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ある日神の寄越し給ひし異形の獣に撥ねられて失せにければ異世界へ転生仕りき、されど能力の鉄の牛車召喚も黒き神境(?)とやらも使いよう皆無なり!  作者: イグアナ
異世界テンプレ崩壊編

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普通の転生者、現るること

 鉄牛車様。


 ――その名、僅か一日にて村中へ広まりけり。


「おお鉄牛車様……」

「今日も神々しき……」

「聖牛様もお元気そうで……」


 黒牛。


 完全に悟りし顔しける。


 一方。


 御池貴光、供物の野菜齧りつつ頷きける。


「人気なり」


「完全に勘違いだよ」


 佐藤健一、頭抱えける。


 その時なり。


 村入口側、何やら騒がしくなりける。


「来たぞ!!」

「勇者様だ!!」

「魔竜討伐の!!」


「……勇者?」


 エレノア・シルヴァリア、嫌そうな顔しける。


「うわ、面倒そう」


 次の瞬間。


 村人達、道開けたり。


 現れしは。


 黒き外套。


 銀髪。


 整ひし顔立ち。


 背には魔剣。


 周囲には女子三人。


 いかにも。


 “普通のなろう主人公”。


「……」


 佐藤、思わず呟きける。


「うわ、テンプレだ」


 男、静かに笑み浮かべける。


「俺は桐崎レン」

「S級冒険者だ」


 村人達、歓声上げける。


「きゃー!!」

「勇者様ー!!」


 一方。


 貴光、じっと見つめける。


「……………………」


「……………………」


「女多すぎなり」


 しん。


 空気止まりける。


 レン、固まりける。


「……は?」


「側室多きなり」


「違ぇよ仲間だよ!!」


 レン、即座に叫びける。


 周囲の女子達もざわつきたり。


「側室!?」

「最低!」

「意味分かんない!」


 一方。


 貴光、怪訝そうな顔しける。


「されど距離近きなり」


「パーティメンバーだからだよ!!」


 佐藤、既に笑い堪え始めける。


「ダメだこれ……」


 その時。


 レン、ふと後方見やりける。


 鉄の牛車なり。


「……………………」


 数秒停止。


「……は?」


 レン、ゆっくり近づきける。


「……軽トラ?」


 佐藤、目見開きける。


「おっ」


 レン、完全に困惑しける。


「いや待て」

「なんで異世界に軽トラあるんだよ」


「鉄の牛車なり」


「違ぇよ軽トラだろ!!」


 レン、即座にツッコミける。


 佐藤、感動した顔しける。


「やっと話通じる奴来たぁ……」


「お前も転生者か!?」


「そうだよ!!」


 レン、急にテンション上がりける。


「うわマジか!! 久々に現代人見た!!」


「俺もだよ!!」


 二人、がしっと握手交わしける。


 一方。


 貴光、怪訝そうに見つめける。


「異界の陰陽師仲間なりか?」


「違ぇよ!!」


 レン、軽トラ周囲ぐるぐる回り始めける。


「え、マジで軽トラじゃん……」

「ス〇キ?」

「いやダ〇ハツか?」

「何これ改造車?」


 ぺたぺた触りける。


「うわガチだ……」


 その時。


 レン、ふと運転席見やりける。


「……鍵は?」


「川へ捨てたり」


「は?」


 しん。


 レン、停止しける。


「……なんで?」


「小さき鉄屑ゆゑ」


「お前何してくれてんだァァァ!!」


 村中へ叫び響きける。


 一方。


 貴光、少し不満げなり。


「されど牛にて動くなり」


「動かねぇよ!!」


「動くなり」


「時速四キロだろ!?」


 レン、頭抱え始めける。


「いや待て……」

「でもエンジン掛かれば……」


 その瞬間。


 村人、誇らしげに口開きける。


「鉄神獣様は壊れぬのです」


「は?」


「先日、ドラゴンの突撃すら防ぎました」


「は?」


「聖剣でも傷一つつきません」


「は?」


 レン。


 ゆっくり軽トラ見つめける。


「……いやそんな訳――」


 魔剣抜きける。


 ぎらり。


「おおー」


「やめなさいよ!?」


 エレノア、慌てて止めんとしける。


 されど。


 レン、既に剣振り下ろしける。


「はぁぁっ!!」


 ごぉん。


「……………………」


 魔剣、真っ二つに折れける。


「……………………」


「……………………」


 レン。


 折れた剣見つめ。


 軽トラ見つめ。


 そして。


 静かに膝つきける。


「……俺のSS級魔剣が」

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