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鬼の番  作者: はなび
3/8

学園

この明星学院(みょうじょうがくいん)はまもなく創立6周年を迎えようとしている。

設立されて間もないのは

鬼と人間の社会が関係している。

鬼にはこの国で大きな権力をもつ

4つの家柄が存在する。

東西南北を治めるその家はそれぞれ東家

西家、南家、北家と呼ばれる一族を束ねる

4人の当主がいる。

ここ東部に位置する東家の当主の名は青水(あおみ) 稀龍(きりゅう)

彼の意向によってこの学園は設立された。

鬼と人間の種族間の壁があるなかで当時、それは驚くべき英断だった。


「私、鬼の番になりたいのに。どうすれば選ばれるの?」


今日の相談者は2年の女子生徒だ。

もうすぐ3年生になるという今の時期に

悩みを抱えている子は多い。

特に自分の将来についての悩みだ。


「南家の当主様みたいに素敵な出会いがあるって

期待して入学してきたのに。

はぁ・・・新入生にいい出会いがあるかな。」


この学院が世間から認められるようになったのはひとえに

南家当主である雀ヶすずがの 真朱まそお

彼女と番の出会いによるものが大きい。

この学園の1期生として入学したのが

他でもない南家当主だった。

通常、鬼の番である人間は自分の相手を

認知することができない。

そのため鬼から自身の番へと

思いを伝えることが主流だ。

しかし南家当主の場合番から鬼へと

入学早々プロポーズをし

鬼がそれを受けたという逸話がある。

私もその時は大学にいたため

事の真偽は定かではないが

番も一目惚れだったという

ロマンチックな話となっている。

それだけでなく、少数とはいえこの学院内で鬼が番を見つけることもある。


そもそも鬼の番になることは

人間にとって悪いものでもない。

鬼は番を何よりも大事にし

常に自分の傍におきたがるらしい。

そのため、番となった人間は鬼に

扶養されることがほとんどだ。

いわば遊んで暮らせる生活を約束されるようなものだ。


しかし現実はそんなに甘くない。

番を夢見たとしてもなりたくてなれるものではないし

容姿の良い鬼に恋をしてもすげなく振られてしまう。

もしくは恋した相手に番ができてしまう場合もある。

番は鬼の意志で決められるものではないからだ。


「あなたは将来の夢はあるの?」


「私?私は鬼の番になりたい!」


「ふふ。それは入学してからできた夢でしょう?

それより前になりたかったものがあったんじゃないの?」


「うーん・・・強いて言えば

人のためになるような仕事がしたいって思ってる。」


「それなら、まずその夢を追いかけるのがいいんじゃないかしら。

鬼の番になっても、ならなくてもあなたが目指すものは変わりないでしょう?」


「そうだね。・・・・うん。そうかも!

ただ待ってるだけなんてもったいないもんね。

ねぇ、先生はどうしてカウンセラーになろうと思ったの?」


興味深々な様子で私の顔をのぞき込んでくる女子生徒の

可愛らしい仕草に微笑む。


「言葉を介して思いを伝えあうことで

人間と鬼の種族間の壁をなくしたいと思ったの。」


「?それってもう叶っているんじゃないの?」


「ふふ、あなたがそう言ってくれているなら半分は叶っているわね。

私が高校生のころはまだ身分の低い鬼に対する風当たりが強かったの。

差別されていた鬼の友人が人間の友人のように心穏やかに過ごせることを願ったのよ。」


「ふーん。そうなんだ。じゃあきっと先生の友達も幸せなんじゃない?

少なくともこの東部では鬼の差別なんて見かけないもん。」


「・・・そうだと嬉しい。あ、雨が降って来たのね。」


通り雨だろうか、いつのまにか窓の外は分厚い雲に覆われて

ぽつぽつと大きな雨粒が降ってきていた。


「いけない!今日は早く帰らないといけないんだった。

先生さようなら!」


「気を付けて帰るのよ。」


女子生徒はあわただしくカバンを取ると私の返事も待たずに走り去っていく。

その姿を見送るとざぁっと一気に雨脚が強くなった。

雨雲は周囲の視界を悪くするほど分厚く

風も吹いてきたのだろう。雨粒が激しく窓を叩いている。



あの日もこんな風に雨が降っていた。

私の友人である鬼が亡くなった、あの日も。

読んでいただきありがとうございます。

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