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MITSURUGI  作者: 島田祥介
第玖幕【変】
38/57

肆ノ其

 東京都新宿区内藤町──早朝。


 新宿御苑に発生した歪界域は、又しても人海戦略よろしくエソラムを次々と出現させていた。

 半壊したままのタケミナカタを筆頭に、Type‐O・N・IとType‐Kyu・Biの混成部隊がミツルギとミタマに襲いかかってくる。

「今回は、アレは出てこないみたいだな」

「オモイカネですか? このまま出てこない事を期待したい所ですね」

 先日の戦闘で精神攻撃をしてきた小型の『天人』は[コードNo.T-0452:オモイカネ]と判明したが、今回はそのオモイカネは戦場に姿を見せていない。それだから突撃部隊も多数配備出来てはいるものの、加賀の目論見が判らない以上は油断は見せられない。

 だが、数こそ多いものの能力が向上したミツルギといくつもの戦術を覚えたミタマにとって今のエソラム程度では最早敵ではなかった。

「Type‐Kyu・Bi、ワンセット撃破!」

「おめでとう、曲木!…と言いたい所だけど、もうワンセット出てきたから頑張れよ」

「嘘でしょ!? もう、千葉さん達もこっち来て戦ってほしいくらいなんですけど」

 数の暴力にうんざりしつつも、茜は持ち前の武器を駆使してエソラムに向かっていく。

 全ての念動宝玉(テレジェム)を放出し拡散させる事でType‐Kyu・Biの足を止め、その間に勾玉連珠(ジェムウィップ)で次々と薙ぎ払う。一撃そのものに破壊力はなくも、テレジェムとジェムウィップの連携で一体一体を確実に仕留めていった。

 更には宝玉が発する磁場を組み合わせる事で、数こそ多く使ってしまう事にはなるがバリアの様に磁場展開をさせられる様になった。これが、特にType‐Kyu・Biの弾道を防ぐのに効果的で自陣の受けるダメージを軽減させてくれた。

「草薙君、そっちはどんな感じ?」

 Type‐O・N・I側討伐の先陣に立つ正義に茜が声をかけると「しんどいっすよ」と軽口が返ってきた。

「千葉さん、石川さん。Esって『天人』を叩いたら撤退、なんて事はないですかねぇ?」

 無理なのは判ってはいるが、あえて口にすることで実現したらいいなと正義は再び軽口を叩く。

「そういう意思があってほしい所ですけどね…タケミナカタですか?」

 正義の狙いを掴んだ石川は、キーボードに指を走らせミツルギとタケミナカタの実質距離を計算する。千葉も同様に、ミツルギのサポートにまわっている突撃部隊にType‐O・N・I殲滅の指示を出した。

「A班は左翼展開、B班は右翼展開でミツルギの補助。C班は前方散開で道を作れ」

「Esは突撃部隊が何とか出来そうですけど、行けますか?」

「はい、もう面倒なんで特攻かましますね!」

 突撃部隊が動き出すと同時に、正義は他のエソラムには目もくれず一気にタケミナカタを目指して走り出した。

 遠くから見てもその体内に浮かぶタマハガネが煌々と輝いているのが判る。だからとて相手は『天人』である以上容赦する訳にはいかなかった。

 右腕を失いバランスが取れていないであろう状態のタケミナカタだったが、ミツルギの姿を見付けると他には目もくれず真っ直ぐ向かってくる。だが、前回の戦闘ですでに勝ち目を見出していた正義にとってその動きは恐怖でも何でもなく、単にタマハガネを回収するだけの作業に近しいものがあった。

「いい加減大人しくしてくれ…よっと!」

 右手甲のブレードを三枚に展開させると、少し離れた位置から勢いよく伸ばしてタケミナカタの左肩を貫いた。そのまま一旦引き抜くと、その反動を利用し地面を蹴ってタケミナカタの下へ一気に近付く。

 すでにボロボロになった左腕を振り上げミツルギに打撃を与えようとするタケミナカタの攻撃を軽くかわし、逆襲と言わんばかりに拳撃の乱打をお見舞いする。

「おいおい、ありゃ一歩的なイジメじゃねぇかよ」

 モニターで正義の動きを確認しながら、千葉は石川の肩を叩いた。

「そりゃ、ミツルギもパワーアップしてますからあんなの雑魚レベルでしょうね」

 モニターに映るミツルギは、左足の爪先から展開したブレードで雑魚と化した『天人』の右大腿部を抉り取っていた。

「兄さん、遊ぶのもいいけど野郎がタマハガネを奪いにいつ現れるか判らんから、そろそろ終わらせてくれるか?」

「了解です。というか、そろそろ仕留めようと思ってた所でした」

 千葉の指示に従うかの様に、正義はブレードでタケミナカタの左腕を切り落とすと一気に近付いてタマハガネに手を伸ばした。

 左手でタマハガネを掴むと、右脚に力を込めてタケミナカタを蹴飛ばす。その勢いで胸部からタマハガネを奪われた『天人』は、声にならない叫び声を上げる様に跪きそのまま四散した。

「っしゃぁぁぁぁぁっ!」

 タマハガネを握りしめたまま左腕を高らかに上げるミツルギの姿をモニターで確認した千葉と石川は、その場で無言のハイタッチを交わした。

「今回は、奴は動きなしのままで終わった様だな」

 加賀の未登場に疑念はあったものの、戦闘が一段落ついた安心から千葉はおもむろに煙草を咥え火を点ける。隣では石川も満足そうに自分の肩を揉みしだいている。

「そういえば、草薙さん達に焼き肉を奢る約束してたんだったっけな」

「お? だったら俺も便乗し──」

「管制室より緊急!」 

 突如、姫城の叫びに近い緊張した声が戦場にいた全員のスピーカーに響き渡る。その場で固まる様に動きを止め、皆が続きの言葉を待つと、

「ミカガミがホノカグツチを占拠!」

 姫城の焦りに満ちた声を聴いた瞬間「やられた!」と石川がキーボードを握り拳で叩く。 

「くそったれ、こっちは(フェイク)だったか!」

 予想外の行動に、千葉は力一杯頭を掻きむしった。その怒号に近い声を聴いた正義達は、

「千葉さん、石川さん、今のって」

「ああ、あの野郎やってくれやがった! 全員、大至急施設に戻るぞ!!」

 それはコインデックそのものが願う指示で、姫城の声も荒い状態で、

「戦管部隊は大至急ホノカグツチ前に集合されたし! 繰り返す、戦管部隊は大至急ホノカグツチ前に集合されたし!」

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