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ある日神の寄越し給ひし異形の獣に撥ねられて失せにければ異世界へ転生仕りき、されど能力の鉄の牛車召喚も黒き神境(?)とやらも使いよう皆無なり!  作者: イグアナ
旅路再開編

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深き洞にて王の変貌を見たりしこと

 洞窟。


 さらに深く。


 一行は進みたり。


 もはや入口より差し込みし光など届かず。


 周囲を照らすものは、フィアの生み出した小さき光のみなり。


 されど。


 完全なる闇にはあらず。


 壁。


 天井。


 地面。


 そこには青白く光る奇妙なる筋が走りたり。


 まるで血管の如く。


 まるで洞窟そのものが命持ちしものの如く。


 静かに。


 脈打っておりけり。


「……」


 佐藤。


 その様を見たり。


「絶対普通の洞窟じゃないよな」


「普通の洞窟は光らぬなり」


 貴光答へたり。


「そこじゃないんだよ」


 いつも通りの会話なり。


 されど。


 空気は重し。


 奥へ進めば進むほど。


 感じる。


 何かいる。


 巨大なる何か。


 そして。


 それは待っている。


 そんな感覚なり。


 ポテ彦。


 壁を調べながら進みたり。


 眼鏡の奥。


 その目は真剣なり。


「これは……想像以上です」


「何が?」


 エレノア問ひたり。


「この巣」


「ただ作られたものではありません」


「王の身体の一部のようになっています」


 沈黙。


 レン。


 眉をひそめたり。


「つまり」


「あいつはこの洞窟全体を使っているということか」


「恐らく」


 ポテ彦頷きたり。


「外では身体を進化させました」


「ですが地下では環境そのものを変えている」


 佐藤。


 嫌そうな顔。


「本当に虫なのかよ」


「馬鈴薯が喋る世界で言いますか」


 ポテ彦答へたり。


「お前が言うな」


 もっともな返しなり。


 その時。


 ヴィクトル。


 手を上げたり。


 全員。


 止まる。


 音。


 聞こえたり。


 かさ。


 かさ。


 違ふ。


 今までの足音では無し。


 もっと重き音。


 ずる。


 ずる。


 暗闇の奥。


 何か動きたり。


 ヴィクトル。


 DP-27構へたり。


 レン。


 剣抜きたり。


 エレノア。


 魔力込めたり。


 そして。


 現れたり。


 巨大なる虫。


 されど。


 甲殻王では無し。


 護衛個体。


 先程までの虫とは明らかに違ひたり。


 身体は小型化。


 されど。


 無駄無き形。


 厚き部分。


 薄き部分。


 役割ごとに分かれておりたり。


「……」


 ポテ彦。


 呟く。


「完成に近付いています」


「何がだ?」


「進化です」


 その言葉と同時。


 護衛虫。


 動きたり。


 速し。


 今までの巨大な虫とは違ふ。


 重さではなく。


 速度。


 狭き洞窟で戦うための形。


「来る!」


 レン叫ぶ。


 剣。


 ぶつかる。


 火花。


 散る。


「っ!」


 レン。


 押されかけたり。


 力ではなく。


 角度。


 受け流し。


 まるで戦い方を理解しているような動きなり。


「こいつ……!」


「ただ暴れてるんじゃない!」


 その横。


 エレノア。


 身体強化。


 一気に踏み込みたり。


 拳。


 命中。


 護衛虫。


 吹き飛ぶ。


 されど。


 壁を蹴り。


 即座に戻る。


「対応早すぎる!」


 エレノア叫びたり。


 その時。


 銃声。


 響く。


 ヴィクトル。


 DP-27。


 射撃。


 弾丸。


 命中。


 甲殻。


 割れる。


 しかし。


 護衛虫。


 即座に身体を低くしたり。


 銃線を避ける。


「……」


 ヴィクトル。


 目を細めたり。


「覚えたか」


 一度見た攻撃。


 二度目には対応する。


 甲殻王ほどでは無し。


 されど。


 明らかに学習能力あり。


 アレクセイ。


 横より動きたり。


 隙を狙う。


 軍人としての動き。


 無駄無し。


 攻撃。


 護衛虫。


 反応。


 しかし。


 その瞬間。


 背後。


 貴光。


 ナガン。


 構へたり。


 発砲。


 一発。


 命中。


 動き。


 止まる。


「今!」


 レン。


 剣。


 一閃。


 ついに護衛虫。


 倒れたり。


 静寂。


 戻る。


「……」


 佐藤。


 貴光を見る。


「やっぱおかしいって」


「何がなり」


「何でそんな当てられるんだよ」


「よく見たり」


「だから理由が普通なんだよ」


 平安貴族。


 謎多き存在なり。


 戦闘後。


 ポテ彦。


 護衛虫を調べたり。


 しばらく。


 黙りたり。


「どうした?」


 佐藤問ふ。


 ポテ彦。


 答へたり。


「無駄が減っています」


「無駄?」


「はい」


「外で戦った王は巨大でした」


「防御を厚くし、力で押す形です」


「ですがこれは違います」


 ポテ彦。


 護衛虫を見る。


「必要な部分だけ強化している」


「つまり」


 佐藤。


 嫌な予感。


「あいつ」


「小さくなる可能性ある?」


 ポテ彦。


 頷きたり。


「巨大化だけが進化ではありません」


「軽量化」


「効率化」


「それもまた進化です」


 沈黙。


 佐藤。


 ため息。


「ラスボスって普通デカくなるもんだろ……」


 常識。


 通じず。


 その時。


 奥。


 音。


 響く。


 どくん。


 どくん。


 先程より。


 近し。


 そして。


 広き空間。


 そこへ出たり。


 全員。


 言葉を失ひたり。


 そこは巨大な地下空洞なり。


 中心。


 巨大なる殻。


 繭の如きもの。


 そして。


 その中。


 影。


 動く。


 以前のような巨大な姿では無し。


 少しずつ。


 縮み。


 形を変へ。


 完成されていく。


 甲殻王。


 最終なる進化。


 始まりておりけり。


「……」


 佐藤。


 呟く。


「間に合わなかった?」


 ポテ彦。


 静かに答へたり。


「いいえ」


「恐らく」


「今が最後の機会です」


 進化途中。


 完全になる前。


 止めるなら。


 今。


 されど。


 その時。


 周囲。


 大量の音。


 響きたり。


 かさ。


 かさ。


 かさ。


 壁。


 天井。


 穴。


 そこより。


 護衛虫。


 現れたり。


 一匹では無し。


 十。


 二十。


 さらに。


 増える。


 ヴィクトル。


 DP-27構へたり。


 レン。


 剣を握る。


 エレノア。


 魔力高める。


 佐藤。


 ナガンを構へる。


 奥。


 繭。


 動く。


 決戦。


 近付きたり。


 甲殻王が目覚めるまで。


 残された時間は。


 僅かなりけり。

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