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ある日神の寄越し給ひし異形の獣に撥ねられて失せにければ異世界へ転生仕りき、されど能力の鉄の牛車召喚も黒き神境(?)とやらも使いよう皆無なり!  作者: イグアナ
旅路再開編

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森の異変を辿りしこと

 白き獣に導かれ、一行は泉よりさらに奥へ進みけり。


 先ほどまで緑深かりし森は、進むにつれて少しずつ姿を変へたり。


 木々そのものは変はらず立ち並べど、葉の色は薄く、地面に生える草も少なし。


 鳥の声も遠くなり、森全体が静まり返りたるやうな場所なりけり。


「確かに変ね」


 エレノア、近くの木へ触れながら言ひける。


「枯れてるわけじゃないけど、弱ってる感じがする」


 フィアも目を閉じ、周囲の魔力を感じ取りける。


「魔力の流れが乱れていますね」


「原因分かるか?」


 レン問ひたり。


「まだ何とも言えません」


 フィアは首を振りたり。


 その横ではポテ彦が土を調べておりける。


 小さき手で土を取り、じっと観察する姿は研究者そのものなり。


 ただし馬鈴薯なり。


「土の栄養自体は悪くありません」


「じゃあ植物が育たない理由は別か」


 佐藤言ひける。


「はい」


 ポテ彦頷きたり。


「水、魔力、あるいは別の原因かもしれません」


「植物詳しい奴がいると助かるな」


「ありがとうございます」


 ポテ彦は礼儀正しく頭を下げたり。


 そんな中、貴光は白き獣と話しておりける。


 普通ならば成立せぬ会話。


 されど神界にて手に入れし言語理解により、貴光にはその声の意味が分かりたり。


「昔よりこうなりしや?」


 白き獣、首を振りたり。


 低き声。


 人の言葉では無し。


 されど貴光には届きたり。


「数日前より突然とな」


 貴光、皆へ伝へたり。


「数日前?」


 レン、眉をひそめたり。


「自然現象にしては急だな」


「そうね」


 エレノアも同意したり。


 森。


 急な変化。


 何か原因がある可能性高かりけり。


 一行はさらに進みたり。


 やがて森の奥。


 小さな川へ辿り着きける。


 流れる水は澄んでおり、一見異常は無きやうに見えたり。


 されど。


「ここですね」


 フィア言ひたり。


「ここから魔力がおかしくなっています」


 川の上流。


 さらに奥。


 何かあるらし。


「行くしかないか」


 佐藤言ひたり。


 その時。


 黒牛。


 足を止めたり。


「?」


 貴光、振り返りたり。


「どうしたなり」


 黒牛は森の奥を見ておりける。


 普段。


 食べる。


 歩く。


 寝る。


 それだけの黒牛。


 されど今だけは、何かを見ているやうな様子なり。


「珍しいな」


 佐藤も気付きたり。


「あいつが草以外に興味持つとか」


 黒牛は少し歩き、森の奥へ向かひたり。


 一行は顔を見合わせ、その後を追ひける。


 しばらく進みし後。


 原因は見えたり。


 森の中央。


 巨大なる木ありける。


 島の他の木々より遥かに大きく、古き時代より存在していると思はれる大樹なり。


 しかし。


 その根元。


 奇妙なるものありたり。


「何だあれ」


 レン呟きたり。


 黒き結晶。


 大樹の根元に刺さるやうに存在しておりける。


 魔物では無し。


 植物でも無し。


 ただ静かに、周囲の力を吸ひ取るやうに存在しておりたり。


「これが原因?」


 エレノア近付きたり。


「多分ね」


 フィア答へたり。


「この結晶が周囲の魔力の流れを変えてる」


 佐藤は結晶を眺めたり。


「壊せばいいのか?」


「待て」


 レン止めたり。


「何か分からない物を壊すのは危険だ」


 当然な判断なり。


 かつてなら勢ひで進む者もおりたり。


 されど長き旅を経て、一行も少しずつ経験を積みたり。


 その時。


 貴光。


 結晶を見る。


 そして。


 近付きたり。


「おい」


 佐藤、声を掛ける。


「触るなよ」


「分かりたり」


 貴光答へたり。


 そして。


 近くの枝で突きたり。


「それもやめろ!」


 佐藤叫びたり。


 直後。


 結晶。


 淡く光りたり。


 全員、身構えたり。


 されど。


 爆発せず。


 魔物も出ず。


 ただ、小さき音を立てて割れたり。


「……」


「……」


「……」


 静寂。


「壊れたなり」


 貴光言ひたり。


「結果論だからな」


 佐藤答へたり。


 結晶が割れると同時に、森の空気は少しずつ変はり始めたり。


 弱まりし魔力の流れが戻り、風が木々を揺らしける。


 白き獣は大樹へ近付き、静かに頭を下げたり。


 どうやら、森は救はれしらし。


「結局、何だったんだろうな」


 佐藤、割れた結晶を見ながら言ひたり。


「分からん」


 レン答へたり。


 全ての謎が解けるわけでは無し。


 旅とは、時としてそのようなものなり。


 ただ一つ。


 森は元に戻り始めた。


 それだけで十分なこともありけり。


 夕暮れ。


 一行は白き獣と別れ、町への道を戻り始めたり。


 島で過ごす時間も、残り少なし。


 次なる船が出れば、また新しき場所へ向かふ。


 知らぬ土地。


 知らぬ人。


 知らぬ出来事。


 終はったはずの旅は、まだ続いておりけり。

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