セロ衛士、荒野を進む(後編)
取り敢えず、ヤツの進路上から離れようと、アチコチ移動してみた。
でもその度に怪異キャベツが慌ただしく叫び、ワタシの方に進路を変えてくる。
キャベツの顔がコチラを見てニヤリと笑った気がした。
…ナニアイツ、超ムカつく。
唇を噛み締め、悔しくて涙が滲んだ。
ワタシに遠距離攻撃の手段がないのを見透かされている…コンチクショーめ!
ああ…せっかくギャル先輩がワタシを信じて、親友の少尉さんの助けに、ワタシを選んてくれたというのに…ああ、それなのにそれなのに人知れず荒野で怪異の養分となって朽ち果ててしまうの?
酷い、可哀想すぎる、花の乙女が、こんな場所でひと知れず朽ち果てようとは!
再三、遠距離攻撃の習得の有用性を、直上の小言ばかりいう先輩から助言されていたにもかかわらず馬鹿にして修練をサボっていた報いがコレですかぁ?
でも、今更後悔しても、もう遅い。
だいたいあの助言くれたときの、あの先輩のしたり顔が悪い。アレでムカついてヤル気が失せたのだ。
諦めずに、もうちょっとワタシを説得しろよ。
根気も覇気もない腑抜けた小太り気味の先輩の顔が思い浮かぶ。
あの人、いつもオドオド人の顔色ばかり窺っている癖に、新人のワタシには強気で先輩風を吹かしてアレコレ口出してきた。
ストリートチルドレンだったら真っ先に淘汰されて消えてしまうタイプだよ。
何故厳しい衛士隊で生き残っているのか不思議。
もしかして以外とシブトイ?
そう言えば、しばらく前から留置場に派遣されて姿を見てないな。
…
勘違いしないでよね。
心配なんかしていないヨ。
ただ、一抹の寂しさを感じたのは確かだ。
きっと、そんな情け無い先輩でも、ギャル先輩に憧れている衛士隊の仲間だから。
…
それからワタシは生きたい一心でアチコチ駆けずり回り逃げ回った。
でもどんなに移動しても、巨大な怪異はその都度進路経路を修正して来た。
そしてとうとうアタシは息を切らせて膝を地面に着いた。
…苦しい。汗が滴り落ちた。
見渡せば、辺りは一面の荒野で、隠れる場所も防ぐ場所も何もない。
この荒野には、何もないのだ。
普段深く考えないワタシでも、この先の予想はついた。
アハハ…コレってワタシの最期に相応しいのかな?
まだ何もなし得ていないよ、ワタシ!
初めての冒険でコレで終わりとは、なんたる理不尽!
…荒く呼吸をつきながら、コチラにワサワサと根っこを走らせて近づいて来る巨大な怪異を睨む。
でも…思えば、小さな時から世界は理不尽だったな。
ワタシの最初の記憶は、独りぼっちでお腹を空かせて、道路にうずくまっている自分自身。
とにかく寒くてひもじくて震えていた。
だから、ワタシは今でも寒いのは苦手。
でもワタシが小さい頃は、ワタシと似たような子供はアカハネには沢山いた…珍しくもない。
生き残れない弱っちいグズから倒れて、路地裏で二度動かない姿となっているのを何回も見かけた。
あの頃の仲間は、もう…誰もいない。
ハー、殺伐とした理不尽な社会を、せっかく生き残って、ようやく成人した結果がコレですか?ヤレヤレですよ。
泣きたくもなるが、泣いても事態は変わらない。
それでも気がすまないワタシは神様に散々悪態をついた末に…最終的に心がスンとなった。
助けはない…一人でなんとかするしかない。




