表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日神の寄越し給ひし異形の獣に撥ねられて失せにければ異世界へ転生仕りき、されど能力の鉄の牛車召喚も黒き神境(?)とやらも使いよう皆無なり!  作者: イグアナ
旅路再開編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
286/316

鉄の牛車、街中にて再び騒ぎ招きしこと

 北方の街にて過ごす日々。


 それは一行にとり、久方ぶりなる穏やかなる時間なりけり。


 朝起きれば敵襲無く。


 昼歩けば巨大なる魔物現れず。


 夜眠れば神より奇妙なる知らせ届くことも無し。


 ただ街を歩き。


 食を楽しみ。


 人々と言葉交はす。


 旅人として当たり前なる日々。


 されど。


 忘れてはならぬことあり。


 彼ら自身。


 当たり前では無き存在なり。


 その日の朝。


 佐藤は宿屋の前にて立ち尽くしておりたり。


「……」


 目の前。


 人だかり。


 原因。


 明白なり。


 軽虎。


 正確には。


 黒牛に牽かれし軽虎なり。


 街の者たち。


 昨日より気になっていたものの、遠巻きに見るだけでありたり。


 されど。


 一日経ち。


 安全なものと分かるや否や。


 好奇心。


 爆発せり。


「これは何の馬車だ?」


「いや牛車では?」


「でも車輪が違うぞ」


「鉄で出来ている……」


「中に座れるのか?」


 質問。


 止まらず。


 佐藤。


 額を押さへたり。


「まあ、そうなるよな」


 当然なり。


 この世界の者からすれば。


 金属製の謎の箱。


 透明な窓。


 不思議な座席。


 理解不能な物体なり。


 そこへ。


 持ち主。


 現れたり。


 御池貴光。


 平安貴族。


 軽虎召喚者。


 そして現在。


 魚を食ひながら歩いて来たり。


「朝より賑やかなり」


「原因お前だけどな」


 佐藤言ひたり。


 街人の一人。


 貴光へ尋ねたり。


「これはあなたの物なのですか?」


 貴光。


 頷く。


「我が牛車なり」


 沈黙。


 街人。


 軽虎を見る。


 黒牛を見る。


 再び軽虎を見る。


「……牛車?」


「牛が牽くゆえ牛車なり」


 理屈。


 間違ひでは無し。


 されど。


 何か違ふ。


 佐藤。


 小さく言ひたり。


「日本でも怒られる説明だぞ」


 その時。


 一人の職人。


 前へ出たり。


 彼は街の車輪職人なり。


 馬車や荷車を作る者。


 その目。


 真剣なり。


「少し見ても?」


 貴光。


 頷く。


「良きなり」


 職人。


 調べ始めたり。


 車輪。


 車体。


 扉。


 そして。


 運転席。


「……」


「これは誰が作った?」


 当然の疑問。


 この世界の技術とは違ひすぎる。


 貴光。


 答へたり。


「知らぬなり」


「知らない?」


「神より貰ひたり」


 職人。


 さらに困惑。


 佐藤。


 補足しようとしたり。


 しかし。


 考へる。


 神に轢かれた平安貴族が転生し、その能力で召喚した軽トラック。


 説明。


 余計分からなくなる。


「……」


「まあ神製でいいか」


 諦めたり。


 その頃。


 荷台。


 子供たち。


 興味津々なり。


 軽虎の荷台に乗り。


 楽しそうにしておりたり。


「動くの?」


 子供問ふ。


 貴光。


 頷く。


「動くなり」


 黒牛を見る。


「頼むなり」


 黒牛。


 歩き始めたり。


 ゆっくり。


 本当にゆっくり。


 街道を進む。


 時速四キロ。


 街人。


 歓声。


「動いた!」


「すごい!」


「鉄の牛車だ!」


 佐藤。


 それを見る。


「本当ならもっと速いんだけどな……」


 軽トラック。


 本来の性能。


 一切発揮されず。


 牛に牽かれ。


 時速四キロ。


 だが。


 貴光。


 満足げなり。


「速すぎず良きなり」


「本来の開発者泣くぞ」


 その後。


 広場。


 完全に軽虎見学会となりたり。


 そこへ。


 ポテ子。


 現れる。


 嫌な予感。


 佐藤。


 感じたり。


「待て」


 しかし遅し。


 ポテ子。


 語り始めたり。


「これこそ軽虎様の偉大なる姿です」


 布教。


 開始。


「やめろ」


 佐藤。


 即座に止めたり。


 宗教問題。


 二度目は避けたいなり。


 その横。


 ポテ彦。


 冷静に言ひたり。


「歴史は繰り返すものです」


「繰り返させないんだよ」


 昼。


 騒動も落ち着き。


 一行は市場へ向かひたり。


 今度は旅用品を買ふためなり。


 食料。


 防寒具。


 道具。


 普通の買ひ物。


 のはずなり。


 されど。


 貴光。


 別の店へ。


 そこには。


 美しき布。


 香。


 飾り。


 そして。


 楽器。


 貴光。


 興味深げに見る。


「また雅用品か?」


 佐藤問ふ。


「旅には心の豊かさ必要なり」


 そう言ひ。


 小さき楽器を手に取りたり。


 戦いだけでは無し。


 生きるだけでも無し。


 美しきものを楽しむ。


 それが貴光の考へなり。


 佐藤。


 少し笑ひたり。


「まあ、お前らしいな」


 その時。


 遠く。


 金属音。


 聞こえたり。


 ヴィクトル。


 鍛冶場にいた。


 鍛冶師たち。


 DP-27を見て驚きたり。


「これは何だ!?」


 ヴィクトル。


 少し考へ。


 答へる。


 貴光訳す。


「遠くへ鉄を飛ばす道具、と言ひたり」


「間違ってないけど説明雑だな」


 佐藤言ひたり。


 こうして。


 街の者たち。


 さらに混乱深めたり。


 鉄の牛車。


 雷鳴放つ筒。


 喋る馬鈴薯。


 異国の兵士。


 そして。


 雅を求める平安貴族。


 理解不能。


 されど。


 悪き者では無し。


 それだけは。


 街の者たちにも伝はりたり。


 夜。


 宿。


 佐藤。


 椅子にもたれたり。


「今日は何も戦ってないのに疲れた」


 エレノア。


 笑ひたり。


「平和だったじゃない」


「平和だけど騒ぎは起きるんだよ」


 その通りなり。


 この一行。


 戦わずとも。


 何か起こす。


 貴光。


 買ひし道具を眺めたり。


 そして満足げに言ふ。


「良き日なり」


 佐藤。


 窓の外を見る。


 雪の街。


 暖かき灯。


 穏やかな夜。


 確かに。


 良き日なり。


 こうして。


 鉄の牛車騒動。


 大事になることなく。


 ただ街の奇妙なる思ひ出として。


 残ることとなりけり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ