深き巣にて進化の跡見つけしこと
洞窟深く。
一行進みけり。
そこはもはや、人の作りし鉱山には見えざりけり。
壁には黒き甲殻張り付き。
天井より奇妙なる管垂れたり。
奥より響く音。
かさ。
かさ。
そして。
時折聞こゆる低き響き。
何か巨大なるもの。
そこに在る証なり。
「気味悪いな」
佐藤呟きたり。
「洞窟というより、生き物の腹の中みたいだ」
その言葉。
誰も否定出来ざりけり。
実際。
洞窟は変はりつつありたり。
甲殻王。
自らの巣へ作り替へたるなり。
ポテ彦、壁へ近付きたり。
眼鏡を直し。
じっと観察したり。
「これは……」
「何か分かったの?」
エレノア問ひたり。
「成長組織のようなものです」
「成長?」
「はい」
ポテ彦頷きたり。
「王だけが進化しているのではありません」
「巣そのものも変化しています」
沈黙。
佐藤。
顔しかめたり。
「もう虫じゃなくて基地じゃん」
もっともなり。
生きた基地。
そう呼ぶべきものになりつつありけり。
その時。
ヴィクトル。
足止めたり。
「……」
DP-27構へたり。
「どうした?」
レン問ひたり。
答へるより早く。
音。
かさ。
かさ。
天井。
動きたり。
次の瞬間。
影。
落ちたり。
「上!」
フィア叫びたり。
現れしもの。
先程の小型虫では無し。
細き身体。
長き脚。
鋭き爪。
洞窟内用に変化せし個体なり。
「もう新型かよ!」
佐藤叫びたり。
虫。
飛び掛かる。
レン。
剣で受けたり。
金属音。
「硬い!」
前より。
明らかに違ふ。
外で戦った個体より小さい。
されど。
速し。
狭き洞窟に適応した姿なり。
「来るぞ!」
複数。
壁を走る。
天井を移動。
あらゆる方向より迫りたり。
ヴィクトル。
DP-27。
発射。
銃声。
洞窟に響く。
虫。
落ちる。
されど。
以前ほど簡単では無し。
動き。
速し。
「避けてるぞ!」
佐藤言ひたり。
そう。
虫は学びたり。
真っ直ぐ向かえば撃たれる。
ならば。
動きを変える。
それだけのことなり。
ヴィクトル。
目細めたり。
「賢い」
そして。
撃ち方を変へたり。
連射では無し。
短く。
確実に。
逃げる先を読む。
虫が学ぶなら。
人もまた学ぶなり。
一匹。
落ちる。
二匹。
落ちる。
その時。
背後。
一匹抜けたり。
狙い。
後方の佐藤たち。
「まずっ」
佐藤。
ナガン構へたり。
手。
震へたり。
戦場。
慣れるものでは無し。
されど。
撃たねばならぬ時あり。
発砲。
一発。
外れたり。
二発目。
命中。
虫。
倒れたり。
「……」
佐藤。
息吐きたり。
「怖すぎるだろこれ」
当然なり。
命のやり取り。
簡単なものでは無し。
横。
貴光。
別の虫へ向け。
発砲。
命中。
「何で普通に当てるんだよ!」
「よく狙ひたり」
「理由が普通!」
状況に似合はぬ会話なり。
されど。
それこそ、この一行なり。
やがて。
最後の一匹。
エレノア。
身体強化。
踏み込み。
一撃。
倒しけり。
静寂戻りたり。
しかし。
安心は出来ず。
ポテ彦。
倒れし虫を調べたり。
「やはり……」
「どうした」
レン問ふ。
「これは完成形ではありません」
全員。
固まりたり。
「これで?」
エレノア言ひたり。
「はい」
ポテ彦。
奥を見る。
「試作品です」
その言葉。
重く響きたり。
甲殻王。
ただ強くなっているのでは無し。
作っている。
試し。
改良し。
次へ繋げる。
まるで研究者の如く。
「虫が研究開発するなよ……」
佐藤呟きたり。
その時。
洞窟奥。
低き音。
響きたり。
どくん。
どくん。
心臓の如き音。
ポテ彦。
表情変へたり。
「近いです」
「王が」
「この先にいます」
一行。
奥を見たり。
暗闇。
その先。
進化続けし甲殻の王。
再戦の時。
近付きつつありけり。




