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ある日神の寄越し給ひし異形の獣に撥ねられて失せにければ異世界へ転生仕りき、されど能力の鉄の牛車召喚も黒き神境(?)とやらも使いよう皆無なり!  作者: イグアナ
旅路再開編

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二つの王、深き闇にて争ひしこと

 洞窟最深部。


 そこに現れしもの。


 それは。


 もう一つの王なり。


 されど。


 本来あるべき王では無し。


 守るために進化した存在でも無し。


 ただ。


 強く。


 ただ。


 壊すため。


 進化の失敗より生まれし異形なり。


 巨大なる身体。


 不揃ひなる甲殻。


 左右で違ふ脚。


 異常に発達した爪。


 その姿。


 生命というより。


 暴走せし力そのものなりけり。


「……」


 佐藤。


 見上げたり。


「結局デカいの出るのかよ」


 もっともな感想なり。


 先程。


 小型化こそ進化。


 そう学びたり。


 されど。


 目の前の存在。


 完全に巨大なり。


 ポテ彦。


 眼鏡を直したり。


「ですが、先ほどの王とは全く違います」


「どう違うんだ?」


「無駄だらけです」


 ポテ彦。


 暴走王を見る。


「巨大な身体」


「過剰な筋肉」


「分厚すぎる甲殻」


「全て力任せです」


 佐藤。


 首傾げたり。


「でも強そうだけど」


「はい」


 ポテ彦頷く。


「だから危険なのです」


「長く生きることを捨てた強さです」


 沈黙。


 完成された進化。


 暴走した進化。


 二つ。


 正反対の結果。


 今。


 向かひ合ひたり。


 甲殻王。


 前へ出る。


 暴走王。


 咆哮。


 次の瞬間。


 衝突。


 洞窟。


 揺れたり。


 力。


 圧倒的なり。


 甲殻王。


 押される。


「負けてる!?」


 エレノア叫びたり。


 しかし。


 違ひたり。


 甲殻王。


 受け流す。


 避ける。


 相手の力を利用する。


 巨大な攻撃。


 必要最低限の動きでかわす。


「戦い方が全然違う……」


 レン呟きたり。


 暴走王は力。


 甲殻王は技。


 同じ進化より生まれ。


 全く違ふ存在となりたり。


 しかし。


 問題あり。


 暴走王。


 痛みを気にせず。


 防御も考へず。


 攻撃し続ける。


 甲殻王。


 少しずつ。


 傷増えたり。


「まずいです」


 ポテ彦言ひたり。


「あのままでは負けます」


「でもあいつ強いだろ!?」


 佐藤問ふ。


「はい」


「ですが」


「守るものがあります」


 甲殻王。


 背後。


 幼き虫たち。


 それを庇ひながら戦っている。


 だから。


 自由に動けぬ。


「……」


 佐藤。


 ナガンを見る。


 そして。


 ため息。


「本当に変な旅だな」


 敵だった虫を助ける。


 普通ならあり得ぬ。


 されど。


 今は。


 やるしか無し。


「援護するぞ!」


 レン叫ぶ。


 全員。


 動きたり。


 レン。


 正面。


 エレノア。


 側面。


 フィア。


 魔法。


 ヴィクトル。


 DP-27。


 アレクセイ。


 戦術指示。


 そして。


 佐藤と貴光。


 ナガン。


 戦闘開始なり。


 ヴィクトル。


 撃つ。


 弾丸。


 暴走王へ。


 命中。


 しかし。


 厚き甲殻。


 浅し。


「硬すぎる!」


 佐藤叫ぶ。


 ポテ彦。


 観察。


 必死に考へる。


「必ずあります」


「何が!」


「欠点です」


 完璧な生物など存在せぬ。


 何かを得れば。


 何かを失ふ。


 それが進化なり。


 ポテ彦。


 見続ける。


 脚。


 甲殻。


 動き。


 そして。


 気付く。


「……」


「心臓部ではありません」


「え?」


 佐藤振り向く。


「あの個体」


「守るべき部分を理解していません」


「つまり?」


「弱点を守っていない」


 完成された王なら隠す。


 しかし。


 暴走王は違ふ。


 力だけ。


 防御は雑。


 ポテ彦。


 指差す。


「首の下!」


「あそこです!」


 全員。


 見る。


 確かに。


 甲殻の隙間。


 小さく存在したり。


 しかし。


 近付くこと。


 難し。


 暴れる巨大な腕。


 近寄れば潰される。


「どうする」


 レン言ひたり。


 その時。


 甲殻王。


 動く。


 人間たちを見る。


 そして。


 理解したかのように。


 暴走王へ突進。


 真正面。


 押さえ込む。


「時間作ってる!」


 エレノア叫ぶ。


 今。


 この瞬間。


 しか無し。


 ヴィクトル。


 DP-27。


 構へる。


 しかし。


 角度。


 悪し。


「撃てない」


 味方の王に当たる。


 その時。


 貴光。


 静かに横へ移動。


 ナガン。


 構へたり。


「いや」


 佐藤。


 気付く。


「その距離は無理だろ」


 小さな隙間。


 動く敵。


 拳銃。


 普通。


 不可能。


 しかし。


 貴光。


 集中。


 まるで。


 弓を射る時の如く。


 一発。


 銃声。


 響く。


 命中。


 暴走王。


 一瞬止まる。


「……」


 佐藤。


 口開けたり。


「もう突っ込まないぞ俺は」


 慣れたり。


 平安貴族だから仕方無し。


 そして。


 出来た隙。


 レン。


 走る。


 エレノア。


 続く。


 甲殻王。


 最後の力で押さえる。


 全員の攻撃。


 一点へ。


 集まりたり。


 しかし。


 暴走王。


 まだ倒れぬ。


 むしろ。


 最後の力。


 暴れ始めたり。


 洞窟。


 崩れ始める。


「まずい!」


 フィア叫ぶ。


 このままでは。


 全員。


 生き埋め。


 佐藤。


 叫ぶ。


「最後の最後まで迷惑な奴だな!」


 決着。


 目前。


 されど。


 時間。


 残り僅かなり。


 崩れゆく洞窟の中。


 最後の一撃。


 必要となりたり。

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