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MITSURUGI  作者: 島田祥介
第拾幕【解】
45/57

肆ノ其

 金色の鎧武者は、周囲を一瞥すると両手甲のブレードを力強く展開させた。

《ツクヨミタル者ヨ、汝ハ我ニ仇ナス者ナリヤ?》

 スサノオにとって初めて会うツクヨミは、彼にとって敵とも味方とも言い難い存在といえた。それだからか、

「大丈夫、少なくとも私は貴方の敵じゃない」

と言い放つ茜の一言に《ソノ言葉、信ジルトシヨウ》と返す迄しばらくの沈黙があった。

《ソコナ、アマツヒコネタル者、我ニ仇ナス者ナリヤ?》

 今度は『天人』に向かって問いを投げかける。

「当たり前だろ、アマツヒコネはこっちの手下なんだからよ」

 加賀の言葉にスサノオは無言で返すと、『天人』の前でブレードを振り払った。

 寸での所でアマツヒコネはかわすと、今度は反撃と言わんばかりに水流をスサノオに向けて放出させる。しかし、それは縦一文字に振り上げたブレードによっていとも簡単に両断されてしまった。 

《ツクヨミタル者ヨ、アマテラスハ汝ニ預ケタ。我ハコノ者ヲ屠ルトスル》

 その言葉の通り、スサノオはアマテラスの存在を無視して一気にアマツヒコネへと斬り込んだ。

 アマツヒコネは宙返りで切っ先をかわし距離を取る。だが、次の瞬間には地面を蹴ったスサノオが距離を縮めて迫り挑む。

 敢えてブレードを仕舞いいくつもの拳撃を叩き込み、その反動で宙に浮いたアマツヒコネは更なる拳撃を浴びる。勢い余って地面に倒れ込んだ『天人』の下へ、今度はブレードを展開させた拳撃が何度もその体を刺し貫いく。一方的な残虐行為という言葉そのものであった。

「チッ、あれじゃアマツヒコネももう使い物になりゃしねぇな」

 スサノオ達の戦いを眺めた加賀は、溜息交じりにボソッと呟く。そして、今度は茜を見据えると、

「だったら、俺はお前を叩き潰すしかないか」

 言い終わるか終わらないかの内に右掌底の光弾がツクヨミを狙う。それは瞬時に張った磁場に遮られ、無傷の茜はそのまま勾玉連珠をアマテラスに向けて振るった。

 加賀は光弾でそれを弾き返すと、今度は連続した光弾を茜に向けて容赦なく放つ。それに対して、茜も宝玉磁場を二つ展開させ防御幅を増やして抵抗した。その隙を突いて加賀は茜の背後に回って攻撃を繰り広げようとするが、今度は残りの念動宝玉がそれを遮った。

「随分やる様になったな、お前も」

「いつ迄も貴方が知ってる弱い私だとは思わないで」

 茜と加賀の一進一退の攻防戦が続く。

 加賀が攻撃を繰り出そうとすれば茜が防ぎ、茜が反撃に出ようとすれば加賀がかわす。そのどれもが確実な戦闘ではあったが、ここにきて決定的な違いが生まれてしまう。それは、戦闘慣れしている加賀と、普段は支援に回っていた茜とのスタイルの差──集中力の差異だった。

 念動宝玉のコントロールに集中していた茜は、いつしか磁場を張っていた宝玉に対する集中力が疎かになってしまっていた。そこを目ざとく見付けた加賀は、隙を突いて肩部砲塔(イレディミラー)を不安定な磁場に叩き込んだ。

「──あっ!」

 威力のある熱線は磁場を展開させていた宝玉を弾き飛ばし、形勢は一気に加賀のものとなってしまう。

「ようやく、お前の弱点が浮き彫りになったな」

 それでも念動磁場はもうひとつある。それに集中すれば、恐らくイレディミラーだって防ぎきれる筈だ。そう思った茜に対し、加賀は宙に浮くと彼女に向かって、

「お前も隠し玉を披露したんだし、俺も隠し玉を見せてやるよ」

 そう言うと、イレディミラーに光を集めている前で両掌底の光弾を一つの球体へと集中させた。それは徐々に大きくなっていき、やがてバスケットボール大の光の球になるとそこにイレディミラーの熱線を照射した。

「残念だったけど…死ねよ」

 加賀が手を離すと同時に、そのエネルギー光から更に一閃の熱線が茜目指して放出された。その熱量からして、明らかに宝玉磁場では防ぎきれない。それ所か、ツクヨミの装甲すら危うい程のものと見えた。

「──!」

 何とかして防いでみたいけど、今の私にはこれは防ぎ切れないだろう。このまま、私は志半ばに散ってしまうのか──

 しかし、茜に熱線が直撃する前にそれは一点を皮切りに分断されニ方向へと分かれていった。

「…何っ!?」

 加賀が目を凝らして熱線の先を見ると、そこにはスサノオがブレードを突き立て熱線を分断していた。

「て…テメェ…」

「草な…スサノオ? 何で?」

《ツクヨミナル者ガ我ノ敵ナラザル者ナラバ助太刀スルハ必須》

 スサノオが一気に両断する事で、熱線は完全に分断され茜達の両脇で爆散した。

《アマツヒコネハ亡骸ト化シタ。後ハアマテラス、貴様ダケナリ》

「こないだの戦いの続きってか、ごめん(こうむ)るね」 

 前回、人知れずアマテラスとスサノオの戦いがあった時になにか思う所があったのだろうか、加賀はその場に歪界域を発生させると自らの身を沈め消えていった。

 残された茜とスサノオに、安堵の時間が流れた様に見えた。しかし、茜にとってもう一つ謎が残されていた。

「ねぇ、スサノオ。草薙君はどうなっているの?」

 以前、コインデックで神化を見た時スサノオは正義を器と見立てて「眠っている」と言っていた。今度もそうであるとはいえ、何故彼が意識を失った状態でスサノオが起き上がるのかが疑問でならなかった。

《我ガ器ハ眠リニツイテイル。身体ニ影響ハナイ》

「じゃぁ、何で草薙君は意識を失ったままなの? それじゃ神化した意味がないでしょ」

《神化ノ意味トハ何ゾ?》

 そう返されて茜は言葉を詰まらせてしまう。

 確かに、スサノオの状態が神化のひとつであれば別段正義の意思があろうがなかろうが関係はない。

 だからと言って、このまま常にスサノオ自体の神化を待つには状況的に問題があるのも事実だ。

「草薙君…器が起きたままの状態で貴方が神化するのは無理なの?」

《器ガ求ム(チカラ)ガマダ足リナイ以上、我ガ自ラ戦ウ以外他ニナイ》

 あれだけ草薙君が力の要求をしておいて、まだ足りないと言うのか。一体、スサノオ自身は何処迄力を渇望するのだろう。

《…フム、ソロソロ器ガ起キル。我ハココ迄トシヨウ》

 そういうと、スサノオは神化を自ら解いてミツルギの姿へと戻った。それは、正義自身に戻ったといっても過言ではなく、ミツルギはそのまま地面へと倒れてしまう。

「草薙君!」

「う…あ…痛ててて…」

 静かに正義の声が聞こえる。それは、完全にスサノオの呪縛から逃れられたという証拠だった。

「草薙君、大丈夫?」

「うぅ…って、戦闘はどうなったんですか!? 『天人』は? アマテラスは!?」

 互いにGMを解除させた状態で茜が今迄起こった事を説明すると、正義は苦虫を噛み潰す表情を見せながら地面を叩いた。

「クソッ、俺だって神化に成功さえすれば…」

「取り合えず、一旦本部に戻ってこれからの事を考えましょう」

 ふらふらと立ち上がり悔しそうにする正義を見て、茜はついこの間迄の自分を見ている様で胸が苦しくなっていた。

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