軽虎教幹部会、本人達知らぬまま始まりしこと
北方の街外れ。
そこには。
歴史上、類を見ぬほど奇妙なる集まりありけり。
平安貴族。
現代人。
江戸町人。
縄文人。
戦国武将。
昭和整備士。
勇者。
聖女。
空飛ぶ家の主。
歩く家の主。
隠密生活者。
ソ連兵。
そして。
喋る馬鈴薯。
普通ならば。
決して交はらぬ者達。
今。
一ヶ所へ集まりたり。
理由。
軽虎。
ただそれのみなり。
「……」
佐藤健一。
その光景を見つめ。
静かに呟きたり。
「何だこれ」
当然な疑問なり。
誰も答へられず。
一方。
軽虎教信者達。
大興奮なり。
「開祖様!」
「守護者様!」
「聖なる料理人様!」
「天空神殿の主様!」
「歩く神殿の主様!」
次々と呼ばれたり。
しかし。
呼ばれし本人達。
全員。
困惑。
魚住八五郎。
腕組みしける。
「おいら、魚捌いてただけなんだがなぁ」
高橋翔太。
空飛ぶ家を見上げる。
「俺、通勤面倒だっただけなんだけど」
中村大地。
頷く。
「俺も引っ越し面倒だっただけ」
佐藤。
二人を見る。
「理由がしょうもないんだよな」
空飛ぶ家。
歩く家。
世界を揺るがす能力。
理由。
面倒だから。
それだけなり。
その頃。
別の場所。
田所源三。
完全にIl-2へ張り付きたり。
「すげぇ……」
翼を見る。
機首を見る。
そして。
23mm VYa-23機関砲を見る。
「本物じゃねぇか……」
アレクセイ。
少し不思議そうな顔をする。
貴光。
訳す。
「なぜそんなに分かるのか、と言ひたり」
源三。
即答。
「男なら好きだろ」
「理由雑だな」
佐藤、突っ込みたり。
されど。
整備士としての目。
本物なり。
源三。
機体下を見る。
「傷無し」
「錆無し」
「劣化無し」
「あり得ねぇ」
そして。
言ふ。
「軽トラと同じか」
そう。
神より与へられし物。
壊れぬ。
傷付けど。
直る。
理屈不明。
源三にとり。
最高であり。
最悪な存在なり。
「整備士泣かせだな」
そう呟きたり。
一方。
真田宗重。
ヴィクトルと話しておりたり。
話題。
戦。
当然なり。
「空より攻撃」
「敵陣奥まで届く」
「城壁無意味」
宗重。
考へ込む。
戦国武将の頭脳。
近代航空戦を理解し始めたり。
佐藤。
それを見る。
「怖い怖い」
「戦国時代に航空戦術入れようとしてる」
宗重。
真顔。
「使える物は使う」
「武将らしいけどさ」
その横。
ペ・ヤ。
DP-27を見る。
「強い石飛ばし」
「いやまあ……」
佐藤。
悩む。
間違ひでは無し。
弾丸。
金属の塊。
つまり。
石の進化。
原始人的理解。
意外と本質を突いていたり。
昼。
軽虎教信者達。
宴を準備し始めたり。
理由。
「幹部交流会」
らしい。
「だから幹部じゃないって」
佐藤。
何度目か分からぬ否定。
しかし。
信者。
笑顔。
「またまた」
「謙虚なお方だ」
「違うって!!」
届かず。
料理担当。
当然。
魚住八五郎。
「久々に腕鳴るでぃ」
包丁。
光る。
その瞬間。
魚。
野菜。
肉。
次々美しく切られたり。
神級包丁。
健在なり。
アレクセイとヴィクトル。
驚く。
戦場とは違ふ技術。
されど。
極めし者の動きなり。
貴光。
料理を見る。
「雅なり」
「食べ物関係になると反応早いな」
佐藤言ひたり。
宴。
始まりたり。
ヴィクトル。
ウォッカ召喚。
八五郎。
料理。
高橋の空飛ぶ家。
休憩所。
中村の歩く家。
物資運搬。
源三。
機械談義。
宗重。
警備配置。
セシリア。
怪我人治療。
山田。
姿消す。
「……」
「山田さん?」
「いる」
「だから怖いって」
夜。
焚火囲みたり。
久方ぶりの再会。
皆。
それぞれの旅を語りたり。
八五郎。
商売。
高橋。
空で見た景色。
中村。
歩く家での旅。
山田。
森生活。
セシリア。
教会との話。
宗重。
各地の戦事情。
皆。
別々の道を歩み。
再び集まりたり。
その中。
レン。
ふと呟く。
「しかし」
「最初に会った時は、ただの変な軽トラだったのにな」
全員。
軽虎を見る。
黒牛。
横で草食みたり。
何も変はらず。
ただ。
もぉー。
と鳴く。
貴光。
静かに言ひたり。
「旅とは不思議なものなり」
珍しく。
まともな言葉。
皆。
少し頷きたり。
されど。
次の瞬間。
貴光。
「ところで魚はまだあるなりか?」
沈黙。
佐藤。
ため息。
「最後まで持たないな」
こうして。
軽虎教大交流会。
本人達の意思とは関係なく。
盛大に開かれたり。
そして。
信者達は。
この日を後に。
こう記録した。
『第一回、軽虎教最高幹部会議』
なお。
参加者全員。
否定している。




