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『追放社畜OLの【無限の福利厚生】辺境村改革!〜気弱な最強氷魔法剣士様の理不尽を許さぬ無双姿に私だけがときめいている〜』  作者: 月神世一


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底辺同士の共鳴。高級バッグから溢れる督促状と、ゆで卵のブルース

底辺同士の共鳴。高級バッグから溢れる督促状と、ゆで卵のブルース

 ルナキン・ポポロ支店のテラス席は、まるで場末のスナックのような狂騒に包まれていた。

「さあさあ、お姉様! 今日も一段とお美しいですわ! グイッといっちゃってくださいませっ!」

「んっふふ〜! 分かってるじゃないの、リーザちゃん! あんた、見どころあるわよぉ! ゴクゴクゴク……ぷはぁっ!!」

 芋ジャージ姿の極貧アイドル・リーザが、満面の営業スマイルでグラスにお酒を注ぐ。

 それを受け取った永遠の17歳(駄女神)ルチアナが、豪快にジョッキを煽った。

 飲んでいるのは、米焼酎とウィスキーの良さを掛け合わせたポポロ村の高級酒『サケスキー』だ。アルコール度数37度を誇る強い酒だが、ルチアナはチェイサー(水)も挟まずにガブガブと飲み干している。

「くぅ〜っ! やっぱりタダ酒は最高ねぇ! もっと持ってきなさい、レティシア! スポンサーの命令よ!」

「……はいはい。今お持ちしますよ、女神様」

 私は、青筋を立てながら社畜スマイルを浮かべ、新しいサケスキーのボトルをテーブルにドンッと置いた。

 ルチアナの奢りだと思い込んでいるリーザは、「究極の太客」を取り込もうと必死に接待を続けている。

「お姉様みたいに気前が良くて、ブランド品をスマートに着こなすセレブな方、アタシ初めてお会いしましたの! きっと、天界でものすごいお屋敷に住んでいらっしゃるんでしょうね♡」

「まぁねぇ〜! 私にかかれば、星の一つや二つ、指先一つでポンよ、ポォ〜ン! ヒック……あんたのドーム公演? そんなの、私のポケットマネーで即日開催してあげるわよぉ!」

「はぁぁんっ♡ 一生ついていきますわ、お姉様っ!!」

 嘘と見栄と強欲が交差する、地獄のキャバクラ状態。

 少し離れた席で、私とキャルル、そしてクロエの三人は、冷ややかな視線を送っていた。

「……見事なまでのタカり合いですね。底辺同士の食物連鎖を見ているようです」

 キャルルが、呆れ果てて人参ジュースをすする。

「リーザのやつ、ルチアナに度数の高いサケスキーを飲ませて、完全に酔い潰す気ね。……あの手つき、ただ接待してるだけじゃないわ」

 クロエが扇子で口元を隠しながら、目を細めた。

 確かに、リーザの視線はルチアナの顔ではなく、彼女の足元に置かれた『高級ブランドバッグ』にチラチラと向けられていた。

 (……パトロンから、直接「おひねり(財布)」を頂戴しようって魂胆ね)

 私は腕を組み、ニヤリと笑った。

 ルチアナのバッグ。一見するとウン百万はしそうな超高級品だが、元・トップ営業の私の目から見れば、ステッチの粗さと皮の光沢の不自然さで、それが『パチモン(偽物)』であることは明白だった。

「うぃ〜……ダメだぁ、ちょっと目が回ってきたわぁ……」

 ボトルを半分以上空けたルチアナが、ついに呂律が回らなくなり、テーブルの上にバタッと突っ伏した。

「ムニャムニャ……月人くぅん……アリーナ席の最前列、絶対当てるからねぇ……」

 ルチアナは完全に夢の世界へと旅立った。

 その瞬間。リーザの顔から営業スマイルがスッと消ええせ、獲物を狙うハンターのそれへと切り替わった。

「……フフン。チョロいものですわね」

 リーザは周囲を警戒するようにキョロキョロと見回すと、素早い動作でルチアナの足元にある高級ブランドバッグを引き寄せた。

「さあさあ、アタシのドーム公演のための『前受金おひねり』、しっかりと頂戴いたしますわよ……って、あれ?」

 バッグの口を開けたリーザが、不思議そうに首を傾げた。

 高級ブランドのはずなのに、内側の布地がペラペラで、変な匂い(石油系のボンドの匂い)がするのだ。

「……ま、まぁいいですわ! 大切なのは中身! この分厚いお財布の中には、きっと金貨やプラチナカードがぎっしりと……!」

 リーザは、バッグの底から、パンパンに膨れ上がった長財布を取り出した。

 金持ち特有の、分厚い財布。

 リーザはゴクリと生唾を飲み込み、震える手で財布のチャックを開け、中身をガバッとテーブルの上にぶちまけた。

 バサァッ……。

 テーブルの上に散らばったのは。

 眩い金貨でも、ブラックカードでもなかった。

「……え?」

 それは、赤や黄色、毒々しい原色で彩られた『封筒』と『ハガキ』の束だった。

 リーザは、震える手でその中の一枚を手に取った。

『重要:大宇宙管理局・カードローン返済の最終ご案内』

『警告:天界ファイナンスからの督促状(※期日を過ぎております)』

『ソシャゲ・月人アイカツ! 課金上限到達のお知らせ』

『家賃滞納による退去勧告について(※至急ご確認ください)』

「…………」

「…………」

 テラス席に、奇妙な静寂が降り降りた。

 私とキャルルとクロエは、息を殺してその結末を見守っていた。

「……嘘、ですわよね?」

 リーザは、別の封筒を開けた。

 そこには『※これ以上お支払いが遅延した場合、天界レスラー(黒服)による強制執行(マグローザ漁船行き)となります』という、血も凍るような赤いスタンプが押されていた。

 パトロン。ドーム公演のスポンサー。全身ブランドのセレブ。

 そのすべての幻想が、ガラガラと音を立てて崩れ去っていく。

 この女は、金持ちなんかじゃない。

 見栄を張ってパチモンのバッグを持ち、レンタカーで乗り付け、借金に借金を重ねて首が回らなくなっている、究極の『多重債務者(ダメ人間)』だ。

「ムニャ……あと一回、あと十連回せば、SSRの月人くんが……カード、切ってぇ……」

 テーブルに突っ伏したまま、寝言でガチャを回し続ける駄女神。

 それを見つめるリーザの瞳から、スッと「強欲の光」が消え去った。

 代わりに彼女の目に浮かんだのは……。

 同じ『底辺』を這いずる者だけが持つ、痛いほどの共感と、慈愛に満ちた【生暖かい目】だった。

「……お仲間ね」

 リーザが、ぽつりと呟いた。

 その声には、怒りも、失望もなかった。ただ、厳しい現代社会ファンタジーの荒波を生きる弱者としての、深いブルース(哀愁)が漂っていた。

「アイドルのオタ活に、ソシャゲのガチャ……。身の丈に合わない推し活の果てに、こんなに赤い紙を溜め込んで。……馬鹿な人」

 リーザは、テーブルに散らばった督促状を丁寧に拾い集め、元の財布に戻してやった。

「うぅ……お腹空いたぁ……焼き肉定食、持ってこぉい……」

 ルチアナが、ヨダレを垂らしながら情けない寝言をこぼす。

 リーザは小さくため息をつくと、自分の芋ジャージのポケットに手を入れた。

 取り出したのは、彼女の今日の『夕食』になるはずだった、ただ一つの食料――スーパーの特売で買った、貴重な【固ゆで卵】だった。

「仕方ありませんわね……。底辺を生き抜くには、まずはタンパク質ですのよ」

 リーザは、手にしたゆで卵を振り上げると。

 ――コンッ!

 ルチアナの頭のてっぺんに、ゆで卵をクリーンヒットさせた。

「イデッ!? な、なによぉ……!?」

 ルチアナが、痛みに顔をしかめて薄目を開ける。

 リーザは、ルチアナの頭でひび割れたゆで卵の殻を、ものすごく手慣れた動作でスルスルと綺麗に剥いていった。

 そして、ツルピカになった白いゆで卵を、酔っ払っているルチアナの口に、強引にギュウッと押し込んだのだ。

「むぐぅっ!?」

「食べなさい。栄養をつけないと、借金取りから逃げ切れませんわよ」

 モゴモゴとゆで卵を頬張らされ、涙目でリーザを見上げるルチアナ。

 リーザは、どこか悟りを開いた聖母のような、ひどく生暖かい目でルチアナの背中をポンポンと叩いた。

「見栄を張らなくていいんですのよ。アタシたち、同じ『持たざる者』同士じゃありませんの。……サケスキー、もう一杯飲みます?」

「むぐっ……うぅぅっ……ゆで卵、喉に詰まるぅ……お水ちょーだい……」

 高級魔導車とパチモンのブランドバッグの横で、芋ジャージの少女と借金まみれの女神が、ゆで卵を分け合ってむせている。

「…………ぷっ」

「……ふふっ」

 遠くから見ていた私とキャルルは、耐えきれずに同時に吹き出してしまった。

「なによ、あの美しい底辺の友情。……ギャグのくせに、変に泣けるじゃないの」

 私が肩を揺らして笑うと、クロエも扇子で顔を仰ぎながらクスクスと笑った。

「ええ。騙そうとした相手が自分以上のダメ人間だと知って、怒るどころか自分のなけなしの食糧を分け与える。……あの極貧アイドル、案外いい子じゃないの」

 確かに、図太くて強欲だが、リーザの根底には人魚姫としての純粋な優しさ(底辺の連帯感)があるらしい。

 ゆで卵を頭で割られたルチアナも、文句を言いながらもそれをモクモクと食べている。

「さて」

 私は、笑いを収めてスッと立ち上がった。

「ルチアナの懐事情が完全にブラックアウトしていることが確定したわね。……つまり、今日の飲み代と、私からの『ツケ』を払う能力がないということよ」

 私は、手に持っていた【ルナミス新聞(夕刊)】をクルクルと固く丸め、ハリセン状の武器を作り上げた。

 クロエもそれに倣い、新聞紙を丸めて立ち上がる。

「ええ。ポポロ村でタダ飯を食おうとした罪は重いわ。……キッチリと、労働で返してもらいましょうか」

 極貧アイドルとの底辺の友情劇もここまでだ。

 借金まみれの駄女神に、私たち有能社長と強欲商人からの『愛のムチ(物理)』を振るう時間がやってきた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

第6章の第5話、いかがでしたでしょうか。

ついにリーザとルチアナ、底辺同士の美しい(?)友情が芽生える名シーンです!

ルチアナに度数37度のサケスキーを飲ませ、酔い潰して財布をスろうとする強欲なリーザ。

しかし、パチモンの高級バッグから出てきたのは、金貨ではなく大量の『督促状(赤い紙)』の束! ソシャゲ課金、推し活、家賃滞納……ルチアナの悲惨すぎる懐事情が完全に露呈します。

「騙された!」と怒るのではなく、「お仲間ね……」と生暖かい目を向けるリーザ。底辺を這いずる者特有のブルース(哀愁)が漂う、笑えるのに少しホロリとくる最高のギャグ展開です!

そして、自分の貴重な夕食である「固ゆで卵」を、ルチアナの頭でコンッ!と割って食べさせるリーザ。

「栄養つけないと借金取りから逃げられませんわよ」というセリフに、彼女の極貧サバイバルで培われた優しさが詰まっています(笑)。

それを見て笑いを堪えきれないレティシアたちですが……ルチアナが完全な「無一文の多重債務者」であると確定したことで、有能社長のスイッチが入ります!

丸めた新聞紙のハリセンを構え、いざ説教(物理)の時間へ!

次回、第6話!

社長と商人の愛のムチ! 丸めた新聞紙でポカポカと乱れ打ちにされる駄女神!

「神様に向かって何すんのよ!」と泣くルチアナに、ポポロ村での容赦ない強制労働が言い渡されます!

「督促状の束で草」「ゆで卵コンッ!は反則(笑)」「レティシアの新聞紙ハリセン待機!」とニヤニヤしていただけましたら、

ぜひページ下部(または右上)の【★で称える(ポイント評価)】から、星3つ(★★★)での全力応援をよろしくお願いいたします!

皆様の【ブックマーク】と【星評価】が、毎日更新を続けるための最大の福利厚生です!

どうか、引き続きポポロ村の物語への応援をよろしくお願いいたします!

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