軽虎教の宴、歴史に刻まれしこと
北方の夜。
冷たき風、雪原を渡りけり。
されど。
街外れだけは。
異様なる熱気に包まれておりたり。
焚火。
料理。
笑ひ声。
そして。
中央。
鉄の牛車。
静かに置かれたり。
黒牛。
横で草食みける。
本人は何も知らず。
されど周囲。
完全なる祭りなり。
「軽虎様ァァァ!!」
「聖牛様ァァァ!!」
「幹部様方ァァァ!!」
信者達。
叫びたり。
佐藤健一。
座りながら頭抱えける。
「どうしてこうなった」
何度目か分からぬ言葉なり。
一方。
御池貴光。
魚料理を食ひながら答へたり。
「賑やかで良きなり」
「そういう問題じゃないんだよ」
いつもの会話なり。
宴。
中心。
魚住八五郎。
腕を振るひたり。
「さぁ食いねぇ!」
「北の魚も悪くねぇな!」
包丁。
光る。
魚。
一瞬で美しき料理へ変はりたり。
その腕。
異世界でも変はらず。
周囲の料理人達。
完全に見惚れたり。
「これが……」
「聖なる包丁……」
八五郎。
停止。
「……何でぇそれ」
佐藤。
遠くから答へたり。
「諦めた方がいいです」
「経験者の目してんな」
「経験者なので」
一方。
別の場所。
源三。
アレクセイ。
ヴィクトル。
三人。
完全に機械談義なり。
目の前。
Il-2M3。
源三。
翼を触りながら呟く。
「しかしすげぇな」
「異世界でこいつを見るとは思わなかった」
アレクセイ。
少し笑ひたり。
「俺も異世界で整備士に会うとは思わなかった」
貴光。
横で訳す。
源三。
工具箱を開ける。
しかし。
手が止まる。
「直す場所ねぇんだよな」
壊れぬ機体。
整備士として。
複雑なり。
「最高なんだけど」
「寂しいな」
そう言ひたり。
その頃。
宗重。
レン。
ヴィクトル。
戦闘について語り合ひたり。
時代。
全く違ふ三人。
戦国。
現代ファンタジー。
第二次世界大戦。
されど。
戦う者同士。
通じるものありけり。
宗重。
言ふ。
「戦とは変はるものだな」
「刀より鉄砲」
「鉄砲より空」
「されど」
「最後は人」
ヴィクトル。
頷く。
レンも頷きたり。
佐藤。
遠くから見る。
「珍しく真面目だ」
その横。
ペ・ヤ。
肉を焼きながら言ふ。
「戦い」
「昔から同じ」
短い。
されど。
妙に重き言葉なり。
縄文。
戦国。
近代。
世界が違へど。
生きるための戦い。
変はらぬものもありたり。
その一方。
全く別方向で盛り上がる者達もいたり。
高橋翔太。
中村大地。
二人。
家について話しておりたり。
「空飛ぶ家って燃費とかないの?」
「ない」
「便利だな」
「歩く家は?」
「勝手に歩く」
「便利だな」
沈黙。
二人。
同時に言ふ。
「「でも普通の家でいい気がする」」
佐藤。
聞いていた。
「本人達が言うなよ」
そして。
山田隼人。
隅。
静かに座っておりたり。
存在感低下。
完全発動。
「……」
誰にも気付かれず。
平和。
本人。
満足。
しかし。
その時。
ポテ子。
近付く。
「山田様」
「!?」
「なぜ分かった」
「軽虎様の導きです」
「怖い」
能力より怖き存在。
ポテ子なり。
夜更け。
宴落ち着きたり。
皆。
焚火囲む。
久方ぶりに集まりし仲間。
それぞれ違ふ場所より来た者。
それぞれ違ふ時代より来た者。
普通ならば。
出会ふこと無し。
だが。
今。
同じ火を見る。
佐藤。
静かに呟く。
「考えたら凄いよな」
エレノア。
首傾げる。
「何が?」
「だってさ」
佐藤。
周りを見る。
「縄文人」
「平安貴族」
「戦国武将」
「江戸人」
「昭和人」
「現代人」
「異世界人」
「ソ連兵」
「全員同じ場所で飯食ってる」
あり得ぬ光景。
時代を超えし宴。
歴史上。
二度と起こらぬ奇跡なり。
貴光。
火を見つめ。
静かに言ひたり。
「不思議なる縁なり」
皆。
頷きたり。
珍しく。
良き空気。
だった。
その時。
信者の一人。
紙へ何か書き始めたり。
「本日の出来事は後世へ残さねば」
佐藤。
嫌な予感。
「何書いてるんです?」
信者。
読み上げる。
「第一回軽虎教最高幹部大集会」
「消して」
即答なり。
しかし。
遅し。
他の信者。
すでに複写開始。
「早い!!」
さらに。
内容。
『開祖御池貴光様、聖なる鉄牛車と共に北方へ降臨』
「降臨してないなり」
貴光本人否定。
『異界の英雄達集結』
「まあ間違いではないけど……」
『神なる馬鈴薯も参加』
「違う」
ポテ彦否定。
ポテ子。
感動。
「ついに認められました」
「お前じゃない」
夜。
更けたり。
笑ひ声。
消えず。
軽虎教の記録。
また一つ増えたり。
本人達。
誰一人認めていない。
されど。
後世。
この日はこう呼ばれることとなる。
――軽虎十二傑集結の日。
なお。
十二傑本人達。
最後まで。
否定し続けたり。




