古き記録さらに読みたりしこと
地下室には重き空気流れたり。
大型トラック神の名を呼ぶほど目覚めに近付く。
古き書物にそう記されてゐたり。
冗談にしては妙に具体的なり。
事実にしては妙に嫌なり。
誰しも何とも言へぬ顔を浮かべたり。
「……帰るか?」
佐藤、おそるおそる言ひける。
「今さら?」
エレノア呆れたり。
「いやだってさ」
佐藤、本を指差しける。
「どう見てもろくでもねえだろ」
その意見には全員同意したり。
ろくでもなささうな物を調べれば、ろくでもない結果になる。
それは冒険者の常識なり。
その折。
レン、本棚の奥にまだ数冊残されてゐることに気付きたり。
「まだあるぞ」
言ひつつ一冊取り出しける。
表紙は半ば朽ち果て、題名も読めざりけり。
されど中身は意外なほど綺麗なり。
誰かが大切に保管してゐたのであらう。
レンは頁をめくりたり。
数枚ほど読み進めし後。
「日記みたいだな」
と呟きたり。
皆その周りへ集まりける。
フィアの補助魔法により、辛うじて内容読めたり。
⸻
『本日、また信者増えたり』
『核の輝き、昨日より強し』
『喜ばしきことなり』
⸻
その次の頁。
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『奇跡起こりたり』
『商人の失せし財布戻りたり』
『民衆大いに喜びたり』
⸻
「おっ」
佐藤少し顔上げたり。
「やっぱ奇跡あったんじゃね?」
されどエレノア首振りたり。
「まだ分からないわ」
さらに頁めくりたり。
⸻
『本日も奇跡起こりたり』
『老人の腰痛軽くなりたり』
『信仰さらに増えたり』
⸻
『本日も奇跡起こりたり』
『雨降らざりしに雨降りたり』
『作物助かりたり』
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『本日も奇跡起こりたり』
『犬帰りたり』
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『本日も奇跡起こりたり』
『猫帰りたり』
⸻
『本日も奇跡起こりたり』
『卵安売りたり』
⸻
「最後ただの特売じゃねえか」
佐藤思わず突っ込みたり。
しかし読み進めるにつれ、徐々に様子変はり始めたり。
⸻
『核の輝き増し続けたり』
『奇跡も増えたり』
『皆喜びたり』
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『されど最近妙な夢見る者増えたり』
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『巨大なる鉄の神を見る夢なり』
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『皆同じ夢見ること不思議なり』
⸻
レン、頁めくる手止まりたり。
先程までの軽き空気消えたり。
「夢?」
フィア眉をひそめたり。
さらに読み進めたり。
⸻
『本日、司祭殿も夢見たり』
『巨大なる車現れたり』
『名を呼べと言ひたり』
⸻
『信者ども喜びたり』
『されど我、少し恐ろしく思ひたり』
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『奇跡は増え続けたり』
『されど夢も増え続けたり』
⸻
『核の鼓動聞こえたり』
⸻
その場、静まりたり。
鼓動。
その言葉。
全員同時に赤き結晶見たり。
結晶は相変わらず淡く明滅してゐたり。
まるで心臓の如く。
どくん。
どくん。
脈打ちたり。
「……聞こえるか?」
レン問ひたり。
エレノア耳澄ましける。
「微かに」
フィアも頷きたり。
「確かに」
佐藤も顔引きつらせたり。
「最初からこうだったか?」
「覚えてない」
誰も覚えておらざりけり。
その時なり。
貴光のみ、結晶の横に置かれたる別の物へ目を留めたり。
小さき木箱なり。
埃被りたり。
他の者ども結晶ばかり見てゐたりしが故、気付かざりけり。
「何なりこれ」
言ひつつ蓋開けたり。
「待て」
佐藤反射的に止めたり。
しかし既に開きたり。
これもまた、いつも通りなり。
箱の中には紙束入れられてたり。
古き手紙のやうなり。
貴光一枚取り出しける。
達筆すぎて読めざりけり。
「分からぬなり」
「貸せ」
佐藤受け取りたり。
しばし眺めたり。
そして。
「……あれ?」
首傾げたり。
「どうした」
レン問ひたり。
「これ」
佐藤もう一度見たり。
「大型トラック神じゃない」
全員固まりたり。
「何?」
エレノア聞き返したり。
「この手紙」
佐藤紙広げたり。
「核を発見した連中の記録だ」
そして一文読み上げたり。
⸻
『赤き核を発見せり』
『されど核の名知らず』
『我ら仮に”第一号”と呼ぶこととせり』
⸻
しん。
沈黙流れたり。
第一号。
その言葉。
皆引っ掛かりたり。
「待て」
レン言ひたり。
「第一号ってことは」
「第二号もあるな」
佐藤答へたり。
その瞬間。
全員。
嫌な予感したり。
大型トラック神だけでも面倒なり。
されど。
もし同じやうな核が他にも存在するならば。
話は大きく変はりたり。
その時。
地下室の奥。
誰も近寄らざりし暗がりより。
かたん。
小さき音響きたり。
全員一斉に振り向きたり。
しかし。
そこには何も見えず。
「……気のせいか?」
レン呟きたり。
誰も答へざりけり。
ただ。
暗闇のさらに奥。
何かが微かに動きたりしことを。
まだ誰も知らざりけり。




