表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日神の寄越し給ひし異形の獣に撥ねられて失せにければ異世界へ転生仕りき、されど能力の鉄の牛車召喚も黒き神境(?)とやらも使いよう皆無なり!  作者: イグアナ
旅路再開編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
282/320

北の村を発つ支度整へしこと

 北の村に朝訪れたり。


 空は薄き雲に覆はれ。


 雪は静かに降り続けたり。


 されど、その雪は以前の如く恐ろしく感じるものでは無し。


 黒き翼が空を覆ふことも無く。


 地底より響く不気味なる音も無し。


 ただ冬の土地に降る、いつもの雪なりけり。


 村人たちは朝早くより動き始め、壊れし柵を直し、家々の修理を進めたり。


 巨大なる虫との戦い。


 それは確かに恐ろしき出来事なり。


 されど。


 人はいつまでも恐怖の中では暮らさぬ。


 畑を直し。


 家を直し。


 飯を作り。


 日々を続ける。


 それが人なりけり。


 一行もまた、借りし家にて旅立ちの準備を始めておりたり。


 暖炉の火。


 木製の机。


 簡素なる寝床。


 短き間なれど、この家も確かに彼らの居場所となりたり。


「結局、結構長くいたな」


 佐藤、荷物をまとめながら言ひたり。


 最初は少し立ち寄るだけのつもりなり。


 されど。


 気付けば。


 ソ連人二人と出会ひ。


 巨大虫と戦ひ。


 空戦を行ひ。


 地下戦争まで経験したり。


 普通の旅では考へられぬ濃さなり。


「普通、寒い村に寄っただけで戦争になるか?」


 佐藤呟きたり。


 その横。


 貴光。


 荷物をまとめ……。


 ず。


 魚を食ひたり。


「ならぬなり」


「分かってるなら手伝えよ」


 当然の突っ込みなり。


 貴光。


 魚串を置きたり。


 そして。


 黒牛の方へ向かひたり。


 荷造りではなく牛の確認なり。


 相変はらずなり。


 外。


 黒牛は村人が作りし小屋より出て、雪の上に立っておりたり。


 寒さなど気にせぬ様子。


 ただ静かに草を食みたり。


「この牛、本当に何なんだろうな」


 佐藤言ひたり。


 何度目か分からぬ疑問なり。


 普通の牛。


 のはずなり。


 されど。


 魔王国へ行き。


 巨大虫戦争を経験し。


 雪国でも普通に暮らす。


 普通とは何か。


 考へる必要ありけり。


 その頃。


 村外れ。


 アレクセイとヴィクトルはIl-2M3の確認をしておりたり。


 戦いで傷付きし鉄の鳥。


 されど。


 神より与へられし不壊の力。


 時間と共に傷は消え、再び空へ向かふ姿へ戻りたり。


 アレクセイ。


 翼に手を置きたり。


「まだ飛べるな」


 ヴィクトル頷きたり。


「当然だ」


 貴光。


 その言葉を訳したり。


 佐藤。


 機体を見る。


「しかし、本当にすごい能力だよな」


「燃料無限、弾薬無限、壊れない」


「完全に反則じゃん」


 すると。


 ヴィクトル。


 少し考へたり。


 そして答へたり。


「それでも負ける時はある」


 貴光訳したり。


 佐藤。


 少し黙る。


 確かに。


 今回。


 Il-2だけでは勝てなかった。


 空では追い詰められ。


 地下では使えず。


 最後は全員の力だった。


 どれほど強き力でも。


 一つで全て解決出来るものでは無し。


 その後。


 ヴィクトルはDP-27を背負ひたり。


 佐藤と貴光も。


 ナガンM1895を腰へ付けたり。


 最初は違和感しか無かった鉄の武器。


 されど。


 今は旅の道具の一つとなりたり。


「俺、異世界来てからおかしい方向に進んでる気がする」


 佐藤言ひたり。


「ポテチ召喚からジャガイモ召喚になって、拳銃持って、巨大虫と戦った」


 少し考へたり。


「意味分からないな」


「今更なり」


 貴光答へたり。


「お前に言われるのが一番嫌なんだけど」


 平安貴族。


 軽トラ。


 黒牛。


 ナガン。


 こちらも大概なり。


 家の中。


 ポテ彦とポテ子も準備しておりたり。


 準備。


 と言っても。


 特に荷物無し。


 馬鈴薯なればなり。


「お前ら楽だな」


 佐藤言ひたり。


「身軽なのは利点です」


 ポテ彦答へたり。


「馬鈴薯として?」


「王都国立大学卒業者としてです」


「そこ関係ないだろ」


 相変はらずなり。


 昼頃。


 村人たち集まりたり。


 一行の旅立ちを見送るためなり。


 村長。


 前へ出たり。


「本当に世話になった」


 レン。


 首を振る。


「俺たちだけじゃない」


 その通りなり。


 村人。


 ソ連人。


 甲殻王。


 全てがあったから終はりたり。


 誰か一人の勝利では無し。


 村長。


 山を見る。


 封鎖されし洞窟。


 その奥。


 今も。


 甲殻王たちは暮らしているはずなり。


「もう争わずに済めばいいが」


 ポテ彦。


 頷きたり。


「お互いの場所を守れば、きっと」


 それが答へなり。


 やがて。


 出発の時。


 黒牛。


 軽トラを引き始めたり。


 久方ぶりなる光景なり。


 アレクセイとヴィクトルも同行し。


 鉄の鳥もまた空へ。


 奇妙なる旅団。


 さらに奇妙になりたり。


 村人たち。


 手を振る。


 子供たち。


 Il-2を見上げる。


 そして。


 一行は進みたり。


 北の地。


 まだ見ぬ場所へ。


 佐藤。


 白き道を見ながら呟きたり。


「次こそ普通の町がいい」


 エレノア。


 苦笑したり。


「毎回言ってるわよね」


「毎回外れてるけどな」


 その通りなり。


 貴光。


 前を見る。


「何が起こるか分からぬから旅は面白きなり」


 珍しく。


 まともな言葉なり。


 佐藤。


 頷きかけたり。


 その時。


 貴光。


 続けたり。


「ところで腹減りたり」


「台無しだよ」


 こうして。


 北の村での物語。


 一つ終はりたり。


 されど。


 旅路。


 未だ長し。


 奇妙なる一行の歩み。


 再び始まりけり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ