小さくなりし王、真なる力示しけること
地下空洞。
静寂。
先程まで響きたりし銃声も。
虫の足音も。
一瞬。
消えたり。
全員の視線。
ただ一つへ向きたり。
中央。
黒き繭。
亀裂。
広がる。
ぴし。
ぴし。
音立て。
甲殻。
剥がれ落ちたり。
そして。
中より現れしもの。
甲殻の王。
その最後なる姿なり。
「……」
佐藤。
見たり。
そして。
首傾げたり。
「……小さくね?」
その言葉通りなり。
そこに現れしもの。
雪原にて暴れし巨大なる要塞では無し。
家ほどの大きさも無し。
巨大な脚も無し。
分厚すぎる甲殻も無し。
人より少し大きき程度。
されど。
異様な姿なり。
細き身体。
無駄無き外殻。
鋭き脚。
背には小さき翼。
そして。
青白く光る筋。
明らかに。
今までとは違ひたり。
「弱くなった……?」
村人の一人。
呟きたり。
されど。
ポテ彦。
即座に答へたり。
「違います」
声。
震えておりたり。
「無駄を捨てたのです」
「無駄?」
佐藤問ふ。
「はい」
「巨大な身体」
「厚すぎる甲殻」
「必要以上の力」
「全て捨てた」
ポテ彦。
王を見る。
「効率だけを求めた形です」
その瞬間。
王。
消えたり。
「え?」
佐藤。
声漏らす。
次。
音。
金属。
レン。
剣で受け止めていた。
「っ……!」
目の前。
王。
いた。
誰も移動を見えざりけり。
「速い……!」
レン。
押し返す。
しかし。
王。
既にそこには無し。
横。
エレノア。
反応。
身体強化。
腕を上げる。
直後。
衝撃。
「くっ!」
防御。
間に合ひたり。
だが。
吹き飛ばされる。
「力まで落ちてないの!?」
当然の疑問。
小型化。
普通なら力は落ちる。
されど。
違ふ。
必要な筋肉。
必要な構造。
全て最適化されている。
弱体化では無し。
完成。
それが今の王なり。
「ラスボスって普通デカくなるだろ!」
佐藤叫びたり。
「逆じゃん!」
「生物としては正しき進化です」
ポテ彦答へたり。
「解説ありがとう!」
「でも嬉しくない!」
もっともなり。
その時。
ヴィクトル。
DP-27。
構へたり。
発射。
銃声。
響く。
しかし。
王。
避けたり。
弾道。
読んでいる。
否。
撃つ前。
銃口。
姿勢。
そこから判断している。
「……」
ヴィクトル。
目細めたり。
「厄介だ」
そして。
撃ち方変更。
予測されぬよう。
短く。
位置を変へ。
撃つ。
弾丸。
一発。
命中。
甲殻。
割れる。
効く。
確かに効く。
しかし。
王。
即座に距離取る。
「回復は?」
佐藤問ふ。
ポテ彦。
見る。
「遅いです」
「やはり」
「高速進化能力は落ちています」
それは希望なり。
この姿。
強い。
だが。
万能では無し。
軽量化した結果。
以前ほどの再生能力は失はれている。
当てれば勝てる。
問題。
当たらぬことなり。
王。
動く。
速し。
洞窟内。
壁。
天井。
全て使ふ。
まるで地形そのものが味方なり。
「来る!」
フィア叫ぶ。
魔法。
放つ。
しかし。
王。
避ける。
そして。
反撃。
魔力。
集中。
口元。
青白き光。
「まずい!」
飛行型と同じ。
魔力弾。
発射。
狙い。
後方。
佐藤たち。
その前。
エレノア。
飛び込む。
「させない!」
障壁。
展開。
衝突。
爆発。
耐える。
しかし。
重い。
「前より強い……!」
攻撃もまた。
改良済みなり。
その隙。
王。
接近。
エレノアへ。
だが。
銃声。
一発。
王。
後退。
撃った者。
貴光。
「……」
佐藤。
見る。
「当てた?」
王ですら。
完全には予測出来ざりけり。
理由。
単純。
貴光。
動きが特殊すぎたり。
銃の扱い。
現代人とも。
兵士とも違ふ。
弓の延長として扱ふ平安貴族。
予測外なり。
「何故当たりしや」
貴光本人も少し不思議さうなり。
「お前も分かってないのかよ!」
佐藤叫ぶ。
されど。
効果あり。
王。
初めて。
貴光を見る。
危険対象。
そう判断したり。
「おい」
佐藤。
嫌な予感。
「狙われてない?」
次の瞬間。
王。
動く。
貴光へ。
速し。
誰も間に合はぬ。
佐藤。
反射的。
ナガン構へたり。
撃つ。
一発。
二発。
外れ。
三発目。
命中。
王。
僅かに止まる。
その一瞬。
レン。
割り込む。
「助かった!」
佐藤。
手を見る。
「……」
「俺、本当に戦ってるな」
小さく呟きたり。
戦えぬと思っていた者。
確かに。
仲間を守りたり。
だが。
王は倒れぬ。
むしろ。
学びたり。
人間。
銃。
魔法。
全て。
分析している。
ポテ彦。
気付きたり。
「長引けば危険です」
「また対応されます」
全員。
理解。
これが最後の勝負。
王が完全に学習する前に。
倒すしか無し。
地下空洞。
人と虫。
最後の戦い。
本格的に始まりたり。




