勇者の噂、変な方向へ広がること
桐崎レン去りし後。
村、妙に静かなり。
一方。
御池貴光、軽トラの荷台にて胡瓜齧りける。
「旅立ちとは寂しきなり」
「まだ引きずってんのかよ」
佐藤健一、呆れ顔しける。
その時なり。
村入口側より、旅商人らしき男走り込みける。
「た、大変だァ!!」
「む?」
村人達、ざわつき始めける。
「どうした!?」
「魔物か!?」
商人、息切らしつつ叫びける。
「勇者様が!!」
「レンが?」
「道中で“鉄神獣の使徒”として噂になってる!!」
「は?」
しん。
空気止まりける。
一方。
遠くの黒牛。
静かに空見上げける。
「もぉー……」
完全に察した声なり。
商人、興奮した様子にて続けける。
「“鉄神獣と会話せし勇者”!!」
「“神器の真名を知る男”!!」
「“軽虎様の試練を受けし英雄”!!」
佐藤。
ゆっくり顔覆ひける。
「終わった……」
その時。
村人達、一斉にレンを神格化し始めける。
「おお……勇者様……」
「軽虎様に認められし御方……!」
「やはり只者では……!」
一方。
貴光、少し感心した顔しける。
「出世したなり」
「お前のせいだよ!!」
エレノア・シルヴァリア、即座にツッコミける。
その時なり。
商人、さらに紙取り出しける。
「しかも!!」
「まだあるの!?」
「王都新聞に載ります!!」
「新聞!?」
紙面には大きく、
『鉄神獣、現界』
『勇者、神獣と接触成功』
など書かれたり。
「いや盛りすぎだろ!!」
佐藤、叫びける。
一方。
貴光、記事しげしげ見つめける。
「字小さきなり」
「感想そこ!?」
その時。
村長、震える声にて呟きける。
「……これは」
「巡礼者来ますな」
「え?」
「軽虎様を拝みに」
「待て」
しん。
全員。
軽トラ見やりける。
軽トラ。
ただ静かに朝日反射しける。
ぴかーっ。
「おおおおお!!」
「光った!!」
「神託だ!!」
「もうダメだこの村!!」
一方。
貴光、静かに頷きける。
「人気車なり」
「軽トラに人気車って概念あるのかよ……」




