新しき島へ降り立ちしこと
朝日昇りし頃、船は小さき港へ近付きけり。
昨日まで果て無く広がりし海の先には、緑多き島ありたり。
海沿ひには家々並び、港では漁師らが朝の仕事を始めておりける。
船が桟橋へ寄れば、船員らは慣れた手付きで縄を結び、積み荷を降ろし始めたり。
「着いたな」
佐藤、陸を見ながら呟きける。
「うむ」
貴光、頷きたり。
「揺れぬ地面は良きものなり」
「船酔いしてたのか?」
「否」
「じゃあ何で」
「何となくなり」
佐藤は聞くのをやめたり。
船を降りる一行。
レン。
エレノア。
フィア。
佐藤。
村上。
貴光。
黒牛。
そして軽虎。
最後に荷台よりポテ彦がころりと降りける。
「到着ですね」
眼鏡を直しながら言ひたり。
近くを歩きし漁師。
それを見たり。
「……」
ポテ彦も見返したり。
「おはようございます」
「……お、おう」
漁師は少し戸惑ひながらも返事したり。
港町ほどでは無くとも、旅人の多き島なれば珍しき者を見ることもある。
されど。
喋る馬鈴薯は珍しきものなり。
一行はまず町へ向かひける。
石造りの道。
木製の看板。
市場には魚や果物並びたり。
以前の港町とは違ひ、どこか穏やかな雰囲気の町なり。
「こういう場所、異世界って感じするな」
佐藤言ひたり。
「今更じゃない?」
エレノア笑ひたり。
「いや、今までがおかしかったんだよ」
佐藤答へける。
「異世界来て、冒険して、知らない町に来る」
「普通こういうのを先にやるんだよ」
レンは少し考へたり。
「確かにな」
魔王を倒した後に普通の旅を始める者など、多くはあるまじ。
その時。
貴光、露店の前で止まりたり。
「む」
「どうした?」
「見知らぬ食べ物なり」
そこには南国めきし果実並びたり。
赤きもの。
黄色きもの。
奇妙な形のもの。
貴光、興味深げに眺めたり。
「食べてみる?」
フィア問ひける。
「うむ」
即答なり。
数分後。
貴光、果実を手に持ち歩いておりける。
「美味なり」
「気に入ったみたいね」
エレノア言ひたり。
黒牛も近付き、匂ひを嗅ぎける。
「食ふなりか?」
貴光、果実を差し出したり。
黒牛。
一口。
食べたり。
そして再び歩き始めたり。
「気に入ったらしいなり」
「分かるのか?」
「食ひたり」
「まあそうだけど」
そんな中、ポテ彦は市場の野菜売り場を眺めておりける。
そこには島特有の作物が並びたり。
「珍しい品種ですね」
店主、振り返りたり。
「お、分かるのか?」
「はい」
「この島の土壌は水分量が多いのでしょう」
店主、少し驚きたり。
「詳しいな」
「農学部卒業ですので」
「へぇ、若いのに」
店主は感心しける。
そして数秒後。
改めてポテ彦を見る。
「……」
「……」
「馬鈴薯?」
「はい」
気付く順序が逆なり。
その後、町を見回るうち、一行は一つの掲示板を見つけたり。
冒険者向けの依頼板なり。
そこには様々な紙貼られたり。
薬草採取。
荷物運び。
魔物調査。
「懐かしいな」
レン呟きたり。
「受けるの?」
フィア問ひける。
「急ぐ旅でもないしな」
佐藤は依頼を眺めたり。
その中。
一枚の紙が目に入りける。
島北部。
古き遺跡調査。
最近、内部より奇妙なる音あり。
「遺跡か」
エレノア言ひたり。
「冒険っぽいな」
佐藤も頷きたり。
貴光も紙を見たり。
「古き建物を見に行くなりか」
「簡単に言えばそうだな」
「面白さうなり」
かくして、次なる目的決まりたり。
神界でもなく。
戦争でもなく。
世界の危機でもなく。
ただ一つの島にある、小さき謎。
一行は翌日、その遺跡へ向かふこととなりけり。




