!」
「十二傑様ァァァ!!」
「また会う日まで!!」
佐藤。
振り返る。
「最後まで違うんだよなぁ……」
だが。
少し笑っていた。
以前なら全力で否定した。
今も否定する。
されど。
彼らが悪意なき者達なのも知っていた。
貴光。
荷台より空を見る。
白き雲。
遠き山。
広き世界。
「良き旅日和なり」
そう呟く。
佐藤。
苦笑。
「雪降ってるけどな」
「それもまた良し」
珍しく。
何も起こらぬ出発。
平和なる別れ。
……そう思われた。
その時。
空。
聞き覚えある声。
『あ、どうも作者です』
「出たァ!!」
佐藤、即座に叫ぶ。
全員。
空を見る。
『いやー皆さん集まってたので』
『記念品送ろうかなって』
「いらない」
佐藤。
即答。
しかし。
遅し。
空。
光る。
何か。
落下。
どすん。
目の前。
小さな箱。
貴光。
開く。
中身。
鞠。
「……」
佐藤。
警戒。
「普通?」
作者の声。
『貴光さん最近雅不足だったので』
『蹴鞠用です』
沈黙。
本当に普通。
全員。
逆に困惑。
「まともな物送られる方が怖い」
佐藤。
そう呟きたり。
一方。
貴光。
鞠を手に取り。
満足げ。
「良き物なり」
こうして。
軽虎十二傑との再会を終へ。
一行。
再び旅路へ。
鉄の牛車は進む。
ゆっくりと。
ただし。
その旅が普通になることは。
恐らく。
永遠に無きことであった。




