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MITSURUGI  作者: 島田祥介
第玖幕【変】
37/57

参ノ其

「遂にロールアウトか」

 大和の目の前に、四体のプロテクタースーツがあった。

「お前さんの要望を全て詰め込もうとしたにはしたが、不完全な状態でしか完成しとらんぞ?」

 ガーゴイルプロテクター。

 GPと略称されるそれは大和が願ったものとは明らかに違いこそしたものの、短期間の状況下で複数体が完成出来た事にこそ喜びがあった。

「今の所はA型しか出来んかったわい。素材もそうだが、何せGMと同性能なんて天と地が引っくり返ったとしても無理がある」

 津久井の言葉に、メカニック統括としての無念が伝わってくる。未だ解明出来ないタマハガネと同等の素材が存在しない以上、それを上回る性能のスーツを造り上げられない苦悩と悔しさは誰よりも津久井が感じていた。

「だが、これで守護者たる二人の負担は軽減出来るのだろう?」

「装着者の能力次第、といった所かいの。GMに比べて性能不足をどうカバーするかがキモになるわな」

 装着者に関しては、以前千葉と話し合いで決定済みだから何とでもなる。だが、アタッカータイプのA型のみではミツルギ、ミタマの両者のサポートメンバーとして若干の不安が残るのも事実だ。

「せめてG型が完成出来ればよかったんだろうが、今の我々じゃどうする事も出来ん」

 ミカガミの様な遠距離支援型を造り上げる事は現時点での水準だと不可能であった。それを補うには重火器で何とかするしかない、と津久井は大和に発した。

「いや、今はこれでいい」

 草薙正義、曲木茜の両名には重度の負担を強いている。本人達は「そんな事ない」と言い張るだろうが、本来三位一体であったGMがミカガミを失った事での心身的負担はどれ程のものなのか、それは本人達にしか判らないものだ。

 それだから、指示を出すしか能のない自分がもどかしいとさえ大和は強く感じていた。

「大和や、お前さん少し疲れてやしないかい?」

 自信家といっていい男が見せる苦悩の顔。

 コインデックが創設されてから、大和と津久井は長い事共に数多くのタスクをこなしてきた。その間苦い思いは厭という程経験はしたが、それでもこれだけ苦虫を噛み潰す想いはした事がなかった筈だと津久井は彼の顔を眺めながら思っていた。

「私が疲れているなんて口にしたら、それこそ皆に笑われる所か呆れられてしまうよ」

「今はワシとお前さんしかおらん。今くらい溢したってバチは当たらんよ」

 津久井は白衣のポケットから煙草を取り出すと無言で大和に勧めたが、彼も無言のまま右手でそれを遮ると、

「せめて、これの倍はGPを完成させたい。どれだけ時間が必要だ?」

 飽く迄統括司令の顔を崩さないのかい、と津久井は内心苦笑した。だが、こういう男だからこそこれ迄のコインデックがあったのだろう。

「この四体をプロトタイプと考えて、もう少し改良させたい所だからのぉ」

 単純に倍の時間が必要という訳でもないぞという津久井の発言に、大和は「そうか」とだけ返すとしばらく無言でGPを見詰めた。

「お前さんの事だから『採算度外視でいいから、早急に何とかしろ』と言いたいんじゃろうな?」

「流石は判っているじゃないか。その通りで頼むよ」

「全く、お前さんは若い衆だけじゃなくこんな老体にすら鞭を打ちたいのかい」

 煙草に火を点けると、津久井は少し大袈裟に驚いた表情で大和を見る。

「次の世代に導く為には、例え老兵であろうとしっかり働いて貰わないとな」

「こりゃ一本取られたわい。だったら老兵らしく悪足掻きしてやろうかの」

 けらけらと笑いスキンヘッドを叩く津久井を見て、大和も安堵の溜息と共に口元に笑みを浮かべた。

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