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MITSURUGI  作者: 島田祥介
第玖幕【変】
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漆ノ其

 それは、まさに鎧武者だった。

 ミツルギの外装は鎧兜の様な和の形状に変化し、瞳となるバイザーの奥底は深紅の煌めきを放っている。その姿は、鎧を纏った鬼とも言える様ないで立ちだった。

「…神化しやがったか…」

 誰もが言葉を失う中、加賀だけが独り静かに呟いた。だが、

《我、スサノオヲ語ル者ナリ》

 それに反応したのは正義ではなかった。

「ほぉ、このアマテラスに対して貴様はスサノオときやがったか」

 伊邪那岐命(イザナミノミコト)が産み出した三神の内、天照大神の弟にあたる素戔嗚尊(スサノオノミコト)

 海神、嵐神、農耕神であり、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)から取り出した天叢雲剣あまのむらくものつるぎを天照大神に献上した荒神である。

 そのスサノオが、正義ではなく自らの言葉を用いて加賀に──アマテラスに語りかけてきた。

「ちょっと待って、草薙君はどうなったの?」

 スサノオを名乗られ、茜は正義の身を案じた。しかし、スサノオは静かに《器ハ眠リニツイテイル》とだけ返した。

「ほう、だったら容赦なくテメェを叩き潰せる訳だ」

 加賀は密かにほくそ笑むと、スサノオに向かって光弾を撃ち込んだ。刹那、スサノオは自分の目の前に歪界域を発生させると光弾を吸収し打ち消してしまった。しかも、それはアマテラスの光弾に限らず、いつの間にか五柱神の足元にも歪界域を発生させ五体全てを彼方へと消し去ってしまったのだ。

「何!?」

《我、(チカラ)有ル者トノ戦ヲ楽シミタク在リ。他ニ邪魔サセル訳ニイカズ》

 そう言うと、今度は自分とアマテラスとを包み込む程の巨大な歪界域を創り出した。

「だったら…!」

 加賀は歪界域を発生させると、その場にオモイカネを送り出した。

「オモイカネ、奴等から鍵を奪い取れ! その場にいる奴等の生死は問わない!」

 その言葉を最後にスサノオとアマテラスはその場から姿を消し、同時に歪界域も消失した。

「ど、どういう事だ?」

 突然の流れについていけなくなった千葉は思わず溢してしまう。

「でも、私達は残された仕事をこなさなきゃいけないみたいですね」

 しかし、目の前にいるオモイカネを見ながら、茜は臨戦態勢を崩さずにいた。いくら加賀がいなくなったとはいっても、厄介者が残された以上油断する訳にはいかない。

 オモイカネの顎が動き、口が大きく開かれる。それが精神攻撃の動きだと瞬時に察した茜は、テレジェムを二基程飛ばすとその攻撃を防ぐ行動に出た。

 しかし、その内の一基が当たろうかという瞬間にオモイカネの姿が消えた。

「──!?」

 気付くと『天人』は茜の背後に立っていた。その気配で振り返ろうとした茜は、オモイカネの裏拳で態勢を崩し数メートル吹き飛ばされてしまう。

「クッ…だったら!」

 今度は全てのテレジェムを解放し、それをオモイカネに向けて放出する。だが、今度も攻撃が当たるだろう瞬間に『天人』は姿を消し、

「分身!?」

 茜達の目の前に六体のオモイカネが現れた。内、三体は茜を狙い残りは大和達に向けて口を開いている。

「させない!」

 今度はジェムウィップで一番手近な『天人』を狙い拘束しようとするが再び姿を消され、残された二体の掌底を同時に喰らいその場に崩れ落ちてしまう。それでも踏ん張りを見せ、両脇のオモイカネにジェムウィップを浴びせる様に振り回した。それも又、攻撃が当たろうとする瞬間に姿を消され、まるでオモイカネに弄ばれているだけの様だった。

「突撃部隊は散開してミタマの援護! 残る非武装構成員は一ヶ所に固まれ!」

 ミタマの苦戦ぶりを見た千葉は、すかさず突撃部隊員に命令する。その合図に、部隊員はそれぞれのチーム構成をもってオモイカネへと突撃する。

 その姿を見た茜は、大和を筆頭とした非武装構成員の周囲に念動磁場を張り重火器の跳弾に対する壁を形成した。

「後は…やれるだけの事をするだけ!」

 攻撃が当たらなければ、当たる迄攻撃を続けるだけ。相手が姿を消すのであれば、その姿そのものをなくしてしまうだけ。下手にロジックを組もうとせずに自分の直感を全てにして戦うだけだ。

 残ったテレジェムを全て振り回す様に回転させ全ての『天人』に放出させる。直後、その全てが姿を消したが、茜はそれ迄の行動パターンを思い浮かべジェムウィップを左右に広げその場で自らを回転させた。

 それが功を奏したのか、茜の背後に現れたオモイカネに攻撃が直撃した。

「よし、貰っ──」 

 だが、それを合図としたのであろうか大和達に面を向けていたオモイカネ達が一斉に声をあげた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 超音波ともいえるだろう精神攻撃の波は、直に大和を始めとした構成員を襲った。

「くっ、これくらいの精神攻撃如きで…」

「石川ぁっ! お前だけでもGP着てこい!」

 一瞬にして場が混乱の渦に巻き込まれる。

 大和達の下に何とか辿り着こうとする茜も、再び現れた『天人』の分身に身動きを封じられてしまう。

「クッ、このままじゃ…」

 再度テレジェムを全て展開させ、六体いる『天人』に攻撃を放った。回転力の増しているテレジェムは全てのオモイカネを捉え、しかし撃破させる前に姿を消され虚しく空を舞うだけだった。

 それでも精神攻撃から仲間を救う事は出来た。後は、オモイカネの本体を見つけ出し撃破に追い込めばいい状態には持って行けた──のだが。

「…お、おい、アレが持ってるのって!」

 千葉が叫んだ先には、オモイカネが大和の持っていた鍵を握りしめて立っていた。

「まずい、あれを何としてでも取り返さないと!」

 オモイカネに向け千葉と石川が小銃を発砲するも全く通用せず、茜が突撃をしようとする直前にオモイカネは歪界域を生み出しその姿を消してしまった。

「くそっ、完全にしてやられちまった!」

 千葉の叫びに、“完全敗北”という言葉が茜の中に渦巻いた。

 こんな時、自分じゃなければ、草薙君だったらどんな結果を生み出していたのだろうか。

 もし、自分も神化と呼ばれた形状になる事が出来ていたらどんな結果になっていたのだろうか。

「う…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 膝から崩れ落ちた茜は拳を力一杯地面に叩き付けるので精一杯だった。 

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