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ある日神の寄越し給ひし異形の獣に撥ねられて失せにければ異世界へ転生仕りき、されど能力の鉄の牛車召喚も黒き神境(?)とやらも使いよう皆無なり!  作者: イグアナ
旅路再開編

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北の街に入り、久方ぶりに買ひ物せしこと

 北方の街。


 雪に包まれしその街は、今まで訪れし村とは違ひ、大きき石壁に囲まれたり。


 門より中を見れば、多くの人行き交ひ、店並び、煙突より白き煙立ち上りけり。


 寒き土地なれど。


 そこには確かなる人の営みありたり。


 されど。


 門番たち。


 その日。


 人生において最も奇妙なる一団を見ることとなりけり。


 牛。


 そこまでは良し。


 荷車。


 それも良し。


 だが。


 その牛が牽くもの。


 鉄で出来し謎の箱。


 さらに。


 それに乗る者たち。


 異国の服装をした者。


 剣士。


 魔法使い。


 見知らぬ軍服の男二人。


 腰に謎の鉄筒を下げし貴族風の男。


 そして。


 喋る馬鈴薯二つ。


 理解。


 追ひ付かざりけり。


「……」


 門番。


 しばらく沈黙したり。


 そして。


 口を開く。


「ええと……」


「代表者は?」


 普通の質問なり。


 されど。


 一行。


 少し止まりたり。


「代表?」


 佐藤言ひたり。


 考へてみれば。


 この一行。


 誰が代表なのか。


 分からぬ。


 勇者レン。


 戦闘力ならば中心。


 エレノア。


 冒険者として経験あり。


 佐藤。


 常識担当。


 貴光。


 軽虎の持ち主。


 ポテ彦。


 王都国立大学卒。


 謎なり。


「誰だ?」


 佐藤問ひたり。


「佐藤じゃないの?」


 エレノア答へたり。


「俺!?」


 驚きたり。


「一番普通だから」


「理由が悲しい」


 しかし。


 確かに。


 一番説明出来る者。


 佐藤なり。


 佐藤。


 前へ出たり。


「旅人です」


 門番。


 頷く。


「なるほど」


 そして後ろを見る。


「……」


「旅人?」


「はい」


「……」


 納得。


 出来ず。


 当然なり。


 されど。


 危険人物では無いこと。


 北の村より届きし話により分かっておりたり。


 巨大虫騒動を収めし者たち。


 その噂。


 既に少し広まり始めていたなり。


 かくして。


 一行。


 街へ入ることを許されけり。


 街中。


 人々。


 当然見る。


 特に。


 軽虎。


「何だあの馬車」


「鉄?」


「いや牛が引いてるぞ」


「でも馬車じゃないぞ」


 混乱。


 広がりたり。


 貴光。


 それを見る。


「珍しきものを見る目なり」


「実際珍しいんだよ」


 佐藤答へたり。


「お前の時代でも、この世界でも珍しいんだよ」


 その通りなり。


 軽トラックを牛が牽く。


 どの時代でも異常なり。


 まず向かひし場所。


 宿なり。


 久方ぶりの宿。


 暖かき部屋。


 柔らかき寝床。


 佐藤にとりては何より大切なものなり。


 宿屋主人。


 人数を確認したり。


「何名様で?」


 佐藤。


 数へたり。


「えっと」


 自分。


 貴光。


 レン。


 エレノア。


 フィア。


 アレクセイ。


 ヴィクトル。


 そして。


 ポテ彦。


 ポテ子。


「……」


 悩む。


「馬鈴薯って人数?」


 宿屋主人。


 人生初の質問を受けたり。


 ポテ彦。


 前へ出る。


「一名として扱っていただければ」


「喋った!?」


 当然の反応なり。


 結局。


 部屋。


 複数借りることとなりけり。


 荷物置き。


 そして。


 街へ。


 目的。


 買ひ物なり。


 久方ぶりなる市場。


 食料。


 服。


 道具。


 多くの物並びたり。


 まず動いた者。


 当然。


 貴光なり。


「魚なり」


 佐藤。


 ため息。


「知ってた」


 貴光。


 魚屋へ向かひたり。


 店主。


 笑顔。


「いい魚あるぞ」


 その言葉。


 貴光の心。


 掴みたり。


 魚。


 一匹。


 二匹。


 三匹。


 購入。


「買いすぎだろ」


「必要なり」


「本当に?」


「必要なり」


 譲らず。


 その後。


 貴光。


 別の店を見たり。


 そして。


 止まる。


 そこには。


 綺麗な紙。


 筆。


 香。


 飾り物。


 並びたり。


「……」


 佐藤。


 珍しく感じたり。


 魚ではない。


 武器でもない。


 貴光。


 静かに見たり。


「懐かしきものなり」


 そう。


 忘れがちなれど。


 彼は貴族なり。


 雅を愛する者なり。


 貴光。


 筆と紙を買ひたり。


「何するんだ?」


「歌を詠むなり」


「歌?」


「和歌なり」


 佐藤。


 少し笑ひたり。


「やっと貴族っぽいな」


「元より貴族なり」


「最近ナガン持って虫と戦ってたから忘れてた」


 当然なり。


 一方。


 アレクセイとヴィクトル。


 武器屋を見たり。


 並ぶ剣。


 槍。


 弓。


 興味深そうに眺めたり。


 店主。


 声を掛ける。


「何か探しているのか?」


 ヴィクトル。


 少し考へ。


 答へる。


 貴光訳す。


「武器を見るだけ、と言ひたり」


 店主。


 自慢の大剣を見せたり。


「これはどうだ?」


 ヴィクトル。


 見る。


「……」


「短い」


 店主。


 固まる。


「短い?」


 彼が比較しているもの。


 航空機関砲なり。


 基準。


 おかしきなり。


 夕方。


 買ひ物終へし一行。


 宿へ戻りたり。


 久しぶりに。


 何かと戦わぬ一日。


 普通の日。


 佐藤。


 椅子へ座りたり。


「こういうのでいいんだよ」


 本心なり。


 旅とは。


 本来こういうもの。


 新しい街。


 新しい食べ物。


 新しい出会ひ。


 巨大虫との戦争では無し。


 その横。


 貴光。


 買った紙を広げたり。


 雪降る街を見ながら。


 静かに筆を取る。


 異世界。


 遠き土地。


 されど。


 月。


 雪。


 風。


 美しきもの。


 変はらず。


「雅なり」


 貴光。


 満足げに言ひたり。


 佐藤。


 少し笑ふ。


 平安貴族。


 軽虎使ひ。


 ナガン持ち。


 されど。


 本質。


 やはり。


 貴族なりけり。

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