黒き翼退き、深き洞へ向かふこと
雪空。
戦いは続きたり。
赤き星。
黒き翼。
二つの存在が、白き空を駆けておりける。
Il-2M3。
それは本来、地上を支援するための機体なり。
敵戦車。
陣地。
地上目標。
それらを破壊するため生まれし鉄の鳥。
されど今。
相手は空。
しかも。
ただの飛行生物では無し。
魔力弾を放ち。
編隊を組み。
考えて動く異世界の翼なり。
アレクセイ。
操縦桿を握り続けたり。
視界。
雪。
敵影。
そして光。
「Справа.(右だ)」
ヴィクトル叫ぶ。
アレクセイ。
反応。
機体を傾ける。
魔力弾。
横を通過。
爆発。
揺れ。
それでも飛ぶ。
敵は速し。
だが。
戦い始めた頃とは違ふ。
アレクセイもまた。
学んでいた。
「奴ら」
「攻撃前に必ず光る」
ヴィクトル言ひたり。
魔力を集める瞬間。
胸部の器官。
青白く輝く。
それが合図。
生物である以上。
動作が存在する。
「そこを狙う」
アレクセイ答へたり。
敵が進化するなら。
こちらも対応する。
それが戦いなり。
飛行型。
三匹。
接近。
左右へ展開。
挟撃。
しかし。
アレクセイ。
誘導。
わざと直進。
敵。
魔力集中。
胸部。
光る。
「今だ」
急旋回。
射線。
外れる。
そして。
ヴィクトル。
UBT旋回機関銃。
発射。
命中。
一匹。
落下。
二匹目。
魔力器官破壊。
空中で爆発。
地上。
村人。
歓声。
「やったぞ!」
しかし。
ヴィクトルは笑わず。
空を見る。
まだいる。
まだ終わらぬ。
その時。
残る飛行型。
動きを変へたり。
集まる。
そして。
同時に魔力を溜める。
「……」
アレクセイ。
目を細める。
「一斉射撃」
次の瞬間。
空。
青き光。
大量。
降り注ぐ。
狙い。
Il-2だけでは無し。
村。
「下も狙ってるぞ!」
佐藤叫ぶ。
地上。
エレノア。
前へ出る。
「フィア!」
「はい!」
二人。
魔力を合わせたり。
巨大な攻撃魔法では無し。
派手な力では無し。
守るための魔法。
障壁。
青き弾丸。
衝突。
光。
散る。
「ぐっ……!」
エレノア。
踏ん張る。
身体強化。
それで身体を支へ。
魔法障壁を維持。
攻撃ではなく防御。
されど。
今、一番必要な力なり。
「持つのか!?」
佐藤叫ぶ。
「持たせるのよ!」
エレノア答へたり。
その時。
ポテ子。
後ろで祈りたり。
「軽虎様……」
「今それじゃない!」
佐藤叫びたり。
緊張感ある中。
いつも通りでもありけり。
空。
Il-2。
敵の一斉射撃後。
一瞬の隙を見る。
魔力を撃った直後。
飛行型。
速度が落ちる。
「やはり」
アレクセイ言ひたり。
「無限ではない」
魔力。
体力。
どちらも消耗する。
生物だから。
ヴィクトル。
頷く。
「終わらせるぞ」
Il-2。
上昇。
そして。
降下。
敵群へ。
正面。
飛行型。
迎撃しようとする。
しかし。
遅い。
魔力回復中。
VYa-23。
発射。
二十三ミリ弾。
空を裂く。
一匹。
二匹。
撃破。
逃げる個体。
追わず。
村へ向かうものだけ落とす。
やがて。
黒き翼たち。
動きを止めたり。
そして。
方向転換。
山へ。
「逃げた……?」
村人呟く。
違ふ。
それは。
甲殻王と同じ。
判断。
生存のため。
撤退。
ポテ彦。
空を見上げる。
「やはり」
「完全に統率されています」
佐藤。
嫌そうな顔。
「つまり?」
「王がまだ指示しています」
沈黙。
全員。
山を見る。
洞窟。
深き穴。
そこに。
甲殻王はいる。
戦いは終わっていない。
夜。
村。
作戦会議。
集まりし者たち。
レン。
エレノア。
フィア。
佐藤。
貴光。
アレクセイ。
ヴィクトル。
そして村人。
「待っていても」
レン口を開く。
「また来る」
その通りなり。
甲殻王は進化する。
時間を与えるほど危険。
ならば。
やることは一つ。
「洞窟へ行くしかない」
空気。
重くなる。
洞窟内部。
Il-2は飛べぬ。
つまり。
最大戦力を失ふ。
だが。
アレクセイ。
静かに言ひたり。
「飛行機だけが戦う力ではない」
貴光が訳す。
ヴィクトルも頷く。
彼らは兵士。
飛行機が無ければ何も出来ぬ者では無し。
ポテ彦。
資料を広げる。
調べた甲殻。
敵の特徴。
進化速度。
「恐らく」
「あの王は今」
「次の進化をしています」
沈黙。
「次?」
佐藤問ふ。
「はい」
「対人間」
「対魔法」
「対Il-2」
「全てに対応するための進化です」
全員。
理解した。
時間は少ない。
翌朝。
洞窟攻略。
決定なり。
外は吹雪。
山の奥。
深き穴。
その底に。
進化する王。
待ち構えておりけり。




