軽虎十二傑などと呼ばれし者達、否定すれど時既に遅きこと
翌朝。
北方の街外れにて開かれし宴より一夜明けたり。
雪積もりし大地には朝日差し込み、昨夜の騒ぎが嘘の如く静寂戻りける。
……はずであった。
「軽虎十二傑様方のお目覚めぞ!!」
「朝食を用意せよ!!」
「聖なる集会二日目なり!!」
「二日目!?」
佐藤健一、宿より出るや否や叫びたり。
「昨日で終わりじゃないの!?」
当然の疑問である。
本人達からすれば、ただ久々に会った仲間と飯を食ひ、話しただけ。
されど軽虎教信者達にとっては違ひたり。
歴史的瞬間。
伝説。
そして。
勝手に始まりし大行事。
「軽虎十二傑って何よ……」
エレノア・シルヴァリア、呆れ顔にて呟く。
その横。
聖女セシリアも眠そうな顔で紙を眺めておりたり。
「私も入ってるんだけど」
「聖女だからでは?」
「軽虎教の聖女じゃない」
もっともであった。
広場。
そこには既に一枚の大きな板置かれたり。
書かれし文字。
『軽虎十二傑』
佐藤、嫌な予感を抱きつつ見る。
一、御池貴光
二、佐藤健一
三、エレノア・シルヴァリア
四、桐崎レン
五、魚住八五郎
六、ペ・ヤ
七、真田宗重
八、田所源三
九、聖女セシリア
十、高橋翔太
十一、山田隼人
十二、中村大地
「俺入ってる!!」
佐藤、即座に叫ぶ。
「何で!?」
信者。
真剣なる顔にて答ふ。
「開祖様を最初より支えし御方ですので」
「俺は止めてた側!!」
その叫び。
届かず。
「なんと謙虚なる……」
「違うって!」
一方。
魚住八五郎は板を眺め、頭を掻きたり。
「おいらも随分偉くなったもんだねぇ」
「受け入れないでください」
「いやぁ、飯作ってたら幹部とは面白ぇ話でぃ」
完全に楽しんでいた。
その横。
ペ・ヤ。
板を見る。
「十二」
「そうだな」
「多い」
「感想そこ?」
佐藤、思わず返す。
真田宗重。
腕を組み、真剣な顔。
「十二名による組織か」
「違います」
「役割分担すれば強き集団となる」
「作戦立てないでください」
戦国武将。
すぐ軍として考へる癖。
変はらず。
その頃。
田所源三。
別の問題に直面していた。
信者達が持ってきた紙。
そこには。
『鉄虎整備神』
と書かれていた。
「……」
「俺、神になったの?」
源三、困惑。
「整備士だぞ?」
信者。
頷く。
「神の鉄牛車を理解せし唯一の技師です」
「理解できてねぇよ」
即答。
「エンジンあるのに鍵ねぇし」
「壊れねぇし」
「未だに意味分からねぇよ」
むしろ誰より謎に苦しんでいた。
少し離れし場所。
高橋翔太。
中村大地。
二人。
自分達の家を見る。
空飛ぶ家。
歩く家。
信者達。
その前に祈る。
「天空神殿様!」
「移動神殿様!」
二人。
同時にため息。
「ただの家なんだけどな」
「うん」
目的。
通勤回避。
引っ越し回避。
神聖さ。
皆無であった。
そして。
山田隼人。
誰にも見つからぬよう木陰に座っていた。
「……」
静かな時間。
これこそ彼の望み。
しかし。
「山田様!」
「!?」
信者。
普通に発見。
「なぜ……」
「影より見守る守護者様ですから!」
「違う」
隠れたいだけ。
されど。
隠れるほど伝説化する。
最悪の相性であった。
昼頃。
ようやく騒ぎも落ち着き始めたり。
軽虎十二傑と呼ばれし者達。
集まりて話す。
「しかし、本当に変な縁だな」
レンが呟く。
「普通なら会うはずないだろ」
その言葉に皆、静かに頷いた。
縄文。
平安。
戦国。
江戸。
昭和。
現代。
そして異世界。
本来ならば、同じ時を生きることすら叶わぬ者達。
それが今。
同じ場所にいる。
ペ・ヤ。
焚火を見ながら言ふ。
「不思議」
短き言葉。
されど皆、その意味を理解した。
貴光。
静かに空を見上げる。
「時代違へど、人は人なり」
珍しく。
誰も突っ込まなかった。
その言葉だけは。
確かに正しかったゆゑ。
しかし。
次の瞬間。
「ところで魚はあるか」
「台無しだよ」
佐藤。
即座に返す。
いつもの空気。
いつもの旅。
こうして軽虎十二傑なる名は生まれたり。
本人達は認めず。
望まず。
ただ巻き込まれただけ。
されど後世の軽虎教史には、大きく記されることとなる。
『十二の英雄、鉄牛車の下へ集ひし日』
なお。
十二人中十二人。
最後まで。
「違う」
と言ひ続けたという。




