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ある日神の寄越し給ひし異形の獣に撥ねられて失せにければ異世界へ転生仕りき、されど能力の鉄の牛車召喚も黒き神境(?)とやらも使いよう皆無なり!  作者: イグアナ
旅路再開編

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完成せし王と人の知恵競ひしこと

 地下深く。


 かつて鉱山なりし場所。


 今や巨大なる巣へ変はり果てし空間にて。


 人と虫。


 再び向かひ合ひたり。


 されど。


 それは初めの戦いとは違ひたり。


 雪原にて対峙せし甲殻の王。


 あの時の王は巨大なり。


 踏み潰し。


 耐へ。


 力で押す存在なりけり。


 されど。


 今。


 目の前に立つもの。


 小さし。


 静かなり。


 そして。


 恐ろしきなり。


 無駄なる巨大さを捨て。


 必要な力だけ残し。


 全てを戦いのために整へし姿。


 それこそ。


 王が選びし最後の進化なり。


「……」


 佐藤。


 ナガンを握りながら呟きたり。


「小さくなった方が怖いって何なんだよ」


 当然な感想なり。


 普通。


 巨大化こそ恐怖。


 されど。


 自然界では違ふ。


 生き残るためならば。


 小さくなることもまた進化なり。


 ポテ彦。


 静かに言ひたり。


「恐らく、あれはもう以前ほど進化出来ません」


「本当か?」


「はい」


 ポテ彦頷きたり。


「進化するための力すら削り、今の形に使ったのでしょう」


 つまり。


 最後の姿。


 これ以上変はらぬ。


 しかし。


 同時に。


 最も完成された姿なり。


 その時。


 王。


 動きたり。


 一瞬。


 姿消ゆ。


「来る!」


 レン叫びたり。


 剣。


 振る。


 金属音。


 ぎりぎり。


 受けたり。


 だが。


 次の瞬間。


 王。


 既に横。


「速い!」


 エレノア。


 身体強化。


 反応。


 拳。


 振る。


 されど。


 空振り。


 王。


 避けたり。


 そして。


 反撃。


 爪。


 迫る。


 エレノア。


 障壁。


 展開。


 受け止めたり。


 衝撃。


 響く。


「重っ……!」


 小型化したとは思へぬ力なり。


 無駄を削っただけ。


 弱くなったわけでは無し。


 後方。


 ヴィクトル。


 DP-27構へたり。


 撃つ。


 短き連射。


 しかし。


 王。


 回避。


 弾道を読んでいる。


 ヴィクトル。


 表情変へず。


 位置変へたり。


 再び。


 撃つ。


 一発。


 命中。


 甲殻。


 欠ける。


 王。


 即座に距離を取る。


「当たれば効く」


 アレクセイ言ひたり。


 貴光。


 訳す。


 そう。


 勝てぬ相手では無し。


 だが。


 当てること。


 それが難し。


 王。


 今度は正面から来ず。


 壁。


 天井。


 使ひたり。


 洞窟。


 自ら作り替へし場所。


 つまり。


 ここは王の領域。


「こっちが不利だな」


 レン言ひたり。


 その通りなり。


 外ならば広し。


 Il-2もある。


 されど。


 ここには無し。


 空の鉄鳥。


 今は雪原にて休んでいる。


 頼れるもの。


 自分たちだけなり。


「でも」


 佐藤。


 小さく言ひたり。


「向こうも同じだよな」


「?」


 ポテ彦振り向く。


「空の奴らもいない」


「巨大な身体もない」


「こいつも全部捨ててここに来たんだろ」


 沈黙。


 確かに。


 人が武器を制限されたように。


 王もまた。


 多くを捨てた。


 これは。


 お互い最後の勝負なり。


「珍しく良きこと言ひたり」


 貴光言ひたり。


「珍しく余計だわ」


 いつもの二人なり。


 その時。


 王。


 再び動く。


 狙い。


 ヴィクトル。


 DP-27。


 最大火力。


 それを理解している。


「装填中を狙う気か!」


 佐藤叫ぶ。


 そう。


 王は覚えていた。


 あの武器。


 撃ち続けられぬ。


 止まる瞬間あり。


 そこを狙へばよい。


 ヴィクトル。


 弾倉。


 空。


 交換。


 その数秒。


 王。


 迫る。


 だが。


 銃声。


 一発。


 王の足元。


 撃った者。


 佐藤。


「こっち見ろ!」


 王。


 向きを変へる。


「……」


 佐藤。


 直後。


 後悔。


「あ、やば」


 当然なり。


 狙われるということは。


 危険になるということなり。


 王。


 接近。


 しかし。


 その間。


 装填完了。


 DP-27。


 再び火を吹く。


 王。


 退く。


 ヴィクトル。


 佐藤を見る。


 少し笑ひたり。


「Спасибо.(ありがとう)」


 貴光訳す。


 佐藤。


 息を吐く。


「怖すぎる」


 勇敢。


 などでは無し。


 怖いものは怖い。


 それでも動いた。


 それだけなり。


 戦い。


 続く。


 少しずつ。


 少しずつ。


 王に傷増えたり。


 だが。


 人側にも疲労溜まりたり。


 長期戦。


 危険。


 その時。


 ポテ彦。


 何かに気付きたり。


「……」


「どうした?」


 レン問ふ。


 ポテ彦。


 王を見る。


 そして。


 周囲の壁を見る。


「おかしいです」


「何が?」


「王は先ほどから」


「こちらを倒そうとしていません」


 全員。


 一瞬止まる。


「は?」


 佐藤。


 聞き返す。


「どういうことだよ」


「攻撃出来る場面は何度もありました」


「ですが致命傷を狙っていません」


 沈黙。


 確かに。


 王は強い。


 本気なら。


 もっと危険だったはず。


 ならば。


 何故。


 その時。


 洞窟奥。


 音。


 聞こえたり。


 小さき音。


 かさ。


 かさ。


 佐藤。


 顔をしかめる。


「まだいるのか」


 しかし。


 現れたもの。


 違ひたり。


 小さな虫。


 幼き個体。


 大量。


 奥にいた。


 ポテ彦。


 理解したり。


「……そういうことですか」


 甲殻王。


 守っていた。


 自分ではなく。


 群れの未来を。


 戦いの意味。


 少しずつ。


 変はり始めたり。

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