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鬼の番  作者: はなび
7/8

あの日と今の雨

明星学院には驚くべきことに職員寮が存在する。

しかも独身向けでありながら家族も住めるような

広い設備に加えて学院の創立に合わせて建てられたもののため比較的新しい。

初めは自分で家を探すことを考えていたが教職員は職員寮に住むことが原則らしく

私も職員寮に住むことを余儀なくされた。

けれど今にして思えば正解だった。

家賃は安く済ませられるし、何よりも部屋が広い。

強いて言えば1人暮らしには少し持て余してしまうことが欠点だが

それも贅沢な悩みだ。


「失敗したな。今日に限って冷蔵庫に何もないなんて。」


退勤後、夕食の買い出しのためにスーパーへと歩いていた。

今日に限って遅くまで残業してしまったせいで外は人気がない。

しかも昼から降り出した雨は土砂降りに代わってしまっていて視界も悪い。

こんな日は家から出たくなかったが、身体が切実に空腹を訴えていた。

パシャパシャと雨水で濡れた歩道を傘をさして歩く。


(大通りを通ると遠回りになる・・。今日は近道しよう。)


普段であれば大通りを歩くが今日は一刻も早く帰りたい気持ちが勝っている。

こうして土砂降りの中を歩いていると嫌でも過去の事件を思い出す。

あの事件は私にとって夢を追いかけるきっかけになったものだが同時に大事な友人を失ったものでもある。長い時間をかけて擦り切れた想いも雨の降る夜道を歩けば自然と思い起こされる。


静かな夜道に雨音と自分の歩く音が響いている。

しばらく歩いているとふと雨音に混じって違う音がすることに気が付いた。


パシャ。パシャ。


規則的な音が聞こえる。

まるで自分以外の誰かが歩いているような。


(この時間でも人が歩いてるのは変じゃない。)


そう思って気にしないように歩き続けた。


パシャ、パシャ。


音は相変わらず聞こえる。

けれどふと気が付いた。


(・・・音が近づいてる?)


気にしないふりをしていても不安が消えない。


パシャ。


その音は近くで聞こえた気がした。

・・・まるですぐ後ろにいるかのように。


嫌な予感がしてそっと振り返った。


けれど予想に反してそこには誰もいなかった。


(やっぱり気のせい。・・・少し神経質になってるのかな。)


ホッとした。

けれどそう思ったとき。

バシャッと大きな音がした。

まるで何か大きなものを水たまりに落としたかのような音だ。

とっさに音のした先を振り返る。

暗くてよく見えない。

けれど目を凝らすとようやくその異様な光景を理解することができた。


かすかな街頭の明かりに照らされた地面に

真っ赤な水たまりに沈むようにして人が倒れている。

そしてその傍らにたつ、真っ黒な服の人物。

驚いて声も出ないまま立ち尽くした私と目が合った。

その人物はニヤリと歪んだ口元で確かにこう言った。



『やっと見つけた。』


それを最後に私の意識は落ちていった。

読んでいただきありがとうございます。

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