軽虎教、北方の地にて再び集ひしこと
北方の街。
数日滞在せし一行。
久方ぶりなる平和。
買ひ物。
食事。
雅。
普通なる旅人の時間を過ごしておりたり。
されど。
忘れてはならぬ。
御池貴光一行。
普通とは最も遠き存在なり。
その日。
佐藤健一。
市場にて食料買ひ足しておりけり。
「いやー」
「最近平和だな」
そう呟きたり。
巨大虫無し。
魔王無し。
神の意味不明な商品無し。
ただの街歩き。
最高なり。
しかし。
その横。
エレノア・シルヴァリア。
少し嫌そうな顔をしたり。
「佐藤」
「ん?」
「そういうこと言うと何か起こるわよ」
「いやいや」
佐藤。
笑ひたり。
「さすがにないって」
その時。
街人達の話。
耳へ入りたり。
「聞いたか?」
「何?」
「最近、この街近くに変な集団が来たらしいぞ」
「変?」
「ああ」
「鉄の神獣を信仰する――」
しん。
佐藤。
停止。
「……」
「……」
エレノア。
顔を覆ひたり。
「まさか」
「いや」
佐藤。
首振りたり。
「そんな偶然あるわけ」
街人。
続けたり。
「名前は確か」
「軽虎教」
沈黙。
「帰ろう」
佐藤。
即答。
「待ちなさい」
エレノア、掴む。
「いや嫌な予感しかしないんだけど!?」
当然なり。
かつて。
軽トラを牛で牽いただけ。
ただそれだけ。
にも関わらず。
いつの間にか発生した謎宗教。
軽虎教。
その名。
再び現れたり。
数十分後。
街外れ。
一行。
そこへ向かひたり。
そして。
見たり。
「……」
「……」
旗。
人。
大量。
そして中央。
見覚えある者達。
「軽虎様ァァァ!!」
信者達叫びたり。
佐藤。
頭抱える。
「成長してる……」
以前より。
明らかに人数増えておりたり。
一方。
貴光。
いつも通りなり。
「人気なり」
「喜ぶところじゃない」
その時。
一人の男。
こちらを見る。
藍染めの服。
江戸町人姿。
「……お?」
「旦那じゃねぇか!!」
魚住八五郎なり。
「八五郎さん!」
佐藤。
驚きたり。
「久しぶりでぃ」
八五郎。
笑ひながら近づきたり。
「相変わらず鉄の牛車引いてんだなぁ」
「変はらぬなり」
貴光答へたり。
「いや」
八五郎。
ふと見る。
腰。
ナガンM1895。
「……」
「旦那」
「む?」
「なんで鉄砲持ってんでい?」
「貰ひたり」
「誰から?」
貴光。
指差す。
そこ。
ソ連兵二人。
「……」
八五郎。
停止。
「佐藤」
「はい」
「何があったんでい」
「説明すると長いです」
いつもの答へなり。
その後ろ。
アレン。
否。
ペ・ヤ。
立っておりたり。
「久しぶり」
「ペ・ヤ!」
「うむ」
短い。
相変わらずなり。
ペ・ヤ。
アレクセイ達を見る。
そして。
DP-27を見る。
「強い棒」
「棒ではないな」
佐藤突っ込みたり。
すると。
さらに声。
「おーい!」
桐崎レンなり。
「久しぶり……って」
レン。
貴光を見る。
軽虎。
見る。
黒牛。
見る。
そして。
ナガン。
見る。
「……」
「なあ」
「何なり?」
「なんで平安貴族がロシア帝国の拳銃装備してんだよ」
正論なり。
「成り行きなり」
「どんな成り行きだよ」
レン。
頭抱えたり。
その時。
遠くより叫び。
「飛行機ィィィィ!?」
田所源三。
爆走。
目標。
Il-2M3。
「待て」
「源三さん!?」
源三。
機体を見る。
翼を見る。
機関砲を見る。
「……」
「……」
「シュトゥルモヴィークじゃねぇか」
即答なり。
アレクセイ。
少し驚きたり。
貴光。
訳す。
「分かるのか、と言ひたり」
源三。
当然の顔。
「分かるわ!!」
「なんで異世界にIL-2あるんだよ!!」
佐藤。
静かに言ふ。
「転生特典」
「あー」
源三。
納得。
「納得早いな!?」
すでに慣れていた。
一方。
真田宗重。
ヴィクトルのDP-27を見ておりたり。
「……」
「新しき鉄砲か」
ヴィクトル。
説明。
貴光訳す。
「連続で弾を撃つ物らしきなり」
宗重。
目細めたり。
「なるほど」
「戦が変わるな」
佐藤。
震える。
「戦国武将が近代兵器理解し始めた」
そして。
白き法衣の女。
聖女セシリア。
現れたり。
周囲を見る。
軽虎教信者。
大量。
ため息。
「……まだ続いてたんだ」
「俺も終わったと思ってました」
佐藤答へたり。
その横。
ポテ子。
震えていた。
感動で。
「素晴らしい……」
「軽虎様の導きです」
「違う」
全員否定。
さらに。
空。
影。
見上げる。
家。
飛んでいた。
「相変わらずだな……」
高橋翔太の空飛ぶ家なり。
そして。
地面。
どごん。
どごん。
歩く家。
中村大地なり。
北方街の住民。
完全停止。
今日だけで、
鉄の牛車。
空飛ぶ家。
歩く家。
ソ連攻撃機。
喋る馬鈴薯。
情報量。
限界突破なり。
その時。
佐藤。
ふと思ふ。
「あれ?」
「山田さんは?」
沈黙。
「……」
後ろ。
声。
「いる」
「うわっ!?」
山田隼人。
普通にいた。
「いつから!?」
「最初から」
存在感低下。
健在なり。
やがて。
軽虎教信者達。
全員集まりたり。
そして。
叫ぶ。
「ついに!」
「軽虎教最高幹部の方々が揃われた!!」
しん。
本人達。
停止。
「幹部?」
佐藤。
「何でぃ?」
八五郎。
「知らぬ」
ペ・ヤ。
「入った覚えないぞ」
レン。
「我も無し」
宗重。
「え、私も?」
セシリア。
「俺なんか隠れてたんだけど」
山田。
全員。
同じ答へ。
「「「違う」」」
されど。
信者。
聞かず。
「おお!!」
「謙虚なる方々だ!!」
「だから違う!!」
佐藤の叫び。
北方の空へ響きたり。
かくして。
軽虎教。
謎の大集合。
始まりたり。
本人達の意思とは。
全く関係なく。
である。




