最後の九人、温泉旅行へ行くこと
2027年3月24日。
⸻
世界人口。
⸻
9人。
⸻
今日も変化なし。
⸻
人類。
⸻
存続。
⸻
奇跡である。
⸻
一方。
⸻
最後の拠点。
⸻
朝。
⸻
元漁師。
⸻
地図を見ていた。
⸻
「おい」
⸻
「何だ」
⸻
佐藤。
⸻
振り向く。
⸻
「温泉あるぞ」
⸻
しん。
⸻
全員。
⸻
固まる。
⸻
「温泉?」
⸻
「温泉だ」
⸻
「マジ?」
⸻
「マジだ」
⸻
人類最後の温泉旅行。
⸻
開催決定。
⸻
一方。
⸻
神界。
⸻
「反応確認!」
⸻
「どこだ!?」
⸻
「消えました!」
⸻
「またかァァァ!!」
⸻
観測神。
⸻
机を叩く。
⸻
最近ずっとこれだった。
⸻
一方。
⸻
地球。
⸻
ワゴン車。
⸻
出発。
⸻
乗員。
⸻
9人。
⸻
全人類。
⸻
全員乗車。
⸻
「事故ったら終わるな」
⸻
高校生。
⸻
呟く。
⸻
「確かに」
⸻
全員納得。
⸻
終末世界で一番危険なのは。
⸻
交通事故だった。
⸻
その時。
⸻
道路脇。
⸻
軽トラ。
⸻
いた。
⸻
「おはよう」
⸻
佐藤。
⸻
挨拶。
⸻
軽トラ。
⸻
無反応。
⸻
「最近あいつら静かだな」
⸻
「逆に怖い」
⸻
元自衛官。
⸻
頷く。
⸻
二時間後。
⸻
山奥。
⸻
到着。
⸻
温泉旅館。
⸻
無人。
⸻
しかし。
⸻
建物。
⸻
無傷。
⸻
温泉。
⸻
湧いている。
⸻
「勝ったな」
⸻
元教師。
⸻
言う。
⸻
「何に?」
⸻
「知らん」
⸻
誰も知らなかった。
⸻
その後。
⸻
男湯。
⸻
佐藤。
⸻
元自衛官。
⸻
元教師。
⸻
漁師。
⸻
高校生。
⸻
浸かる。
⸻
「極楽だな」
⸻
「終末世界とは思えん」
⸻
「去年の俺に言っても信じない」
⸻
全員同意。
⸻
一方。
⸻
女湯。
⸻
主婦。
⸻
医者。
⸻
静かに浸かる。
⸻
「平和ね」
⸻
「平和ですね」
⸻
世界は平和ではない。
⸻
だが。
⸻
ここだけ平和だった。
⸻
その頃。
⸻
元研究員。
⸻
ロビー。
⸻
旅館の機械を漁る。
⸻
「何してるんだ」
⸻
元配信者。
⸻
聞く。
⸻
「仕事」
⸻
「人類9人なのに?」
⸻
「人類9人だからだ」
⸻
一理あった。
⸻
その時。
⸻
旅館の古い監視モニター。
⸻
突然。
⸻
点灯。
⸻
バチッ。
⸻
「ん?」
⸻
画面。
⸻
映る。
⸻
駐車場。
⸻
しん。
⸻
「……」
⸻
「……」
⸻
軽トラ。
⸻
増えていた。
⸻
一台。
⸻
二台。
⸻
三台。
⸻
四台。
⸻
「増えてる」
⸻
「増えてるな」
⸻
しかし。
⸻
動かない。
⸻
ただ停車している。
⸻
まるで。
⸻
宿泊客みたいに。
⸻
「何なんだよ」
⸻
元配信者。
⸻
笑う。
⸻
一方。
⸻
神界。
⸻
新人神。
⸻
「質問です」
⸻
「何だ」
⸻
「最後の9人って」
⸻
「うむ」
⸻
「何でこんな見つからないんですか?」
⸻
しん。
⸻
会議室。
⸻
静まる。
⸻
そして。
⸻
ベテラン観測神。
⸻
遠い目をして言う。
⸻
「俺も知りたい」
⸻
全員納得。
⸻
一方。
⸻
温泉旅館。
⸻
夜。
⸻
宴会場。
⸻
缶詰。
⸻
ポテチ。
⸻
ジュース。
⸻
並ぶ。
⸻
「乾杯」
⸻
「乾杯」
⸻
人類最後の宴会。
⸻
だが。
⸻
誰も知らない。
⸻
旅館の外。
⸻
軽トラ。
⸻
十五台。
⸻
二十台。
⸻
三十台。
⸻
少しずつ。
⸻
増えていることを。
⸻
まだ。
⸻
誰も知らなかった。




