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鬼の番  作者: はなび
5/11

幼馴染

「そこの方。少しよろしいかしら。」


呼び止められたのは学院の敷地を歩いているときのことだった。


「はい。何でしょう?」


振り返って思わず目を奪われた。

ゆるくウェーブのかかった鮮やかな赤茶色の髪と瞳。

春の陽気のようなふわりとした印象なのに

意志の強そうな瞳がきりっとした理知的な印象を受ける。

身分の高い人なのだろうか

彼女の後ろには執事が控えている。


「この学院に勤めている

久世朝陽という方を探しているのですけれど

どちらにいらっしゃるかしら?」


「えっと・・久世は私です。」


生徒の家族だろうか、と思いながら

躊躇いがちに名乗り出た。


「まぁ!あなたが?」


目的の人物が私であるとわかると

女性は嬉しそうに微笑み私の手をとった。


「ずっとお会いしてみたかったのです。

とても優秀なカウンセラーだとか。

まさかこんなに可愛らしい人だったなんて!」


「え、えっと・・。」


突然の出来事にどう答えたらいいか

わからずされるがままになってしまう。

けれどそんな私の様子を気にすることなく

彼女は話し続ける。



「よろしければ今度うちにいらしてくださいな。

美味しいお茶をお出し」


「真綿っ!!」



女性の声を遮るような怒声が響いた。

驚いて声のした方を見ると

こちらに向かって走ってくる司樹の姿が見えた。


「あらあら。もう騎士(ナイト)がいらしたのね。」


それまでのテンションはどこにいったのか。

興醒めしたように低く呟くと私の手を離した。



「真綿っ!お前がどうしてここにいる?」

 

「あら。ごきげんよう、司樹。

どうして、だなんて心外ね。

貴方から依頼された用を

わざわざ伝えに来たというのに。」


「それならわざわざお前が来なくても

良かったはずだが?」


「親切心を無下にするなんて

よほど良い教育を受けていらっしゃるのね。」


「あの‥貴方は一体?」


言い争いが始まりそうな2人に取り残されないようにと声をかける。

すると彼女は赤茶色の瞳を細めて微笑んだ。


「私ったらご挨拶がまだでしたね。

申し遅れました。

私は花山院 真綿(かさのいん まわた)と申します。司樹とは幼馴染ですの。」


「私は久世朝陽です。初めまして。」


「ふふふ。可愛い方ね。

司樹に愛想を尽かしたら」


「余計なこと言うな。」



幼馴染の気安い関係なのだろう。

学校生活ではこれほど司樹が砕けた様子で

誰かと接することは見たことがない。


(幼馴染だけあって2人は仲が良いのね。)


少し驚きながらも学院以外でも

気を許す相手を作れていることに少しほっとした。

真綿は隣に並んでいる司樹と私を交互に見ると

にこりと笑うと突然司樹の腕を取った。


「朝陽さん。

司樹は学院ではどう過ごしているのかしら。

彼は引っ込み思案だから、私心配で・・。」


「何だ急に。触るな。」


彼女の行動に驚いた様子の司樹が真綿の腕を乱暴に払いのける。


「まぁ、痛い。

怪我をしたらどうするのです。」


「これぐらいで傷がつくような

やわな身体じゃないと思うが?」


「照れなくても良いではないの。幼い頃は婚約の話もあった私とあなたの仲なのですから。」


「え?」

「は?」


婚約、という言葉に驚きつつも鬼である

司樹との婚約の話があったということは

彼女は人間なのだろうか。

鬼の寿命は長いためお互いの利益のために

一時的に番以外の人間を伴侶にする鬼もいる。

身分の高い鬼と人間の間での政略結婚だ。


「おま・・・・真綿。」


先ほどよりも低い声の司樹が両手で真綿の肩を掴む。

私には背を向けていてその表情をみることはできないがとても穏やかな雰囲気ではない。

言ってはいけないことだったのだろうか。


「まぁ、熱烈ですこと。人前ですよ?」


照れたように真綿はさっと取り出した扇で顔を隠す。


「ここでは何ですから、場所を変えましょうか。

あなたに伝えることもありますから。」


「・・・・・。」


「朝陽さん。

申し訳ありませんが司樹をお借りしますね。

またお会いできるのを楽しみにしております。」


丁寧にお辞儀をすると再び司樹に腕を絡め

彼を引きずるようにして歩き出した。

手を振って見送ろうとすると

引きずられていた司樹が真綿の腕を振り払い

こちらへ走ってきた。


「放課後、会いに行くから待っててほしい。」


「え、えぇ。わかったわ。」


茫然とする私に彼は苦い顔をしてそれだけ言うと

再び真綿のもとへと走っていった。



放課後、約束通りにカウンセリングルームに来た司樹はどういうわけかいつも異常に疲れていた。

読んでいただきありがとうございます。

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