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ある日神の寄越し給ひし異形の獣に撥ねられて失せにければ異世界へ転生仕りき、されど能力の鉄の牛車召喚も黒き神境(?)とやらも使いよう皆無なり!  作者: イグアナ
旅路再開編

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雪原にて全ての力集まりしこと

 甲殻の王。


 最後の進化。


 それは勝利の証では無かった。


 追ひ詰められた証なり。


 されど。


 追ひ詰められし獣ほど恐ろしきもの無し。


 雪原に立つ巨大なる影。


 その姿は、もはや最初とは大きく違ひたり。


 分厚き甲殻。


 空へ向く対空器官。


 巨大なる脚。


 そして。


 背より伸びし新たなる突起。


 それは翼では無し。


 攻撃器官なり。


「……」


 佐藤。


 見上げたり。


「どこの怪獣だよ」


 率直な感想なり。


 もはや虫と呼ぶには無理ありけり。


「魔王では無きなり」


 貴光言ひたり。


「それ毎回言うけど」


 佐藤。


 甲殻王を見る。


「魔王より見た目怖いぞ」


 事実なり。


 魔王は会話出来た。


 これは出来ぬ。


 ただ生きるため。


 群れを守るため。


 戦っている存在なり。


 その時。


 ポテ彦。


 甲殻王を見ながら言ひたり。


「恐らく」


「あれが最後です」


「分かるのか?」


 佐藤問ふ。


「はい」


 ポテ彦頷く。


「先ほどまでと違い、進化した後の修復速度が落ちています」


「無理矢理身体を変化させ続けた結果でしょう」


 どんな生物でも。


 限界は存在する。


 無限に強くなれるものなど無い。


 つまり。


 耐えれば勝機あり。


 しかし。


 耐えることこそ難しかりけり。


 甲殻王。


 動く。


 一歩。


 雪原揺れる。


 そして。


 対空器官。


 空へ。


 Il-2へ向けたり。


 アレクセイ。


 それを見る。


「狙っているな」


 ヴィクトル頷く。


 完全に理解している。


 最大の脅威。


 空の鉄鳥。


 ならば。


 それを先に落とす。


 単純。


 されど正しき判断なり。


「来るぞ」


 発射。


 無数の甲殻弾。


 空へ。


 アレクセイ。


 回避。


 機体を傾ける。


 しかし。


 甲殻王。


 前とは違った。


 予測。


 次の位置へ撃つ。


「!」


 衝撃。


 翼。


 命中。


 機体大きく揺れる。


 さらに。


 飛行型魔物。


 左右より接近。


 完全なる包囲。


「学びすぎだろ……!」


 地上より佐藤叫ぶ。


 最初はただの巨大虫。


 今は。


 戦術を使っている。


 空。


 ヴィクトル。


 UBT旋回機関銃。


 撃つ。


 一匹撃墜。


 しかし。


 数が多い。


 後ろ。


 横。


 上。


 次々来る。


 Il-2は戦闘機では無し。


 高速旋回戦など得意ではない。


 耐える。


 撃つ。


 それが役割なり。


 その時。


 地上。


 レン。


 叫ぶ。


「空ばかり見させるな!」


 剣を握り。


 走る。


 甲殻王へ。


 巨大なる脚。


 振り下ろされる。


 避ける。


 関節へ攻撃。


 傷。


 小さい。


 しかし。


 意味はある。


 エレノアも続く。


 身体強化。


 限界。


 雪を蹴り。


 跳ぶ。


「こっちよ!」


 拳。


 甲殻へ。


 衝撃。


 甲殻王。


 少し向きを変へる。


 空への狙い。


 ズレる。


「効いてる!」


 フィア。


 魔法発動。


 炎。


 雪原に広がる。


 倒すためでは無し。


 視界を奪うため。


 注意を引くため。


 そして。


 ミーシャ。


 咆哮。


 巨大熊。


 突進。


 甲殻王の脚へぶつかる。


 力比べ。


 勝てぬ。


 されど。


 一瞬止める。


 その一瞬。


 戦場では大きし。


 村人たちも続く。


 槍。


 斧。


 弓。


 普通の武器。


 されど。


 全員で。


 少しずつ。


 削る。


「すげぇな」


 佐藤呟きたり。


 相手は化け物。


 でも。


 誰も逃げていない。


 その時。


 後ろから声。


「佐藤様」


 ポテ彦なり。


「何?」


「あの王」


「恐らく弱点があります」


 佐藤振り向く。


「どこ?」


 ポテ彦。


 指差す。


 胸部。


 厚き甲殻の中心。


「あそこです」


「進化するためには身体全体へ指令を送る器官が必要です」


「それを守るため、最も厚くしています」


「逆に言えば」


 佐藤。


 続きに気付く。


「そこを壊せば終わる」


 ポテ彦頷く。


 しかし。


 問題。


 そこは最も硬い場所。


 今の攻撃では届かぬ。


「どうするんだよ」


 その時。


 空。


 Il-2。


 旋回。


 戻る。


 アレクセイ。


 貴光から伝えられた情報を聞く。


 弱点。


 胸部。


 厚き装甲の奥。


 彼は静かに頷いた。


「分かった」


 装甲の奥。


 弱点。


 やることは変はらぬ。


 かつての戦場と同じ。


 ただ。


 今度は。


 人を倒すためではない。


 守るため。


 アレクセイ。


 残る武装を見る。


 ヴィクトルも頷く。


「一度だけだな」


「ああ」


 失敗すれば。


 次は難し。


 甲殻王はさらに対応する。


 一撃。


 決める必要あり。


 だが。


 そのためには。


 動きを止めねばならぬ。


 地上。


 レン。


 エレノア。


 フィア。


 村人。


 ミーシャ。


 全員理解したり。


 次が最後。


 雪はさらに強く降る。


 白き世界。


 その中。


 鉄の鳥。


 最後の攻撃へ向け。


 空高く旋回したり。


 甲殻の王もまた。


 空を見上げたり。


 決着の時。


 近付きたり。

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