有能社長と強欲商人の愛のムチ! 新聞紙ハリセンと駄女神の強制労働
有能社長と強欲商人の愛のムチ! 新聞紙ハリセンと駄女神の強制労働
ルナキン・ポポロ支店のテラス席。
ゆで卵を喉に詰まらせながら涙目でモゴモゴと咀嚼しているルチアナと、それを生暖かい目で見守るリーザ。
その平和で底辺な空間に、巨大な黒い影が二つ、ズンッと覆い被さった。
「……え?」
リーザが顔を上げると、そこには営業用スマイルを完全にかなぐり捨てた私と、扇子の代わりに『ルナミス新聞・夕刊』を固く丸めたハリセンを持ったクロエが、阿修羅のような威圧感を放って立ち塞がっていた。
「あ、あら、レティシア社長? クロエさんも。どうかなさいましたの? アタシたち、今とても美しい友情を育んでいたところですのに……」
リーザが引き攣った笑いを浮かべ、ジリジリと後退りしようとする。
私は手に持った特製・新聞紙ハリセンを、自分の手のひらにポンッと叩きつけた。
「友情を育むのは結構だけど。……ルチアナ先輩。あんた、自分が今どんな状況か分かってるの?」
「むぐっ、ごっくん……ぷはぁっ!」
ようやくゆで卵を飲み込んだルチアナが、サケスキーの酔いも手伝ってか、虚勢を張るように胸を張った。
「な、なによ! いきなり凄まじい顔して! 私は世界神ルチアナよ! ポポロ村の利益の半分を貰う権利があるんだから、少しくらいタダ飲みしたって……」
――スパーンッ!!
「いっっっだぁぁぁっ!?」
ルチアナの言葉が終わる前に、私の新聞紙ハリセンが、見事なスイングで彼女の金髪の頭をクリーンヒットした。
「な、何すんのよ! 神様に向かって新聞紙で頭を叩くなんて、神罰が下るわよ!?」
「神罰が下るのはあんたの方でしょ、この多重債務者(駄女神)!!」
私は、リーザがテーブルに出したままにしていた『督促状』の束をバサァッ!とルチアナの目の前に突きつけた。
「ヒッ……! そ、それは……」
「ソシャゲ『月人アイカツ!』の課金上限到達! 天界ファイナンスからの最終勧告! さらに、さっき乗ってきた『わ』ナンバーの高級魔導車も、レンタル代が未払いで督促が来てるじゃないの!!」
「えっ!? な、なんで知ってるのよ!?」
「あんたのバッグからリーザが引っ張り出したのよ! 見栄張ってパチモンのブランドバッグなんか持っちゃって! 完全に懐が火の車じゃないの!」
――ポカッ! ポカッ!
「イテテテッ! や、やめてぇっ!」
私が右から新聞紙でポカポカと叩き、左からはクロエが容赦のないスイングでハリセンを振り下ろす。
――スパーンッ!
「あいたぁっ! クロエ、あんた本気で叩いてるでしょ! スナップが効きすぎてるわよ!」
「ふふっ。私は商人だからね。支払いの能力がないと分かった相手には、1ミリの容赦もしない主義なの。……天界の神様だかなんだか知らないけれど、借金を返すアテがないのに一番高いサケスキーのボトルを空けるなんて、詐欺師と同罪よ」
クロエの笑顔が、底冷えするほど恐ろしい。ゴルド商会の凄腕商人としての、完全な『取り立て屋』の顔だ。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 私は神様なのよ!? アナステシア世界を作った創造神よ!? 私がその気になれば、この村なんか……」
「その気になれば、何?」
私は、ピキィッ!と青筋を立てて、ルチアナの顔面スレスレに顔を近づけた。
「……ひぃっ」
「あんたね。自分がどれだけ甘ったれたこと言ってるか分かってる? アイドルの推し活だかソシャゲのガチャだか知らないけど、自分の欲望を抑えきれずに借金まみれになって、そのツケを他人にタカって払わせようとする。……前世のブラック企業にいた、経費をキャバクラ代で使い込む無能な天下り役員と全く同じじゃない!!」
――ポカポカポカポカッ!!
「ギャーッ! ごめんなさい! ごめんなさい! 叩かないでぇぇっ!!」
私とクロエによる、左右からの新聞紙ハリセンの乱れ打ち。
丸めた新聞紙だから怪我はしないが、絶妙に良い音が鳴り、精神的なダメージ(プライドへの打撃)は計り知れない。永遠の17歳(自称)の駄女神は、涙目になって頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「はぁ……はぁ……。少しは反省した?」
私が息を切らしてハリセンを下ろすと、ルチアナは涙と鼻水でグシャグシャになった顔を上げた。
「うぅぅ……だってぇ……月人くんの期間限定SSRカードが、どうしても欲しかったんだもん……天井まで回せば確定だったのに、クレカが止まるなんて思わなかったんだもん……」
「まだ言うかこのオタク女神」
私が再び新聞紙を振り上げようとした時、横からススス……と、芋ジャージ姿のリーザが気配を消して逃げ出そうとしているのに気づいた。
「あ、アタシはこれで……! ちょっと公園のベンチで、お腹を空かせた鳩と格闘してきますわ!」
「待ちなさい、泥棒寄生魚」
「ふぎゃっ!?」
キャルルが、逃げようとしたリーザのジャージの襟首をガシッと掴んで引き戻した。
私も、リーザの頭にポンッと新聞紙ハリセンを置いた。
「あんたも同罪よ、リーザ。ユリウスの優しさにつけ込んで、特大ハンバーグをタダ食いしたわね」
「そ、それは正当なビジネスですわ! アタシはアイドルとして、歌と笑顔という無形の価値を提供して……」
――スパーンッ!!
「痛ぁぁっ!!?」
私はリーザの頭にも、容赦のないツッコミ(物理)を入れた。
「タダ飯食った分は、キッチリ体で払ってもらうわよ。……『働かざる者食うべからず』。ポポロ村の鉄の掟よ」
「そ、そんな……! アイドルは肉体労働なんてしませんのよ! 事務所のNGが出ますわ!」
「あんた事務所なんか所属してないでしょ、みかん箱の地下アイドルのくせに!」
私は、バインダーを取り出し、即座に二人の『強制労働シフト』を組み上げた。
「いいこと、ルチアナ先輩、そしてリーザ。あんたたちは今日から、借金を返済し終わるまで、ポポロ村で『臨時アルバイト』として働いてもらうわ」
「ええーっ!?」
二人揃って、情けない悲鳴を上げる。
「ルチアナ先輩は、まずはタローマートの裏方で品出しとダンボール潰し。リーザは、村の畑で月見大根の収穫手伝いよ。……もちろん、サボったらタダ飯(バフ飯)の支給は停止、借金取り(カスハラ部)に即通報するからね」
「鬼! 悪魔! 社畜女ぁぁっ!!」
「アタシの美しい人魚の手が、泥だらけになってしまいますわぁぁっ!」
文句タラタラの二人に対し、私はニッコリと、最高に冷酷な社畜スマイルを浮かべた。
「何か文句ある? 文句があるなら、天界ファイナンスの黒服レスラーに今すぐ引き渡してもいいのよ?」
「「……ヒィッ。喜んで働かせていただきますぅぅっ!!」」
黒服の恐怖を思い出した二人は、ガクガクと震えながら綺麗に土下座した。
これでよし。
神様だろうが、王族のアイドルだろうが、私の村でニートやタカり行為は絶対に許さない。労働の尊さとお金の価値を、骨の髄まで叩き込んでやるのだ。
「キャルル、二人をタローマン(ホームセンター)に連れて行って、一番安い作業着に着替えさせてちょうだい。ハイブランドの服と芋ジャージじゃ、仕事にならないわ」
「了解しました、レティシア社長。……さあ、立ちなさい、ダメな大人たち」
キャルルが、首根っこを掴んで二人を立たせる。
「うぅぅ……私のシャネル(偽)の服が……」
「アタシの魂の芋ジャージがぁ……」
絶望の表情を浮かべる駄女神と極貧アイドルが、ドナドナと引き立てられていく。
「ふふっ。見事な手際ね、社長さん」
クロエが、新聞紙ハリセンをゴミ箱に捨てながらクスッと笑う。
「当然よ。他人の金で生きようとする寄生虫は、徹底的に駆除(再教育)しないと、村の風紀が乱れるもの」
私は冷め切ったコーヒーを飲み干し、ふうと息を吐いた。
とりあえず、これで借金女神と強欲アイドルの問題は、労働という形で健全に解決するはずだ。
……しかし。
私はこの時、ある重大な計算違いをしていることに気づいていなかった。
彼女たちが労働を命じられた畑や裏方には、あの『誰にでも優しすぎる最強の騎士』、ユリウスが巡回しているという事実を。
労働という罰が、ユリウスの底抜けの優しさによって、さらなるカオス(クズ度の加速)を引き起こすことになろうとは。
私の胃痛の種は、まだまだ尽きそうに無かった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
第6章の第6話、いかがでしたでしょうか。
ついにレティシア社長とクロエ姐さんの堪忍袋の緒が切れ、「新聞紙ハリセン」による愛のムチ(物理)が炸裂しました!
「神様に向かって何すんのよ!」と叫ぶルチアナに、右から左からポカポカと新聞紙が乱れ打たれるテンポ感、そしてクロエの「スナップが効きすぎている」容赦ないスイングが最高ですね(笑)。
ソシャゲ課金と推し活で作った借金を他人に払わせようとする駄女神は、もはやブラック企業の天下り役員と同じ。レティシアのド正論な説教が光ります!
ちゃっかり逃げようとしたリーザもきっちり捕獲され、二人は揃ってタローマン製の作業着に着替えさせられ、ポポロ村での強制労働(臨時アルバイト)の道へ。
「鬼! 悪魔! 社畜女!」と叫びながら土下座する二人の姿に、スカッとした読者の方も多いのではないでしょうか?
しかし……! 最後の不穏なフラグの通り、彼女たちの行く先には「最強の博愛騎士ユリウス」が待っています。
次回、第7話!
ユリウスの眩しすぎる背中と底抜けの優しさが、二人の労働を代わりに終わらせてしまう!?
「神より神々しい……」と浄化されそうになりながらも、クズ度を加速させるダメ大人二人の爆笑エピソードです!
「ハリセン乱れ打ち最高!」「レティシア社長に一生ついていく!」「次回もカオスの予感(笑)」と楽しんでいただけましたら、
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