セロ衛士、荒野を進む(中編)
マジかヨ….?!
信じられない光景に、思わず口がアングリと開いた。
… … …
無人の荒野に化け物の笑い声の波動が耳朶を打ったことで、ハッとした。
いけない!先ずは観察デスです!
反撃の狼煙は、事実を冷たいほど冷静に正確に掴むところから始まる。それからコンチクショーと過去の腹立つことを思い出して、熱い思いで攻略の先鞭を着けるべし!…とギャル先輩が言っていた。
えっと、つまりー、着手の早さが勝負の明暗を分けるとも言っていた。
そうすると先輩との幾度の捕物、突攻、反撃の経験は無駄では無かったなーと思う。
度胸だけは付いたシ。
お陰で怪異遭遇の危機でも、ワタシの心は比較的、冷静デス。
…ドキドキ
よくよく観ると…茶色の芋に芽が出て緑色の葉を繁らせて、その葉の辺りが発光している。
その下の芋の表面に浮かぶ多数の顔が笑う度に、蔦葉がワサワサと揺れている…アウッ…気色悪!
背筋に嫌悪感が、走った。
すると…あのヤドカリのように走っている脚は、芋の根っこデスか?!
怪異に遭遇した驚きに、唐突に、昔、習い覚えた記憶が甦った。
怪異ジャガイモ
超古代時代末期に、社会構造の概念を自己都合で歪曲させ、暴利を貪った多数の守銭奴の腐れた魂が歪な概念と癒着した姿だと言われている…諸説あり。
その特徴は一つの町サイズの巨大さであり、泣き笑いのようなサイレンを鳴らして、エネルギーが尽きぬ限り荒野を永劫に彷徨うという。
礎となった概念は、歪に偏った崩壊寸前の機能不全の社会経済圏を模している。荒野を旅する人々や動物が不幸にも進路上に遭遇した場合、蔓に巻き付けられたり、あの脚に串刺しにされると、生かさず殺さず怪異に取り込まれ、働きて生活困窮する夢を見ながら一生涯養分を吸い上げられてしまう。
その巨大さ故に退治には軍団規模での対処が必要であり、ただ目立った強力な直接攻撃手段はなく、城壁を越えることはない事から、事実上放置されている。
衛士に入り立ての頃、先輩から無理やり脳に詰め込まれた怪異に関しての知識…あの時は、こんな知識何の役に立つんだヨー!とか苦々しく思ったが…
ああ…まあ、今回役に立ったネ。
お陰で、怪物の正体が分かったヨ。
でも正直言って感謝するより、こんな情報役に立たない人生経験をワタシは歩みたいヨ。
…トホホ。
近づいて来ているジャガイモを忌々しく思いながら見上げる。
…ドヒャア!
ワタシの視力は5.0ある。注目して、ジャガイモの表面をよく見たら、蠢く9割以上の人面は苦しそうに鳴いている。
狂ったように楽しそうに笑っているのは上部の、ごくほんの一部だけなのが、分かった。
ああ…あの得意げで緩い顔を観てると、何故だか超ムカつくわー。
何だか燃やして、フライドポテトにしてやりたくなる。食べたら食当たりしそうだけど。
しかし….なんて醜く哀れな生き物ダヨ。
コレは、現実に存在しててはいけない不幸を呼ぶ生き物だと、直感でわかる。
…でもコイツに個人での対処は、不可能ナノダ。
退治してやりたいが、ワタシ一人では断念するしかない。
ならば、養分にされないよう進路経路を避けるしかないゾと、ワタシは、進路を避けた。
万が一取り込まれたらと思うとゾッとする。
ところが、怪異も進路を修正して、ワタシの方に又も向かって来る。
アレレ?
このままでは、ワタシにとって嬉しくない未来が訪れる気がするヨ。
あー、超マズイっす。
対処法を…頭を絞って思い出そうする。
腕を組んで頭脳を振り絞った。
えーと、なんだっけ?
(…煽動者を滅せよ!!)
格好つけてポーズを付けながら、ドヤ顔で言うギャル先輩の姿が閃いた。
現場では、ギャル先輩が、いつでも先頭で突っ込んでる。一番にぶっ飛ばしている奴は、声をあげて指示出ししてる奴だった。
表で指揮してる奴をぶっ飛ばし、裏で煽動、誘導してる奴を直感で見つけ出し間髪入れずに、意識を刈り取る。
煽動…指揮…怪異を見詰める。
鳴いているジャガイモの下9割は違うと思う。
しかし、笑うジャガイモの上の1割は、いやらしくニヤツイてて何も考えてなさそうなのだ。
ならば、葉っぱのあたり…緑色に光っているあたりに…何かいた!いつくもの緑色の球が浮いていて、顔がコチラを見て向いて、喋っている。
魔力を耳に集中させ耳をそば立てみれば、微かに「キャベツよ、これはキャベツなのー!逆らうモノは悪、我らが正義!キャベツは許さないわ、私より若くキレイな存在は許さないわー、キー!…」などと、騒いでいるのが風に乗って聴こえてきた。
言動、姿形から判断すると…あれって、怪異キャベツ?
偶に街外で、夜間、ボゥッと緑色に光って中を浮いている姿を遠目に見たことがあるヨ。
もしかして、アレが、ジャガイモと共生して進路を誘導している?!




